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なぜ、色の検定で「眼」や「脳」の話が出てくるのか?

 え!、なんで?、つまんない、色の勉強をしたいのに… といった声を聞きますが、色彩を理解し、活用するためには、絶対に「眼」や「脳」の知識が必要です。 


色は感覚

 なぜなら、色は色素や色材といったモノの物性(モノに属している特性)ではなく、ヒトの感覚だからです。光という電磁波が目に入り、光受容細胞でキャッチし、それを脳で処理したことによっておこる感覚であり、我々の中にあるものなのです。

 この基本的な事実は、ついつい忘れがちです。なぜなら、色の恒常性により、環境が変わっても色の見えがあまり変わらず、まるで、モノの表面の特性のように感じるからです。


光に色はない

 かの有名なニュートン(Isaac Newton)も著書「光学(Optiks)」の中で、

「正確に言うと、光線に色はない。光線には様々な色の感覚を引き起こす力と性質があるだけである」

“For the rays, to speak properly, are not coloured. In them there is nothing else than a certain power and disposition to stir up a sensation of this or that colour. ”

 という名言を残しています。今から300年以上も前です。ちなみに、イギリス英語なので「u」が入った「Colour」が使われてます。

 色の錯覚(錯視)も色が感覚だから起こるものですし、「同じ色なのに違って見える」ではなくて「違って見えたら違う色」と考えるべきです。錯視だけでなく、色の温度感、進出/後退、重量感といった色の心理効果、配色やカラーコーディネート、パーソナルカラー診断といったより高度な色の取り扱いを目指すにあたって、色か感覚であること、そして、その感覚を生み出す眼や脳の特性を理解することは必須だと思います。


盲点

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 ちょっと余談ですが…

 冒頭でも出したこの図、実は光は錐体や桿体といった光受容細胞から遠い方向から入ってくるのをご存じですか?

 光受容細胞に届く前に神経線維が邪魔になって効率悪いし、神経線維が眼球の内側にあるから、外に出す「口」を開ける必要があり、そこが盲点となって、視界の中に見えない点が発生してしまいます。

  この構造を「反転網膜」と呼ぶのですが、デメリットばかりですよね。なぜ、こんなことになっているのか?

 一つは、眼の発生過程。眼はもともと脳の一部であり、赤ちゃんの成長とともに眼となっていく。その発生過程と構造上どうしても網膜が反転してしまうというもの。

 もう一つは、光受容細胞が奥まったところにある方が、栄養補給がしやすい、というものです。錐体や桿体にある色素(視物質)は光を受けると退色し、しばらくして元に戻ります。この繰り返しの作業にかなりのエネルギーを要するので、毛細血管が走っている奥まった側にある方がよい、ということです。


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