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「日本の給料が上がらない」のは、アップデートできないオッサンによる「ジェンダー問題の放置」が原因です

2021年秋の衆院選が終わりました。選択的夫婦別姓と同性婚に反対する候補者を落とすヤシノミ作戦を展開しましたが、落選させまくることはできませんでした。

一部の方から、「選択的夫婦別姓や同性婚などの『ジェンダー問題』は、『経済問題』よりも優先度が低い」と言われました。まだ多くの人たちは、「ジェンダー問題を解決したところで、経済がよくなるわけではない」と考えているのでしょう。

ところが、こう書くと、ずいぶん印象が変わると思います。

「日本の生産性が低いのは、オッサン文化が根強いから」

長時間労働と飲みニケーション。ITを使えず、いまだに紙とハンコ。テレワークはやらせない。アナログな根回しとヨイショで出世。大事なことは密室で決めるけど、決めた理由はよくわからない。女性や若者は非正規雇用にして搾取する。パワハラ・セクハラで若手のモチベーションを下げまくる。そんなオッサン文化が経済停滞の元凶です...と書くと、多くの方が共感してくれるかもしれません。

「オッサン文化」とは、考え方が古いままアップデートできない男性にとっては都合がいい文化です。

言い換えると、「オッサン文化に属していない人たち(若い男性・女性・セクシャルマイノリティなど)の活躍を阻害する文化」です。

例えば、家事育児に積極的に従事する女性は、オッサン文化に属することができません。長時間労働や飲みニケーションが難しいからです。紙の仕事が多かったり、テレワークができなかったり、大事なことを密室で決められたりすると、さらにオッサン文化から排除され、有能であったとしても活躍することができません。

もし、彼女たちに活躍してもらうために、短時間でも効率のよい働き方を励行し、業務のデジタル化を推進して在宅ワークを可能にし、情報共有を進めてオープンに議論する文化を作れば、単純に業務が効率化するだけでなく、ジェンダーに関係なく多種多様な人材が活躍できる組織にシフトすることができます。

つまり、ジェンダー問題は、日本の生産性と直結しているのです。この問題を放置するということは、既得権を持った一部の男性を保護し続けるということなのです。

今回は、日本経済が停滞し続けているのは、ジェンダー問題を解決しないからだと強く認識していただくために、noteを書くことにしました。


まず現実を見よう

まず、日本人は給与が増えていません。

そして、他国と比べると、相対的に下がり続けています。

私が子供の頃は、「日本の人件費は世界でも極めて高い」と言われたものですが、こちらの記事(OECDデータを元に物価変動調整)によると、現在、日本の年収は世界で24位まで落ちてきています。

いつの間にか日本は、頑張って働いても儲からない(=生産性が低い)国になってしまいました。非効率で変化を嫌うオッサン文化から抜け出せないので、仕方がありません。


では、どんな国に抜かれているのだろう?

次に、先ほどの「平均年収ランキング」の記事から、日本より年収が多い国々を調べてみます。

まず目を引くのは、アイスランド・デンマーク・ノルウェー・スウェーデン・フィンランドなど、北欧勢。

次に、スイス・オランダ・ベルギー・オーストリア・ドイツ・イギリス・フランスなど、他のヨーロッパの国々。

ヨーロッパ以外だと、アメリカ・カナダの北米、そしてオーストラリアとニュージーランド。

大変失礼な話ですが、ニュージーランドは、のどかに放牧しているイメージしかありませんでした。まさか日本が抜かれているとは...


それらの国々に「オッサン文化」はないのか?

