1歳の息子とのぎりぎりの駆け引き
締切が近く、午前中から外で作業していた幸枝さんは、午後から北見でのセミナーに参加することになった。
今日は櫂の預かりがない日。
父と息子の一対一の真剣勝負だ。
午前中、まずは、櫂が疲れて眠くなってくるまで一緒に遊ぶ。櫂が好きなものは音の鳴る絵本。特に猫の「にゃー」という鳴き声がお気に入りだ。最近はボール遊びにも興味を持ち始めている。
ぼくもいくつか進めたい仕事を抱えているので、なるべく早く体力を使わせてお昼寝に持ち込みたい。
午前中は眠りに誘うことに失敗した。しかし、これは逆にチャンスと捉えたい。お昼ごはんでお腹いっぱいにして、もう少し遊んで見れば、きっとぐっすりなはずだ。
幸枝さんが用意しておいてくれた離乳食を温めて、櫂に食べさせる。今日のメニューは気に入ったらしく、パクパク食べてくれるので助かる。
さぁ、食事は終わった。いつ寝てくれても良いんだよ、櫂。
遊びながら櫂の様子を観察する。少し動きがスローモーになってきた。そしてぼくに近寄って抱っこを求めてくる。
チャンス。
すかさず抱っこ紐を装着し、櫂を格納。ゆっくり歩き、たまに縦揺れ、「ねーんねーん、ころーりーよー」と歌いなから、トントンとおしりを叩く。これが必勝パターン。
しばらく抱っこされたあと、櫂は少しキャーキャーと暴れ始める。いつも通りだ。眠りに落ちる直前、赤ちゃんはなぜか暴れる、不思議だがよくある行動だ。
暴れる櫂を気にせず「ねーんねーん、ころーりーよー」と魔法を唱え続ける。
そしてゆっくりと目を閉じる櫂。
ここで焦りは禁物だ。深い眠りに落ちる前にベッドに寝かせようとすると、体を傾けた角度と同じだけ目を開けて、着地した瞬間に覚醒してしまう。なんだかこういう玩具の人形あったよなと思いつつ、抱っこ紐の中で目を閉じる櫂を見ながら頃合いをはかる。一番重要な駆け引きだ。
「よし、やってみるか」
心に決め、寝かせる場所の前に正座で座り、ゆっくりと抱っこ紐を外し、櫂を下ろす。
着地。
モゾモゾと動く櫂。これはどっちだ?
息を潜めて見守ると、櫂はぱたんと動くのをやめた。
成功。
「良い子だから長くねてくれよー!」と思いながら、物音1つたてずにぼくはパソコンに向かうのだった。
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