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30代からの友達づくり 1「ジモティーで友達を募集する」

きっかけ

「お茶飲み友達が欲しい!」

その日の僕は、いつものデニーズで孤独と焦燥感にタコ殴りにされていた。いくらコーラを飲んでもカフェインに酔うことはできなかった。

Twitterを消したらオンラインの友達と疎遠になって、誰ともゲームをしなくなった。人や物に依存しないでメンタルを安定させたくてSNSを辞めたが、ふとした時に寂しくなる。

SNSで友達を作ることが出来ても、現実でもつながり続けるだけの強固な関係性を作ることは自分にとって難しい。ネットを介さない現実の付き合いでも、コミュニケーションを怠るとすぐに疎遠になる。

「もう誰でもいい、話し相手になって欲しい。もう手当たり次第いってやろう!」そういう気持ちになっていた。

ジモティーで友達を募集する

さっそく、ジモティーで友達を募ってみた。

群馬県在住の34歳既婚男性(以下1号と称する)から連絡が来た。続いて、また群馬県在住の32歳男性(以下2号と称する)から連絡があった。群馬は友達が不毛の地なのだろうか。

その日の夜、35歳男性(以下3号と称する)から連絡あった。さらに埼玉県に住む、39歳女性(以下4号と称する)からも連絡があった。

ここまでて計4人。自分で募集していてなんだが、宗教の勧誘だったり、ねずみ講なのではないかと疑ってしまう。
ジモティーの人に良い印象がないからだろう。ジモティーで出品していると、世の中、色んな人がいるなと勉強になる事が多い。

3号とは、すぐにLINEを交換した。LINE名を見ると3号の本名がガッツリと出ている。交流会を主催している人だった。職種が自営業とある。一体、何をしている人なんだろうか。距離の詰め方が上手いので、逆に自分の警戒心がガンガンあがっていった。会うだけ会ってもいいけれど、友達にはなれない気がする。

1号のラッシュ

1号からは怒涛のようなLINEがきた。「四人で暮らしてるんですか?」「賃貸ですか?」と矢継ぎ早に質問される。「個人情報を根こそぎ取る気なのか?」と不安になった。友達を作るのってこんなに面倒だっけと思う。
僕は友達が持ち家なのか、賃貸なのかを事前に知りたいとは思わない。話の流れで知れればいいかな程度だ。人には話したい事と、話したくない事があるものだ。1号は、そういう事を気にしないタイプなのだろうと思った。

数日後

4人のうち3人とは連絡が続いている。2号とは会話が止まりがちになって、早速疎遠になりかけている。

1号と3号の2人は月末に飲む約束をした。

4号とは趣味や興味が一致していて友達になれそうだったが、LINEを聞く前にジモティでのメッセージのやりとりが止まってしまった。何か違うと思われたのだろうか。

2号は、結局、僕の方から連絡するのをやめた。話題を膨らませても塩レスなのはしんどい。これがリアルだったらと思うとゾッとする。

人との距離

僕は人との距離感を一定に保つのが苦手だ。友達はもともと2人いるが、その2人は僕がものすごく近づいても逃げなかった2人だ。僕の調子が悪い時も、良い時も2人は僕のことをいつも見守ってくれていた。そっとしておいて欲しい時、空気を読んでそっとしておいてくれる。そういう友達は貴重だ。

けれど、友人達は子育てに仕事に忙しい。彼らとは3ヶ月に1回会うか、会わないかの関係になっていた。家は県内だが、それほど近くはない。もっと気軽に誘える近所の友達が欲しい。

それと、今回こうして新しい友達を作るのは、僕が近づきすぎず離れすぎず、うまく友人との関係性を維持していけるかの練習もかねている。引き続き、元の友人とは別で新しい長い付き合いをする友達が欲しい。

もっと近くに候補はいたけれど

そもそも、同じマンションの総会で知り合った人たちと飲めば良いというアイデアもあった。けれど、なんだか、それは気が引けた。そもそも、そりが合わなかったり、もし仲が悪くなったりしたら切りずらいと思い、二の足を踏んでしまった。友達を作るのは、どのパターンでも多少のリスクはある。それに彼らの中に友達になりたいと思った人がいなかった。

