39歳が93歳のお葬式コーデをしたら、白雪姫が降臨した話。

パーソナルスタイリストとして、お客さまの毎日の服のコーデをしている私が、ばあちゃんの最期のお葬式のコーデをすることになった。

生きてても亡くなってからも、素敵に魅せるためにすることは変わらない。そう思って、ファッションブログに書いてみました。


ばあちゃんのお葬式コーデをすることになった

2020年5月、急にばあちゃんが亡くなったとの連絡が届いた。

93歳にはとても見えないツルツルお肌の持ち主で、とってもオシャレ。「こんなばあちゃんになりたい選手権」があれば、チャンピオン間違いなしの優しくて素敵なばあちゃんでした。

喪主は、私の叔父がすることに。んが、この叔父が優しすぎる。

愛するばあちゃんのため、葬儀費用に糸目をつけない所存である。

「お金はいくらでも出すので、きちんと送り出してあげたいんです!」という想いが言葉になってあふれ出ちゃってる。Σ(゚Д゚lll)あわわ…

そうなることを予想した出席できない私の父のかわりに、お葬式の契約の場に召喚されたのが、私。

今はパーソナルスタイリストとしてビジネスを学んでいるけれど、過去10年間法律家のたまごとしてロースクールで法律を学んでいたから。

…という訳ではなく、たまたま休みだったから。というユルイ理由。笑

ここから冷静な判断が難しい叔父にかわり、葬儀の契約を一任されることになった私と葬儀社との壮絶なバトルが幕を開けた。


お葬式の契約の時、気をつける3つのこと

大切な人を亡くしたばかりの状態で契約をするのは、とても難しい。

これから先の人生、もしもお葬式の契約をしなければいけなくなった時、自身の反省も込めて、気を付ける点を書いておく。

1)理想の葬儀のイメージを決めておく

まず、これが大事‼️ここが決まっていれば、迷った時の判断の軸となる。

参考にする要素としては、生前の故人はどのような葬儀を希望していたか?家族はどのように送り出したいか?好きなものはなんだったか?など。

ばあちゃんは生前、家族だけでそっと見送ってほしいと言っていた。生前お世話になっていた家族としては、オシャレで花が好きだったばあちゃんらしい華やかな式で送り出したい。

以上を総合した結果、目指すイメージは控えめながらも、お花でいっぱいのお葬式ということになった。

2)予算を明確に決めつつ、振り回されない

実はこれが一番大変だった…(>_<)

契約をする前に、相場はどれくらいか?葬儀社のプランにはどのようなものがあるか?いくらを予算にするか?あらかじめ下調べして決めておく必要がある。

オタクの検索能力を発揮して、前日に下調べした結果、家族葬の費用平均は100万。

契約に向かった葬儀社では、60万と80万の2つのプランがあったので、契約の詳細を決める前に「予算は100万です」とお伝えしたところ、葬儀社の方の顔が「それはちょっと…」と、曇った。

このプランというのは、一般的に葬儀一式の最低限の価格で、ちょっとこだわるだけで色々とオプションがプラスされる。

葬儀費用+飲食費などの実費費用+お布施=お葬式全体の費用となるので、とても100万では足りない。

表示の金額にウソはないけれど、プランに何が含まれるのか十分に確認しなくてはいけない。

「まずはプランは気にせず、一つ一つ選んでいきましょう」と言われ、その通りに進行することに。

うん。ビジネスの視点から見るとね、この進行のあらゆるところに、ただでさえ冷静でない判断力をより鈍らせる要素がモリモリだったよね…

まず、少額のものから決めていき、契約が進行するにつれ、金額のゼロが増えていく。金銭感覚がマヒしてきた後半に最も高額な祭壇の価格を決める構成になっている。

説明の際、見せられるパンフレットもかなりヤバイ。

はじめのページに大きい写真で、中価格のものがドーンと掲載されていて、その次に高価格、後ろの方に小さい写真でちょろっと低価格のものが掲載されている。

一つ一つのものについて詳しい説明文もなく、説明もしてもらえないので、気になったことはその都度こちらから質問しなくてはならない。

家族を亡くしたばかりの心理状態で、相場のわからないこまごましたものを大量に選択決定するのは、メンタルが想像以上に削られる。

心折れて、このピックアップされているものを思考停止で次々選んでしまいそうになるのをグッとこらえ、パンフレットを隅々まで確認してから、じっくり決めていく。

さらに頭を悩ませるのは、オプションの存在。プランに含まれる最低限のものをパンフレットで見ると、なんだかとってもショボい…( ´•ω•` )

では、もう一つ上のものにしとこうとすると、価格が2倍・3倍どころか、ゼロがもう一つ増えたりする。この価格設定もかなりエグい。

けれど、その最低価格のもので、今までお世話になったばあちゃんの最後を見送っていいものか?という、謎の良心の呵責に襲われる。

事実だけ見れば、お葬式で使うほとんどのものは2日経てば燃やされてしまうもの。しかし、視点を変えれば、この世の最後の旅支度でもある。

気付けば、ほとんどのオプションを付けてしまって、見積もり額は200万に。

亡くなったばあちゃんのため、「200万でも出す!そうでないと親不孝だ」と言う叔父。生きている叔父の資産を守るため、「それは高い!50万に抑えてこい」と電話口で言う父。

意見の異なる兄弟二人の間に挟まれ、頭がグラグラした。

よし!平均の100万にばあちゃんの好きなオシャレとお花をプラスして、150万にしよう!

