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色を科学する その⑥ 射影変換で色度図をつくる

 ディスプレイの色再現域(Color Gamut)の表現でよく見かける「色度図」はどうやって作られたのか? また、2色を混ぜた結果はなぜ直線状にのるのか? シリーズ6回目でようやく色度図にたどり着きます。


空間から平面へ

 「色を科学する その⑤」で色が3次元空間内のベクトルで表現できること、加法混色がベクトル合成で表現できることを書きました。

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 ただ、空間(3次元)ってちょっとわかりにくいですよね。紙やディスプレイといった媒体も平面(2次元)なので表現しにくい。また、色み(色相と彩度)だけが興味対象の場合もよくあります。照明の色やディスプレイの原色(これも同じ光ですね)を伝えるときなど。明るさは別途、光束 [lm]などで表現しますし。

 そこで、任意の色のベクトルCとX+Y+Z=1である平面=「単位面(Unit Plane)」との交点を求め、その座標で色を表現します。この座標 (xc, yc, zc) は当然単位面上にあるので、xc+yc+zc=1という性質があり、どれか2つの数値が決まれば、残りも自動的に決まってしまうので、結果的に2つの数値=平面で色を表現できるようになります。

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 一般化した計算式は下記のようになります。

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 同様に、各単色光の(X, Y, Z)=等色関数のベクトルと単位面の交点を描くと。。。

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 おおっ!色度図っぽくなってきました! ぐにゅーっとなっていた図形から見慣れた「馬蹄形」や「ヨットの帆」の形になってきました。ちなみに500nm付近はベクトルが短いので、延長して単位面との交点を作ります

 つまり、ベクトルが長くても短くても、方向が同じなら同じ (x, y, z) となります。計算式を見ても、XまたはY、Zの全体に対する比率を求めているので、当然ですね。そしてこれは、明るさの情報がない、ということでもあります。明るさ(輝度)はYを見ればわかるので (x, y, Y) の3変数で表現したりします。


混色結果は直線状に

 加法混色=ベクトル合成は単位平面上ではどうなるのでしょうか? 結論から言うと、ベクトルC1とC2、および合成してできるベクトルCは単位面上では一直線に並びます。これは、合成ベクトルと元となるベクトルがはすべて同一平面上にのり、平面と単位面、つまり平面どうしの交わりは線=交線となるためです。

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 混色結果の色CのXYZはC1とC2のXYZの和となるので、その色度座標も下記のようになります。

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※y、zも同様

 C1とC2の方向=色みはそのままで、大きさ=輝度を変化させても、合成ベクトルはすべて同じ平面上にのるので、単位面上ではC1とC2の交点を結ぶ直線状にのります。C1とC2の輝度の比率を変化させると、この直線状を動きます

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 そして、もう一色加えて3色にすると混色結果は3色が作る三角形内を動き回ることになります。これが「2つの3原色-RGBとCMY」で記載した、「なぜ加法混色の3原色がRGBなのか?」にもつながります。三角形をできるだけ大きくする組合せということですね。

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射影変換すると…

 これで色度図完成ではないのです。この三角形は「色三角形」と呼ばれ、このままだといわゆる「三角グラフ」なんです。三角グラフはクセがあって慣れるまで使いにくいし、直交座標でないと何かと不便です。スウェーデンの国際規格であるNCS(Natural Color System)オストワルト表色系は三角グラフですけどね。

 なので、この色三角形をxy平面に射影変換、すなわち下図のように変形すると…

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 ようやくxy色度図に!

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 射影変換なので、直線は直線のまま変換されます。よって、「混色結果が直線状にのる」というのも維持されます。

 また、RGB表色系のrg色度図の緑の部分がぐーっと伸びているのは、等色関数にマイナスがあり、ベクトルもマイナス方向に延びているので、かなり延長させないと単位面と交わらないためです。

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