4号とLINEで繋がった

39歳女性の4号とLINEで繋がった。

勇気を出してお茶に誘うものの、「コロナ過が落ち着いてからにしましょう」と断られてしまった。代りに、zoomに誘われた。

連日、お互いの時間を調整してみるが、なかなか時間が合わず、まだ会話できていない。心理学や脳科学、心理療法に詳しい人なので、色々勉強になりそうなので期待している。

大学の後輩に会う

久しぶりに連絡したら、大学生の後輩の主婦(以下5号と称する)に連絡がついたので会ってきた。

ひとしきり大学時代のクズ彼氏の愚痴を聞いた。結婚生活の様子を聞いたが、退屈そうだった。本人的には、「こんなもんでしょ」と現状に満足しているようだった。自分に期待していないし、旦那にも期待していない。子供を持つと女性はリアリストになるのだろうか。現実的で良い考え方だと思った。僕には真似できない。

その話をすると、「吉田さんって、大学の頃から理想が高いですもんね」と言って笑われた。
確かに現状では満足せず、常に上昇志向があるタイプではある。暗に「理想を追い求めて空回りしてませんか?」と言われているようで、嫌な気持ちになった。

去り際に「友達としてなら、また会っても良いですよ」と言われた。帰りの電車で、「あれって、どういう意味なんだろう」としばらく考えた。

ジモティーの飲みサークルに参加する

ジモティーで募集していたサークルに入ってみた。ノリの良さそうなサークルと人見知りサークルの2つだ。
僕は基本的に3人以上での大人数での会話が苦手だ。意外と話題の中心にいたいタイプなので、聞き側に回ってストレスを溜めてしまうのだ。
一気に友達の候補が増えるかもしれないので、時間が合えばイベントに参加してみようと思っている。

文章のカロリーが高い格闘技トレーナー

ジモティで同い年の格闘技トレーナーの方(以下6号と称する)から連絡が来た。
LINEが開通して早々、こちらから質問していないのに、食事制限や脚トレの重要性をかなりの長文でいただいた。脂質は抑えてるのに、文章は高カロリーなんだなと思った。

食事制限をしっかりされているようなので、お茶に誘うわけにいかず、飲みになんて絶対誘えないので、どうやって仲良くなろうかなと考えていたら、運動に誘われた。なるほど、運動して一緒にプロテインを飲めばいいわけね。

実際会ったらテンションが合わないかな~と悩んだが、昔から格闘技は習いたかったので、お金を払って習う約束をした。

受け身塩対応の主婦

西埼玉の女性(以下7号と称する)からもメッセージがきた。7号は自分から「友達になりたい」と言ってきたのに、見事な受け身気質&塩対応で、すべての質問にひとことで返してくるぼっち猛者だった。
旦那さんからDVから受けており、また、浮気もされているとのことだった。でも、それを相談できる友達も一人もいないとのことで、置かれている環境の過酷さを想像できた。共感するうちに、こっちの気もどんどん沈んでくる。

「(7号)さんは、対抗して浮気はするつもりないんですか?」と僕が聞いたら「エッチしたいってこと?」と聞かれてドキリとした。僕はそんなつもりは1ミリもなかったが、この時だけ返信が速かった。僕の中のどこにそんな浮ついた感情を見たのだろうか。それとも、7号自身が刺激を求めているのだろうか。7号とは、特に距離(バウンダリー)に注意しようと思った。

友達がいる人は友達を募集しない

リビングに戻った僕は妻に「ジモティで友達を募集してわかったけど、コミュ力が高い人が少ないのかも」と声をかけた。
そうすると妻は困った顔をして言った。
「そらそうでしょ。そういうところで応募してくる人って、本当に友達がいない人なんだから、何かしらの難があるってことでしょ。コミュ力が本当にあるなら、すでに友達はたくさんいて、わざわざジモティーで探したりする必要はないと思うけど」

妻はハッキリものを言うタイプだ。まったくその通りだと思った。なんだか自分までまとめて斬られたような気がして悲しかった。

妻は僕の言うことを肯定することは少ない。ジモティで友達を募集することにも否定的だった。とかく妻は何にでも否定的で消極的だ。リアリストとも、またちょっと違うタイプなので、間違っても「相談」はしないように注意している。