ここで、はじめに決めた理想のお葬式のイメージが取捨選択の軸になった。

ばあちゃんを素敵に見せたいから、湯灌(ゆかん)は絶対に外せない。仏衣はかわいい花の刺繍の入ったのがいい。好きだったお花でいっぱいにしたい。

叔父の態度から、すぐに契約締結するつもりの葬儀社に「200万は予算オーバーです。プランを見直させてください。このままでは葬儀社を変更しなければいけません。」とこちらの意向を伝えた。

すると、一番高額である祭壇を見直しましょうとなった。ここで続々と新たなことがわかる。

プランに含まれる基本の祭壇に、花を5万単位で増減できることがはじめて知らされた。

当初はそのような説明がなく、花だけで作る60万の祭壇をすすめられていたので、黙って契約していたら、危うく「そちらも質問しなかったでしょう?」で済まされるところだった。コッワッ‼️((((;゚Д゚))))

見直した結果、プラン内の祭壇を利用してお花をたくさん使うことで希望を叶えて、祭壇の価格を半分に抑えることができた。

3)葬儀の契約をするときは一人でしない

そして、これが一番大事‼️

大切な人を亡くしたばかりで冷静でない喪主が、絶対に一人で契約に行ってはいけない。

相場のわからない未知の世界に、相手は葬儀のプロ。あちらの常識はこちらの非常識にも関わらず、質問しないと説明さえしてくれない。

できれば、喪主以外に2人は冷静な判断のできるちょっと離れた親戚を連れて行くことを強くオススメする。

今回のウチの場合、仕事終わりに駆けつけた私の夫がこのポジションを担当した。

営業トークに揺さぶられる謎の良心の呵責、叔父と父の意見の食い違い、見慣れない数字の羅列に酔い、今にもゲロを吐いてぶっ倒れそうな私の目には、あの時の夫がマジで神に見えた。

お葬式の契約において、完全アウェーなこちらとしては、3対1でやっとバランスが保てるレベル。

最後の最後に冷静な夫の参加で、叔父の気持ちを大切にしつつ、父にも一応は納得してもらい、4時間かかって予算内150万+お布施20万の契約をやっと結ぶことができた。

これで、ばあちゃんらしい素敵なお葬式ができそうだと心底ホッとしたけれど、この時点で私の残りのライフポイントはもうゼロよ…_:(´ཀ`」 ∠):


お葬式でやって良かったこと

前日の契約であまりにクッタクタ過ぎて、式当日の記憶がおぼろげだが、これはやって良かったなーと思ったことがひとつある。

それは、湯灌(ゆかん)というもの。

3人の女性がばあちゃんを丁寧にお風呂に入れて全身を洗って、アロマオイルで保湿をした後に、お着替えをさせてくれた。

さらに、お顔剃りと眉毛カットをして、髪をドライヤーで乾かして、ヘアメイクまでバッチリにしてもらった。

なにこれ⁉️もうこれ、エステやーん‼️

ばあちゃんが「はぁー、気持ち良かったわー(о´∀`о)」って、今にも言い出しそうやーん‼️

メイクの時に、口紅の色を聞いてくれたので、パーソナルカラー診断の知識を活かし、ばあちゃんに似合う色の口紅を塗ってもらった。

ピンクの花の刺繍の入った仏衣もとってもよく似合っていて、ばあちゃんの完璧なお葬式コーデが完成☆

最後に家族でお花を入れて納棺すると、そこにはまるでスヤスヤ眠ってる白雪姫のような姿のばあちゃんがッ‼️

お葬式当日、参列してくれた方は「とってもキレイ。眠ってるみたいね」と口をそろえて言ってくれた。

最後のお別れの時、みんなで入れたお花でお棺の中はぎゅうぎゅうになって、ばあちゃんはちょっと狭そうにしていた。

はじめてのことばかりで、泣くヒマもないほど大変だったけれど、お花でいっぱいの素敵なお葬式で、無事ばあちゃんを見送ることができた。

今回私がお葬式の準備でした、理想の姿を明確にすること、それを軸に取捨選択すること、似合うものを選ぶこと、見せたい姿にコーデすること。

これって全部いつものお仕事でやってることやーん‼️Σ(゚∀゚︎ノ)ノ

生きてても亡くなってからも「素敵になりたい!」「素敵に見せたい!」という想いは変わんないもんだなーと気付いた。

ばあちゃんは今の私がしているパーソナルスタイリストというお仕事を知らなかったけれど、はじめてばあちゃん孝行ができたかな。

今回、ばあちゃんに素敵に装う大切さを改めて確認させてもらって、ますますパーソナルスタイリストのお仕事を頑張ろうと思ったよ。

私は生きてる限り、「素敵になりたい!」というたくさんの人の想いを叶え続けよう。

さて、落ち着いたところで、ばあちゃんを偲んでちょっと泣いてもいいですか?


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