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筋そして軟部組織を捉えよ‐徒手療法は直接触れて行うべし(2)

 さて、前回は非常にいいところで筆をおいてしまいましたが、いよいよ今回は私が普段、アクティブリリースやクロスフリクションマッサージ、ISTM (Instrumented Soft Tissue Mobilization)のテクニカ・ガビランやカッピングなどの施術に用いている潤滑剤を大公開

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 上の写真のようにカッピングやテクニカ・ガビランなどのISTM施術にも用いる潤滑剤はアメリカからの輸入品がメインです。これらの中で最も安価で入手しやすいのはコレ(下の写真)

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超音波診断装置あるいは治療器のジェル、写真はパーカー社製の「アクアソニック100」250ml入りボトルが¥800~900、5Lのパックで¥5500~6000程度で入手できます。病院や診療所にお勤めの方なら職場の何処かに転がっているかもしれませんね。ジェルには青い色がついていますが、使用時には全く目立たずほぼ透明になりますし、洋服などに付着しても乾けば色はほとんどわかりません。それに別メーカーの製品には全く着色されていないものもあります。テクニカ・ガビランのワークショップでも「どこにでもある」入手のしやすさだけでなく使い勝手と経済性、そして成分の大部分が水ということもあり、施術後に低周波や干渉波治療器を用いる際の妨げにならない、という理由でコレを勧めています。

 そんな超音波用ジェルにも欠点はあり、ISTMやカッピング治療には最適な粘度(メーカー・商品によって多少異なりますが)ではあるのですが、タイトル写真のようなアクティブリリースや筋の繊維に直交して手を動かすクロスフリクションマッサージなどに使うには柔らかすぎるという点と、時間が経つと水分の蒸発とともに、粉っぽい垢のような残留物が発生するのが気になります。

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 2006年に私が勤務していた某MLB球団のリハビリテーションコーディネ―タ―(1軍アスレティックトレーナー直前のポジションで、2軍以下マイナーリーグの全ての選手と、1軍長期離脱者に対して責任を持つポジション)が見つけてきたのが上の写真、Palmar社のスキンクリーム「ココアバター・フォーミュラ」。少ない量で良く伸び、ISTM器具やカッピングも快適に使えるだけでなく、通常の徒手療法においても、前回の投稿(下リンク)

で紹介したリップクリームのように固く、筋や腱、筋膜などの軟部組織の状態が非常にわかりやすいのが特徴です。入手も米国内では大手ドラッグストアのチェーン店はもちろん、多くのスーパーマーケットのスキンケアのセクションでも販売されており、価格も10~15ドルとリーズナブル、もう文句のつけどころのない決定版ともいえるのですが、ただ一点、やはり「バター」と呼ぶだけあって、油なんです。ISTMや徒手療法の後に低周波や干渉波を用いる際には、コレを塗布した部位をアルコール綿などで脱脂しないことには通電できないうえに、また結構皮膚にしっかり浸透して保湿してくれるのが災いして、脱脂に手間取るのが玉に傷なのです。もしそれらの物理療法を使う可能性が全くないなら、コレで決まりなんですが…。

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 で、前述のリハビリテーションコーディネーターが同じ頃発見した別の商品が上の写真、超音波ジェルの手軽さとココアバターの固さと伸び、を両立させた、AlboleneのMoisturizing Cleanser、ええ、Cleanserというくらい「クレンザー」です。ブランドロゴマークの上に「化粧は落ち、潤いは保つ"The Makeup Comes Off, the Moisture Stays In"」と誇らしげに書いてあります。固さはココアバターに少し及ばないものの、筋などを捉える感覚は必要にして充分、大殿筋などへのクロスフリクションでMP関節背側を使ってもしっかり筋や筋膜の状態が伝わります。そして成分にはパラフィンオイルが含まれているようですが、濡れタオルで軽くふき取るだけで大部分が脱脂され、アルコールを使えばもっと簡単に脱脂でき、すぐに低周波や干渉波治療に移ることができるという優れモノです。ただ、価格は340gで2000~2500円程度とリーズナブルではあるのですが、米国内でもその知名度の割には取扱店が限られており、米国出張の際に入手しようと目論んでも、出張先の都市によっては取扱店が見つからないときもあります。まあ、それを見越してこれまでそれなりの数をストックして来たので、このコロナ禍にあっても私個人はあと2年は戦えるのですが、今後は340gで4000~5000円が相場の海外平行輸入での入手も考えねばいけなくなりそうです。

 さて、ここで紹介した3点いずれも長所と短所がありどれか1点に絞ることはなかなか難しく、今後もこれらを超えるモノはないか、と物色する日々が続きそうです。筋など軟部組織を捉えること、はこの仕事をする上でとても重要なことですので、コダワリを強く持ち続けていたいとは思っていますが、肌に直接触れて施術するようになってかれこれ22年、そろそろ決定版に出会いたいものです。もしその時がきたらまたここで紹介したいと思いますので、淡い期待をお願いします。さてこれらのほかにも下の写真のような「捉える」というよりは「滑り」を狙ったパウダーのお話もあるのですが、それはまたいずれ別の機会で。

よい治療家ライフを。

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