確かに僕自身も友達が少ない。友達を選り好みするし、気に入った相手とも関係を長続きさせる事が苦手だ。悔しいが、僕自身も「難あり」だと認めるしかないと思った。

いずれにしても、「フレンドリスト」アプリの「友達の数」は、大学の頃からの友達2人、元同僚2人に加えて、1~7号で15人になっていた。このうち何人と友達を続けられるのだろう。

約束をすっぽかされる

4月末、1号とランチをする予定だったが、完全にすっぽかされた。前日にLINEしたら既読がつかなくて嫌な予感がしていたが、案の定、来なかった。
ブックオフで買い物をして、セカンドストリートでウィンドウショッピングをして帰った。
「まぁ、こういう事もあるだろう」と気にはしなかった。LINE上では明るく真面目そうな印象だったが、人はわからないものだ。

初めてのグループ飲み

5月になって、ジモティーきっかけで入ったグループで飲み会があった。

男5人、女3人、計8人での飲み会だった。30~40代が中心で、基本的にみなさん明るい人達ばかりだった。人当たりがよく、感じが良い。とても話しやすかった。以下8~14号の

8号:丸顔ボブのバツ3年下美女
9号:中年のおとなしいメガネ
10号:美大を中退した感じのイケメン
11号:タコみたいなおっさん
12号:大学教授みたいなおばさん
13号:おっぱいがテーブルに載ってたおばさん
14号:分厚い黒縁メガネの遊び人

飲みの席らしいバカ話に明け暮れた。特に8号のバツ3離婚遍歴は興味深かった。離婚事由が役満になることってあるんだなと思った。詳しくは書かないが、彼女が明るく話している様を見て勇気を貰えた。自分の中で、「バツが1つくらい付いてもいいかな」という明かりが灯った。そういう身の軽さも、楽しく生きる上でのコツなのかもしれない。

好みのタイプ

余談になるが、僕は8号の顔がめちゃくちゃタイプだった。既婚者子持ちの身として、こういう自分の好みの女性と出会ってしまった時、いつも対処に困る。
妻との出会い、妊娠、出産、子供たちの笑顔を思い浮かべ、気持ちが持っていかれないように必死にコントロールするしかない。
また、さらに悪い事に、僕が冗談を言ったりすると、8号が楽しそうに笑いながらボディタッチをしてくるのだ。おわかりだろうか。既婚者子持ちにとっては、天敵である。本当にやっかいだと思いながら、デレデレしてしまった。
ヘラヘラ笑いながら、心の中では「妻は、もう、こんな風に笑ってはくれないよな……」とか思う。僕はそんな考えが浮かぶたびに何度もすぐに頭の中で蹴散らした。

40代に希望を持てない

場が落ち着いた時に、40代の女性(12号)に最近、ずっと気になっていた事を質問してみた。

「40代に希望を持てないんですけど、どうやって楽しく生きてますか?」
僕が真剣に質問すると、12号は立板に水を流すように話した。
「趣味だよ!たくさんあるの。遊ぶのに忙しいんだから。うーん、そんなに難しく考えなくて良いんじゃない?私は家の中では裁縫が趣味で、外ではスキーにスノボでしょ。もう最近は毎週行ってるから、忙しいのよ」
「旦那と行ってるの?」と横から13号が入ってくる。
「旦那となんか行かないわよ!あんな陰気なやつと!!」
12号と13号が笑いあっている。

僕はひとり関心していた。予想していた通りの答えだったからだ。人生の余暇を楽しく生きるかは、やはり没頭できる趣味を持てるかどうかなのだ。難しく考え過ぎているのも、確かにその通りだなと思った。

僕は自分の好きなことを集めて、ストレスコーピングのリストを作っているが、これを続けていけば希望は見えるのだろうか。とりあえず、進む方法が間違っていない指針にはなったので安心した。

最近、人に会って話しを聞くのが楽しい。色んな人がいるな、と思う。考え方も全然違うし、何より人生を謳歌している人がほとんどだから、学びが多い。

なんとなく合いそうだなと思った近所に住む9号(大人しめの男性)とLINEを交換した。大勢いたが、LINEを交換したのはこの人だけだった。顔がタイプだった8号は隣に座っていたが、LINEは聞かずにやり過ごした。

偉いぞ、自分!
それでこそ、既婚者子持ちの鑑だ!!

帰りの電車で「これから帰るよ」と妻にLINEをしながら、心の中でガッツポーズした。

とにかく、楽しい一夜だった。

つづく

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