【ショートショート】下町のクリスマス
まだ私の名前がサンタさんの配達リストに載っていた頃の話。
「うちは煙突もないし、今日は玄関の鍵開けといてもいい?」
母に懇願するも「余計に泥棒も入ってくるからあかん」と一蹴された。
そして世界中一晩でプレゼントを配るのにこんな下町まで来てられない、そもそも良い子にしかサンタは来ない。
と母は悪戯に伏線を張った。
数日前のTVニュースで『サンタさんへの手紙』という存在を知った。
その手があったのかという驚きと、もう手遅れだという絶望が渦を巻いた。
サンタはこの街を通り過ぎるかも