見出し画像

履歴書の短所の欄で筆が止まった話

あるところに履歴書を出すことになり、久しぶりに履歴書を書いていた。経歴、免許・資格、動機、長所と書いていき、次の欄でハタと筆が止まる。

「短所」

短所か・・・。38歳になって自分の短所を公にさらす日が来るとは。20代で就活していたときにはなにも感じなかった「短所」の項目。この年になるといろんな考えが脳裏に浮かぶ。

そもそも、「短所書かせてどうするつもり?」「例えば、深刻な短所だったらそれで落とされたりするの?」「いやいや、そんな短所を自己申告するひとなんていないでしょ・・・」。わりとスラスラと書いていたのに、ここに来て、トミカが並んだ棚前の息子のように完全にSTOP。

ここで、自分が履歴書をみる側だったことを思いだす。前職では部長を務めていたので、採用面接を何度もしたことがある。そのときのことを思いだす。・・・・。しっかりと思いだす。

「うーん、短所なんて項目あったっけ?」

まったく思い出せない。履歴書の中で、ちゃんとみていた覚えがあるのは、写真、経歴、志望動機。

写真は完全に第一印象。「かっこいいなー、美人だなー」と思うことは確かにあったと思う。ただ、それはそこまで重要ではなくて、とにかく変な印象を受けないかをみていた。古臭いかもしれないけれど、こういうところでキチッとせずに、わざわざよくない印象を与えるひとと会うときは、ちょっとみがまえていた。

経歴の項目。ここについてはさらっと流し読み。立派な経歴だと、すごいなぁ。変わった経歴だと、おもしろいなぁ。普通の経歴だと、普通だなぁ。そんなひとがなんでうちの門を叩いてくれたんだろう?と思う感じ。

しっかりみていたのは、志望動機。どうやってこの会社を見つけたの?どんなエピソードがあったの?なにやりたいのかな?というのがよく分かると面接で会うのが楽しみになっていた。

全体として、履歴書をみる側だったときに重要視していたのは、そのひとが「不必要に変なひとではないか」と「どんなエピソードや思いがあるのか」だった。短所なんて気にも止めていなかった。

ひるがえって、いま目の前にある履歴書である。はたしてこの「短所」の項目に、受け取り手はなにをみるのだろう?「短所」と単語で書かれているので、こちらとしては単語で返すのがいいのかなと思う。ただ、単語で返してはその裏のエピソードはわからない。

例えば「飽きっぽいところ」と書いたらどうだろう?ものすごく農業に向いてないなと思われて、ぼくにとってプラスになることはなにもない。そんなことを馬鹿正直に書く必要があるのだろうか?

悶々としながら、目の前にいる幸枝さんに相談する。
「短所ってあらためて聞かれるとどうしたらいいの?ってなるわ」
「そうねぇ。まぁ、でも普通は取り方によっては長所にもなる短所を書くんじゃない?」
たしかに、それはいい考えだ。就活していたころはそんな感じで書いていたかもしれない。

ただ、それだったら質問する側がコミュニケーションをサボり過ぎだなとも思う。欄の左上に「短所」とだけ書いておいて、いろいろと深読みさせて答えさせることになんの意味があるのだろう?求めていることが書かれない可能性が大だし。そういうことを深読みしてくることになにか価値があるのかしら?だいたい、そういう無駄な行間読みや空気読みを強いてくるからいつまでたっても効率的にならないんだろうな、うんうん。

もしぼくだったら、「短所」ではなく「自認している短所とそれに対する対応策」とかで聞くかなぁ。というかそもそも短所にあんまり興味はないかな。

そんなことをあれこれと考えながら、最終的には
「短所:ことを急ぎする面があります」
とだけ書いて幸枝さんに笑ってもらうのでした。

この記事が参加している募集

#仕事について話そう

110,232件

サポートとは「投げ銭」の意味です。 サポートにて100円でも200円でも頂けるとやる気に繋がります!皆様のサポートありがとうございます!!