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発達障害検査を受けてみました

以前から自分自身が発達障害なのではないかという疑いを持っていて、周囲からもたびたび指摘されるので、診断を受けたい気持ちはありました。しかし僕の場合、この年になるまでに様々な対策を講じていて、現在では大きな困難に直面していないため、医師のカウンセリングを受けるというほど困っているわけではなく、どうしようかと思っていました。そこに医師ではなく心理士による心理検査のみを受けられるサービスがあることを知ったので、早速受けてみることにしました。

注意すべき点としては、検査だけでは発達障害かどうかは確定せず、最終的な認定には医師の診断が必要になるので、今回の結果も確定的なものではありません。ただ、一定の目安にはなりますし、自分の特性を知るうえではプラスになると思いました。実際、検査後の心理士による簡単なカウンセリングでも、大きな困難を抱えていないのであればあえて医師の診断を受ける必要はないのではということだったので、この検査にして良かったと思っています。

今回受けた検査は、WAIS-IV(知能検査)、CAARS(ADHD検査)、AQ(自閉スペクトラム症検査)の3種類です。WAIS-IVはいわゆるIQ(知能指数)を調べるための検査で、発達障害の検査には必要なのだそうです。

※5/14追記:WAISやWISCといった知能検査は、一度受けると再検査まで2~3年ほど間を開けるのが望ましいといわれています。僕の場合は大人の発達障害でもともと窓口も少なく、医師の診断も不要という前提で検査のみにしている点をご了承ください。子供の発達障害の場合、進学などのタイミングとの兼ね合いも考える必要があります。まずは医師にご相談ください)

WAIS-IV知能検査の結果

今回の検査時間は合計で2時間半ほどでしたが、そのほとんどがWAIS-IVのためでした。具体的な内容を書いてしまうと今後テストをする人の結果に影響してしまうので書けませんが、よくネットで見るIQテストの本格的なものを延々やる感じです。その結果が以下になります。

左端のFSIQがいわゆるIQ(知能指数)のことで、127は全体の上位4%にあたるそうです。これは予想通りの数字でした。それ以外の項目についての詳細は以下の通りです。

  • 言語理解(VCI):言葉の理解力、思考力、説明力、学校で習うような知識

  • 知覚推理(PRI):非言語的な(視覚的な)情報の理解力、思考力、推理力、視空間認知(空間的に把握する力)

  • ワーキングメモリー(WMI):聴覚的な短期記憶、保持したまま操作する力

  • 処理速度(PSI):作業を素早く正確に行う力、視覚的な短期記憶

僕の数値を見ると、まず知覚推理(PRI)が極端に高いのが目立ちます。139は上位0.2%ほどということで、視覚的な把握能力や思考力が非常に優れているとのことでした。言語理解(VCI)ワーキングメモリー(WMI)も120近くあり、全体的に処理する能力自体は高いといえます。ただし、それを出力するための処理速度(PSI)が平均の少し上と他の数値より低く、この落差が問題を引き起こしがち、とのことでした。具体的には、作業にあたって時間制限を設けられると、極端に処理が遅くなったり間違いが増えるということのようです。ただ全ての数値が平均より上に出ているので、全体としては優秀に見えるだろうということでした。

発達障害検査の結果

どちらも具体的な数値については開示されませんでしたが、CAARS(ADHD検査)については多くの項目で基準値以上であり、総合的なADHD指標も高い値で、ADHDの特性がある程度出ているとのことでした。

またAQ(自閉スペクトラム症検査)についても、総合得点、下位項目ともに基準値を大きく上回っているため、自閉スペクトラム症の特性が指摘できるとのことでした。

発達障害かどうかの最終的な判断は医師の診断を受けないと出せませんが、ADHDとASD(自閉スペクトラム症)の両方の特性があることは観察でき、他にも問診内容(聴覚と視覚の過敏さ、対人関係の忌避)も踏まえると、特にASDについてはかなり強く特性が感じられるということでした。

検査結果を受けて

自分は以前から手先が不器用でうっかりミスが多い自覚があったので、処理速度(PSI)が低いというのは納得です。一方で知覚推理(PRI)については、高いだろうとは思っていましたがここまで特化しているとは思っていませんでした。普段から図形的に思考していて、映像的なものへの感度が高かったり、そもそも映像的な記憶力が明らかに高かったり、あとは今まで道に迷ったことが一度もないことなども、こういう特性が原因なのかと納得しました。イラストレーターとしても非常に有利な特性とのことです。

