![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/53794487/rectangle_large_type_2_06831a3f2998bfcfef07152caf9ae04a.jpg?width=1200)
【えほん】丸いたましい
あるところに、丸いたましいがありました。
丸いたましいは、あたたかい光の輝きのような、色素のない色ををしており、見る人がみるとまるくは見えませんでした。
ぐにゃぐにゃだったり。
かくかくだったり。
今まで目で見てきた、たましいにあてはめて見てしまうのです。
それは生きていくためには仕方ないので責めることはできません。
![いろんなのん‗2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/32876556/picture_pc_3b83247f85412aae2434e013a9883ffc.jpg?width=1200)
丸いたましいもまた、自分がどんな形をしているのか、ほんとうには気付いていませんでした。
あたたかく光輝くたましいは、「じぶんはまるい」と思っていたけれど、よーく光をかきわけて見てみるとその輪郭には小さな小さな丸いものがどうやら付いているようでした。
![いろとりどりのたましい‗1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/32876341/picture_pc_e32e85985d6b5f9c52ad6c799292c5f9.jpg?width=1200)
それらの小さな丸いものは、光の輝きの色によって、よーく見ないと色がわかりませんでしたが、赤黒、群青色、薄い緑、いろいろな色素が付いていました。
それらの小さな小さな丸は、丸いたましいが生まれたその瞬間から、少しづつ少しづつ色づいて形ができていったものでした。
![いろとりどりのたましい‗2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/32876369/picture_pc_c613cb29f961f96c67002cb820fc9b09.jpg?width=1200)
友達を愛したけど、愛されなかった、鈍色
じぶんと外との境界線について考えた、緋色
たましいを囲む肉体が、じぶんを置いていった、樹皮の色
じぶんのたましいを生んだ人だと思えなかった、でも愛している 肌色
丸いたましいはこれらの色素の粒が、たましいの形を縁取っていることに気付いていませんでしたが、
色素が生まれて色が濃くなるごとに、じぶんのたましいの輪郭がはっきりとしなくて、とても恐ろしく感じていました。
ときには、その恐ろしさから、丸いたましいであるじぶんを捨ててしまおうと思うくらいに。
![じぶんを捨てるたましい‗1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/32876474/picture_pc_794c8eff87c087173076ec392c4ac757.jpg?width=1200)
そんなある日、黒ずくめの男と女が丸いたましいを訪ねて来ました。
男と女は声をそろえて言いました。
「あなたの宿り木を用意しておきましたよ。さあ。」
丸いたましいは、「いやだいやだいやだいやだ」じぶんのたましいの形を見つめたくない、と思いその場から少しだけ浮上しました。
1mほど上に登って「ああ、上にもっと登ろう」と思った時、何かが邪魔をして、上にいけません。
![パイプがのびた‗1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/32876498/picture_pc_f93d31262766672fa67855c019661fe0.jpg?width=1200)
よーく見てみると、きれいなきれいな色をした丸い色素の1つからプラスチック製のじゃばらパイプが下に伸びていました。
じゃばらパイプはあまりに引っ張ると、すぐに欠けて壊れてしまいそうだったので、まるいたましいはあわててパイプがつながっているところに降ります。
すると、じゃばらパイプはとてもきれいな形をしたたましいに、くっついていました。
![パイプでつながった‗1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/32876510/picture_pc_a2b8f358cd1c237f0779ad8fea2beeb4.jpg?width=1200)
そのたましいは、外のことも自分のこともつかめることができるもの何もかもを愛していて、過不足なくただただ、愛していました。
そのたましいは自分がどんなたましいの形をしているか、しっかりとこころの目でとらえていたようなのです。
そのたましいは言います。
「よかったね。ずーとあなたに宿り木が来たらいいのにと思っていたよ。
わたしたちは違うたましいだけれど、パイプがあるから戻ってこられる。安心して行っておいで。」
![宿り木‗1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/32876811/picture_pc_accd5b9ad0b40d1d5b977df537aa0b9e.png?width=1200)
宿り木に座ったたましいは、たましいの輪郭や色素のひとつひとつをとにかくひたすらに見ていきました。
この色素もわたし、美しい。
この色素もわたし、かわいらしい。
この色素はしんどい、少し薄める。
この色素もわたしだけ、わたしだけの色。
丸いたましいのまわりにあった、丸たちはすこしづつ輪郭を和らげていき、ほんとうのおおきなまるになりました。
そこにはきれな色素が散りばめられており、もともとあったあたたかい光のような色は光の色を増していました。
![ひとつになったたましい‗1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/32980955/picture_pc_78903264f57eea967b9bcaafea58059b.jpg?width=1200)
どんどんどん、ただ、光っている。
おわり
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