年収を順調に伸ばしている国々は、日本と何が違うのでしょうか。

そこで、それらの国々の「ジェンダーギャップ指数ランキング」を調べてみることにしました。若者や女性を排除するようなオッサン文化が根強いのであれば、ランキングで156カ国中「120位」の日本と順位が近いはずです。

先ほど挙げた国々のランキングは、以下の通りでした。

北欧は、アイスランドが「1位」、デンマークは「29位」、ノルウェーは「3位」、スウェーデンは「5位」、フィンランドは「2位」。圧倒的に強いです。

他のヨーロッパは、スイスが「10位」、オランダは「31位」、ベルギーは「13位」、オーストリアが「21位」、ドイツは「11位」、イギリスは「23位」、フランスは「16位」。これまた相当強いです。

ヨーロッパ以外は、アメリカが「30位」、カナダが「24位」、オーストラリアは「50位」。

そして、気になるニュージーランドは、なんと「4位」

2013年にニュージーランドの国会で行われた、同性婚の制度化についての有名なスピーチを思い出しました。

そして2017年、ニュージーランドの首相に就任したのは37歳の女性、アーダーン氏。その後、彼女は首相在任中に妊娠・出産。産休中は代理を立てたとか。

ジェンダー問題に積極的に取り組むことで、多様な人たちが協力し合える環境を作り、生産性を高め続けているのかもしれません。


そして、日本のオッサン文化は続いていく

日本では2018年、男女の候補者数をできる限り均等にするよう求める「政治分野の男女共同参画推進法」が成立しました。

しかし、今回の衆院選で女性の候補者は増えず、候補者に占める割合は17.7%でした。さらに当選者では9.7%にとどまり、前回の10.1%から減少したとのことです。なんのために法律を作ったのでしょうか。

多くの女性やセクシャルマイノリティは、いまだに選択的夫婦別姓や同性婚の制度が作られないことで、余計なコストやリスクを抱え、経済活動に専念することができません。彼女らが日本の人口に占める割合を考えると、日本は巨大な損失を出し続けていると思います。

そして、能力のある若者たちの進歩的な意見は、アップデートできないオッサンの権力によってかき消され、年功序列の下位に並ぶよう要求してきます。これでは他国のように経済成長できるはずがありません。

「アップデートできないオッサン」の、オッサンによる、オッサンのための統治はまだまだ続きそうです。


最後に

もし、あなたが日本の経済を他国に負けないよう成長させたいのであれば、オッサン文化と決別する勇気を持たなければなりません。それは、ジェンダー問題の優先度を上げ、若者や女性、LGBTQ、障がい者などマイノリティの人たちにもっと活躍してもらうことを意味します。

グローバルレベルの優秀な経営者は、ジェンダーギャップの解消は当然取り組むべきテーマだと理解しています。ジェンダーにかかわらず優秀な人材を集め、活躍してもらうことが、事業の競争力を高めると知っているからです。多様な人材こそが、イノベーションの源泉だとわかっているからです。

例えば、ボストン・コンサルティング・グループは、2017年に公開したレポート「女性の活躍推進を日本企業で達成するには(PDF)」で、女性役員の割合が大きい企業はROEやEBITDAなどが高いことを示した上で、「女性の社会参加の拡大が競争優位性の確保に寄与することは明白である」と言い切っています。

これでもまだ「ジェンダー問題は、経済より優先度が低い」と考えますか?

非効率なオッサン文化を続けますか?

そろそろ気付きましょう。

ジェンダー問題を解決することが、経済成長への近道なのです。

来年の夏には、参議院議員選挙が予定されています。再びヤシノミ作戦を遂行したいと考えております。

すでに国民の約7割が賛成している「選択的夫婦別姓」と「同性婚」すら進められない現状を変えていきましょう。

どうぞ引き続きご支援のほどよろしくお願いいたします。


※「批判したいのはオッサンではなく、『アップデートできないオッサン』や『オッサン文化』ですよね」というご指摘をいただきました。おっしゃるとおりですので、タイトルを含めて修正させていただきました。(2021/11/08)

※エビデンスについてのご質問がありましたので、BCGのレポートへのリンクを追加しました。(2021/11/08)

※オッサン文化(長時間労働など)がジェンダー問題と関連していることを理解できない方がいらっしゃったので、その説明を追加しました。(2021/11/08)

※ニュージーランドのアーダーン首相のことを加筆しました。(2021/11/12)

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