以前、ゆる言語学ラジオさんが「視覚思考者」について語っている動画を公開していましたが、僕は明確に視覚思考者であり、言語的な内容を思考しているときでもその言語や概念が空中に浮かんで見えている人なので(密教の阿字観に近い、というのは言い過ぎか)、この動画はまさに自分のことだと思って見ていました。そして今回その裏付けが数字的に出たともいえます。ちなみに、言語の意味について考えるときは視界左上に、複数の言語や概念の関係性や整合性を考えるときは視界右上にその言語や概念が浮かぶ、ということにいま気付きました。

発達障害の特性がどれだけあるかについて定量的に知りたい、というのが今回の目的だったので、それについては期待通りで、ADHDとASDともにその傾向があると分かっただけでも納得感があります。大きな困難を抱えておらず、投薬などの必要性を現状感じていないのであれば、これ以上詳細に検査する必要は無いのではということで、医師の診断を取ることについては今のところは考えていません。

ちなみに、具体的な機関の名前は伏せますが、僕が受けた検査は25,000円ぐらいでした。気軽に受けられる値段ではないですが、僕自身はとても参考になったので受けてみてよかったと思っています。検査を希望される方は「心理検査」「発達障害」などの語句で検索するとヒットすると思います。機関によって検査の形式も様々で、知能検査だけ行ったり、もっと広範な検査を行っているところもありました。なお、こういった検査を受けるかどうかという判断は非常にデリケートで、自分で納得して受けるなら良いのですが、覚悟がないうちは受けないという選択肢も考慮に入れておいてください。もちろん、他人に検査を勧めることにも慎重になっていただきたいです。

なお、僕自身は2016年頃から毎年4月2日の自閉症啓発デーを中心に発達障害に関するSNS等での発信を継続的にしており、今後も発達障害の啓発に繋がるような活動は続けていきたいので、何らかの機会があれば正式な診断を受けることも考えたいと思います。

参考: 世界自閉症啓発デー 日本実行委員会

発達障害的な特性との付き合い方

発達障害的な特性があると日常生活に問題が発生しやすくなります。僕自身も、幼児期には特定のガーゼタオルを一日中持ち歩いたり、学校でよく「キモい」「変人」と言われていじめに近い状態になったり、電話に出るだけでなく自分から電話をかけることも嫌ったり、時間制限のあるタスクが極端に苦手だったり、問題を先送りにしがちだったりと、心当たりのあることが多いです。

一方で、現在はフリーランスのイラストレーターとして、他人との関わりを極力減らし、税務などの事務仕事は可能な限り専門家に任せ、仕事部屋も地下室にして騒音や気温などの環境の変化を減らすなどして対策した結果、大きな問題なく生活できています。また、IQがある程度高いと発達障害的な特性をカバーしやすいという傾向はあり、僕もこれに当てはまるものと考えられます。ただ、それらは身近な人々(特に妻と両親)の理解と協力があってこそなので、非常に恵まれた環境で有り難いなと思います。

この、周囲の人々の理解があることが、僕が発達障害についての情報発信をしている大きな動機です。もっと言えば、発達障害的な特性はほとんどの人にある程度備わっているものであり、発達障害の特性に合わせた対処を広めることは、定型発達者も今以上に生きやすくなる社会に繋がると考えています。むしろグレーゾーンと呼ばれるような人ほどサポートを受けにくい実情もありますし、実際ちょっとした工夫で乗り切れる問題がたくさんあるので、発達障害的な特性への対処法は広く知られてほしいと思っています。

ただ、「発達障害について理解を求める」というのは、定型発達者には「一方的な配慮を求められている」と思われがちで、抵抗が大きいのも分かります。実際ある程度のコストを払わせることになるのは事実なので、そういう反応があることも仕方のないことだと思います。こういう社会活動は過激に主張するだけでは反発が強くなってしまいますし、人々の意識というのは一朝一夕で大きく変わるものではありません。発達障害に関する理解が徐々に広まっているという実感はあるので、無理に押し付けず、楽しく地道に広げていければと思っています。

このイラストは自閉症啓発デー用に描いていて結局間に合わなかったものです。
青は自閉症啓発デーのシンボルカラーで、僕の好きな色でもあります。
そろそろ完成させないとですね。

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