つむぎ、自転車に乗って冒険に繰り出す
日曜日の昼下がり、櫂は寝室でお昼寝、幸枝さんも櫂の様子を見ながらベッドの上。つむぎは、テレビを見ながらリビングでゴロゴロ。
午前中に外に遊びに行ってきた3人は、その疲れでまったりとした午後を過ごす、かに思えた。
「もう、行こう!ずいぶん待ったよ!!」
つむぎ、急に覚醒!
「ぼくはまだ全然疲れてない!遊びに行きたい!」
ゆったりとした時間の中で、のんびりとライター仕事を進める。そんなぼくが描いていた理想の日曜の午後は、強風の前のビニール袋の如く遠い彼方に吹き飛んだ。
「うーん、そしたら、家の周りで自転車の練習してみる?」
先日、つむぎ宛にいとこのお姉ちゃんが使っていた自転車が届いたが、まだそれほど乗っていなかった。
「うん、そうする!それでキテラスに行く!」
「え、キテラス・・・?遠いよ・・・」
「行くの!」
こうして、つむぎと自転車大冒険の旅が決定した。キテラスまでは3.7キロ。なかなかの距離だ、どこまで行くことができるのか・・・。幸枝さんに帰りのお迎えを頼んでぼくとつむぎは、玄関のドアを開けた。
我が家は、美幌の町から坂をかなり登ったところにある。グーグルアースで調べてみると、その高低差は40mほどあるらしい。
自転車に慣れた人にとっては心地よい下り坂は、初心者のつむぎにとってはいきなりの難所だ。スキー初心者が間違えて上級者用リフトに乗ってしまったようなもの。
「こわいー」
案の定、順調に滑り出せないつむぎ。
「そうだね、ここは急だからね、やめるか?」
「いやだぁ!」
「じゃあ、平らなところまで行って練習するか?」
「いやだぁ!」
「え、じゃあ坂下る?」
「こわいー」
こんなやり取りをひとしきり繰り返した後、まずは平坦な道路に向かって運転に慣れてみることになる。
しばらく走って少し慣れて来たら、ついに下山を始める。家の隣の坂ではなく、迂回路を通って少しでもゆるい道を走る。とりあえずの目的地は、坂の下にある公園だ。
まだ、小さな手でブレーキをギュッと握りしめながら、ゆっくりと下山していく。ぼくはその横を歩いて、ところどころで自転車を支えたり、押したり、引っ張ったり、万全のサポート体制。
つむぎはビクビクしながら、ぼくはへとへとになりながら、ようやく坂の下の公園に到着。遊具にかけていくつむぎ、その姿を見守り、「もう今日はここを終着点にしたい」と思うぼく。
ひとしきり遊んだつむぎ、
「じゃあ、次の公園に行く!」
終わらなかった・・・。仕方ないので、気合を入れて再出発。次の公園に向かう。
次の公園にたどり着き、また遊び、また願い、また破れ。次の目的地へ。
そこは美幌図書館だ。
図書館までの道のりは家から2.5キロ。そこで本を読まさせて、読んでいる間に幸枝さんに迎えに来てもらおう。そう心に決めて、自転車にまたがるつむぎを完全サポート。
途中、ローソンに寄って、小休止。
そして、ついに図書館にたどり着くのだった。
最後まで自転車を降りたり、抱っこをせがんだりしてこなかったつむぎもお疲れ様。その後は予定通り図書館で本を読んでいる内に、幸枝さんと櫂が来るまで迎えに来てくれるのでした。
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