色を科学する その⑪ 均等色空間と色差<前編> xy色度図で色の差を語るべからず
CIE XYZ表色系ができ、① 色を数値で表すこと、② 2色が同じ色であるか?の判定、が可能となりました(②に関してはいろいろ制約ありますが→その⑦ XYZのトリセツ)。
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均等色空間を作れば色差ができる
何度も言うように、上記①②は、色彩科学や色彩工学における大きな一歩であり、すばらしい成果です。しかし、2色が同じ色か?は判定できても、どのくらい違うのか?まではわかりません。そもそも色を正確に再現し、全く同じものを作ること自体が難しく、必ずズレが出てしまいます。そのズレの度合いを定量的に評価し、あらかじめ設定した基準と比較することで、再現性の評価や合否を判定することが、産業界では重要となります。
2色の色の差をヒトの感覚と合致かつ定量的に表したものを色差(Color Difference)と呼びます。「いろさ」ではなく「しきさ」と発音します。一般的な色の違いのことを色差と呼ぶこともありますが、色彩工学では色差はその算出方法までCIEやJISで規定されています。
そして、色差を定義することは、ヒトの感覚に合致する色空間=均等色空間(Uniform Color Space)を定義することと同義です。
そして、均等色空間は、① ヒトの感覚に合致する色度図=均等色度図(Uniform Chromaticity Scale Diagram) と ② ヒトの感覚に合致する明るさ尺度=明度関数(Lightness Function) から構成されており、それぞれ前・後編で説明します。
xy色度図で色の差を語ってはいけない
例えば、下記色度図において、等距離にある色AとB、CとDの差は同じといえるでしょうか?
↑Yは同じとして、平面のユークリッド距離=√(Δx^2+Δy^2)を計算
答えはNoです、残念ながら。なので、xy色度図で色の差を語っていたら、よくわかってない人、となります(0-255のRGBならなおさら)。
xy色度図で色の差を語ってはいけない、ということは、下図MacAdams(マックアダム)の弁別楕円が証明しています。この楕円の中の色は見分けがつかない=同じに見える、のです(ただし、楕円の大きさは、見やすいように10倍になっています)。大事なことは、楕円の大きさと傾きが色によって異なるということです。大きさは言及されていますが、「傾き」はあまり語られてないですね。
緑の領域では特に彩度変化の方向で大きく、青では小さい、すなわち、緑の領域では彩度がかなり離れた2色でも同じ色に見え、青では少し離れただけで2色の差がわかる、ということです。これは、人間が緑に対して鈍感で、青に敏感というわけではありません。人じゃなくて色度図が悪いんです。
また、青から赤の領域では、色相方向に楕円が伸びていて、色相が変化しても見分けがつきにくいことになっています。
xy色度図は、色に対して均等・均質でないんですよね。それはしょうがなくって、そんなことまで考えて作られてない。緑の部分がびょーんと伸びているイメージ。なので、そこをグイっとつぶすといいんじゃないか、と直感的にわかります。
均等色度図(UCS色度図):xy色度図をグイっとつぶす
それを行ったのが、CIE 1960 UCS色度図です(正確には、緑の領域を圧縮し、青と赤の領域を拡大するような処理です)。UCSはUniform Chromaticity Scaleの略です。
※これだと「UCS色度図」は「均等色度色度図」となるんだけど、JIS
での定義は「UCS色度図」です。。。
xyの代わりにuvで色度を表し、下記数式で変換(xyから射影変換)します。uv色度図とも呼ばれます。
u=4x/(-2x+12y+3) v=6y/(-2x+12y+3)
この色度図は1960年にCIEに採用されましたが、1976年に、更に均等性を高めるため、vを1.5倍したv'を用いた(uとu'は同じ)、u'v'色度図(CIE 1976 UCS色度図)に改定されました。つまり、下記式です。
u'=u=4x/(-2x+12y+3) v'=9y/(-2x+12y+3)
MacAdamsの弁別楕円↓はxy色度図よりましになっています(楕円は10倍拡大)。つまり、uvもu'v'も完全ではないということです。uvからu'v'に変えてよくなったか?は微妙ですね。
uv色度図とu'v'色度図は、xy色度図の射影変換(線形変換)なので、xy色度図上の直線はそのまま直線となり、2色の加法混色の結果が直線状にのる、という特性も引き継がれています。
uvと明度関数W*、u'vと明度関数L*により算出されるのが、それぞれ、CIE 1964U*V*W*均等色空間とCIE1976L*u*v*均等色空間(略してCIELUV)です(後編で紹介します)。
このあたり、ややこしくていつもわからなくなってしまうので、学生時代も自分なりに整理していました。その時のメモです↓
しぶとい uv!
uv色度図が採用され60年以上経ち(還暦こえてますね!)、a*b*色度図(1976年)の方がメジャーだし、CIECAM02(2002年)なども登場し、すっかり忘れられた存在になりつつありますが、実はまだ現役です。
それは、照明の相関色温度と演色評価数の計算です。演色評価数の詳細は割愛しますが、基本的に同じ色温度の基準の光(黒体放射やCIE昼光)との比較となるので、まず、評価したい光源の相関色温度を求めないといけません。
光源の色度座標が下図赤線で示した黒体放射軌跡上にピッタリのれば、「相関」がつかない「色温度」となりますが、そうはなることはほとんどなく、下図の等温度線上ならば、その色温度とみなす(相関色温度)というルールです。例えば、光源Aは「相関」色温度が5,000Kとなります。
そして、この等色温度線はuv色度図で規定されています。また、相関色温度が決まれば、各試験色に対して、同じ色温度の基準の光との色差を計算しますが、その時もuv色度図に対応する色空間であるCIE 1964U*V*W*均等色空間を用います。
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