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中小企業再生支援の醍醐味は「応急処置」だけに終わらず「第二の成長を支援すること」にあると思う。

私は育てるのが好き・・・というか、何かが育っていくのを見るのが好きである。ポケモンGOもそれで一時期ハマった。家のカブトムシも交尾、産卵、幼虫、サナギ、成虫というライフサイクルを毎年繰り返している(ほとんどブリーダーですね・・・)。
クレジットカードなんかも地味に育てている。かつて不本意ながらも傷をつけてしまい強制解約になった某銀行系VISAカードを、数年のブランクの後にあえて突撃申込し、奇跡的に審査OKになり、そこからコツコツと信用を積み上げていって、限度額10万円の平カードから250万円のゴールドカードへ育てたこともあった。

さて、事業再生である。私の仕事は事業再生コンサルタントかつ認定支援機関なわけだが、この業界には様々なタイプの専門家がいる。資金調達専門、リスケ交渉専門、経営改善計画専門、財務専門、M&A専門、第二会社方式専門、廃業支援専門、不動産を守る専門、補助金専門、事業承継専門、私的整理専門、法的整理専門、特定の業種専門、などなど。彼らの多くは(私も含めて)専門分野に偏っており、悪く言えば専門バカである。だが専門分野にかけてはピカイチの知識と経験を持ちあわせているので、案件ごとに適材適所の専門家同士のチームを結成すれば、どんな難題でも解決できてしまうことがあるから侮れない。愛すべき専門バカ。この稀有な人間関係を、私はとても貴重な財産だと思っている。(変人も少なくないが、それがまたいい。)

私の専門分野は、「中小零細企業の倒産回避」だ。他にも求めに応じて経営改善計画策定支援やバンクミーティング同席、財務分析、補助金、事業承継、海外進出支援、集客などのコンサルをしたり、デューデリジェンス報告書の作成を引き受けたりもするが、一番思い入れが強く、実体験もあり、得意だと感じているのが倒産回避だ。特に零細企業の倒産回避。これは人命救助に近いものがある。溺れている人をグイっと助け出すようなイメージか。大抵の場合、相談に来る中小企業の社長さんはパニック気味になっていて、人によっては自殺まで思い詰めていたりもするから、心してかからねばならない。

倒産回避の需要は過去20年、ほとんど減ったことがない。景気が良かろうが悪かろうが、競争原理の中で企業活動を営んでいる以上、必ず勝ち負けがある。負けとはすなわち倒産危機であるから、常に一定数の倒産予備軍がいる。我が国には380万社ほどの企業があり、その数%だとしても、相当な倒産予備軍がいることになる。ここに需要がある。

私は弁護士ではないので、事件性の高い債権者交渉の代理人などはできない。法的整理の代理もできない。また公認会計士や税理士でもないので、記帳代行や税務のアドバイスなどもできない。そういった独占業務はそれぞれの士業の先生にお任せして、うまく棲み分けしながら、私は私でコンサルタントの立場をわきまえて活動している。コンサルにしかできないこともあることを先生達は知っているので、士業の先生との関係はすこぶる上手くいっている。案件ごとに先生方とチーム(のようなもの)を結成して、不可能を可能にしたことが幾度となくあった。

かくして、最初は倒産回避(応急処置的な対応)で始まった案件が、月日が経つにつれ傷が癒え、次第に正常な会社に戻り、第二成長期(?)とでも言えそうな勢いでどんどん「育っていく」。
私の役割も、その局面ごとに変わっていく。
これこそが、この仕事の醍醐味だと感じている。

事例をひとつ挙げてみよう。2004年、私は某自動車修理会社から借金の相談を受けた。当時のこの会社はトイチ・トニ・トサンのヤミ金に手を出しており、約束手形の不渡りも出していた。ノンバンクや業者からの追い込みもひどいありさまで、2007年まで差押、競売、慢性的資金不足、社長家族の自殺未遂など苦難に次ぐ苦難の連続を味わい、誰がどう見ても破産しかない状況だった。だが、ここからがすごい。3年間ギリギリのサバイバルを続け、2007年に競売で工場を失ってとどめを刺されたと思いきや、「ピンチはチャンス」「大ピンチは大チャンス」「人間万事塞翁が馬」的な転機がやってきくる。2008年に賃貸物件に移転してからは怒涛の快進撃が始まった。2021年現在、この会社は凄腕の顧問弁護士や顧問税理士、webコンサルなどがつき、私も倒産回避コンサルから卒業して取締役CFO(財務担当役員)に就任している。売上は最悪時と較べて8倍ほど伸び、従業員数も5倍くらい増え、納税や雇用という形で立派に社会貢献するに至っている。

私がこの会社を育てたのではない。
ドラゴンボールのナメック星人のセリフを借りれば、私はただ「キッカケを与えたに過ぎない」。だから、冒頭で書いたように、育てるのが好きだなどと偉そうなことは言えない。寄り添いながら、育つのを見届けるのが好きだと言ったほうがしっくりくる。

ここで同業者の先生方にも言いたい。
顧客から単発的に依頼を受けるだけではつまらないでしょ?
受けた依頼をキッカケにして、依頼者が育っていくのを見届けましょうよ。
そのために、専門家は、一匹狼やヘタなワンストップサービスもどきにどとまらず、得意分野を持った専門家同士で連携しましょうよ。
私も先生も、神様ではない。不完全な存在だ。だけど、組めばその力は倍以上になる。不可能が可能になる。そうやって絶望的な状況の会社を救い上げ、第2の成長を支援してきた事例を、私は数多く見てきた。

吉田猫次郎

※ 乱文失礼しました。ウイスキー飲みながらこれを書きました。


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