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マネジャーの「楽しさ」がわからない——人材マネジャーを3ヶ月やってみた学びと感想

はじめましての人は、はじめまして。サイボウズで今年の1月から人材マネジャー(ピープルマネジャー)の仕事にチャレンジしている吉原と申します。

会社の認知などのブランディング部分を担当するコーポレートブランディング部にて、一部のメンバーの人材マネジメントを担う副部長の立場になりました。昨年、上司から「やってみませんか?」と提案されたことがきっかけです。

サイボウズの場合は役職がついたからといって給与は上がらないのですが(そもそも「役職」というよりは「役割」という認識が強めだとも思います)、下記の理由から引き受けてみることにしました。

  • ここ数年、業務リーダーを担って初めてよく見えたものがあり、それはマネジャーを担うにあたっても同様の変化が期待できそうで、その経験は今後プレイヤーとして働くことになっても自分のスキルアップに間違いなく生きると感じたから

  • 特定の分野でスペシャリストになるイメージは自分の中であまりなく(突出したスキルが見当たらず、広く平均点を取れる系のタイプだと認識しており)、長い目で見ると、人を支えてチームとして大きな成果につなげる役割として振る舞う方があり得そうだから

  • まったく興味がない、もしくは嫌な領域でなければ、周りから求められている仕事を引き受けてみて損はないとこれまでの経験上思うから

  • 良くも悪くも、仕事に慣れてきていた節は感じていたから

  • いざというときは「やっぱりプレイヤーに戻ります」と言えそうな環境だから(もちろん、無責任に放り出すのはNGという前提で)

そんなわけで、以前から業務リーダーとして「業務の成果」を高めるための動きは担当していました。そのため、人材マネジャーになってもそこまで変わらなかった部分もあります。

しかし、人材マネジャーになったことで変化が感じられる部分も出てきました

今日は、ひとまず3ヶ月この役割を担ってみての学びと感想を、自分のためにも書き溜めておこうと思います。

マネジャーに求められる役割はどうやら多いらしい

人材マネジャーとしての役割が増えるにあたり、マネジャーの役割とは果たして何なのかをいろいろ見聞きし、整理してみることにしました。

参考にしたのは、主に下記のインプットです。

■書籍
ピクサー流 創造するちから
HIGH OUTPUT MANAGEMENT
最軽量のマネジメント

■その他
・上司や同僚との会話
・そのほかWebの記事やSNSの投稿など

毎日少しずつアップデートは発生していますが、現時点では「人材マネジャーの役割」についてこう認識・整理しています


人材マネジャーの役割

  • メンバーにとって幸福で豊かな環境をつくり、維持する

    • メンバーの創造性を阻害する要因を排除する

      • 組織内の不安や恐れの原因を突き止め、理解し、根絶する

      • メンバーがリスクを冒しても大丈夫な環境をつくる

    • 問題を発見して対処する

        • メンバー間の調和の観察と調整

        • 発生したメンタル面の問題のサポート

    • 育成、そして給与アップの支援

      • 成長し、その結果として給与が上がることは、多くの場合は幸福度の向上にもつながるため

    • メンバーが主体的に働けるように、情報を可能な限り公開・提供する

      • 情報が欲しいときにメンバーが確実に入手できる環境(プル)をつくり、また目の前の問題を解決する助けとなる情報をこちらから提供できるようにする(プッシュ)

  • 最終的な意思決定をして、最終的な責任を取る

    • そのために(意思決定の精度を高めるために)

      • 「どのメンバーに何を聞けば必要な情報をもらえるのか」「各メンバーがいったい何のプロフェッショナルで、どんなことが得意なのか」を知る

        • 「何でもかんでも自分で意思決定する」必要はなく、「誰に委ねるのかを決める」のも、立派な意思決定の1つ

      • 必要に応じてメンバーにサポートを提供する

        • 自身が持っているノウハウや知識の共有、迷っているようなら選択肢の提案、あるいはそのメンバーをサポートできる人材の獲得と提供

    • 失敗したら謝る

      • 「申し訳なかった。私が決定したことだから、責任は私にある」と、頭を下げる


なるほど。多いし、重いし、難しい。

後半は業務リーダーの職務も入り混じっている気はしています。そのため、本来はもうすこし少なく考えてもいいのかもしれません。

ただ、人材と業務をきれいに切り離して考えることは実際は難しく感じてもいます。そのため、ひとまずはこういう形で捉えています。

人材マネジャーの「楽しさ」がわからない

こうして日々いろいろなマネジャーの仕事を少しずつやり始めて最近思うのが、人材マネジャーの「楽しさ」って何だろう? ということ。

たとえば、ブランディングやプロモーション業務のリーダーやいちプレイヤーとしては「楽しさ」について考え始めると、枚挙にいとまがありません。

  • 同じプロダクトや事柄について、伝える切り口や表現ひとつを変えただけで印象が変わって伝わったとき

  • 施策をリリースした結果、反応してくれた方や反応の内容が当初の想定通り観測できたとき、逆に予想が外れた結果そこから新たな学びを得られたとき

  • 定性的につかんでいたことが定量的に証明されたとき、逆に感覚と実態が外れていたことがわかったとき、または定量的な分析から定性的な調査に進めた結果、数字では見えなかったことがわかったとき

  • 自分ひとりでは思いつかなかったおもしろいアイデアがメンバーから出たとき

  • 自分ひとりではできなかったであろうアウトプットがメンバーのおかげでつくれたとき

などなど……。

一方で、人材マネジャーの「楽しさ」は何なのかと聞かれると、いまの自分にはまだ答えられないだろうなと思うのです。

たしかに、冒頭で人材マネジャーを引き受けた理由として述べたような「この仕事をがんばれば、キャリア的にいい経験ができるかも」というポジティブな感情はあります。ただ、それは「楽しさ」というよりは「役に立ちそう」という、また少し違う形のモチベーションである気もしています。

では、なぜ「楽しさ」をまだ見出せないのか? ここまでの仕事を振り返ると、2つほど「楽しさ」の前に立ちはだかる壁があるように感じています。

人材マネジメントは「減点方式」がメインに感じる

人材マネジャーをやってみてまもなく思ったのは、人材マネジャーの世界は「減点方式」が中心に感じられる、ということです。

チームがうまく運営されているときは、人材マネジャーとしての存在感はある意味薄く感じます。もちろん、将来的に発生・顕在化しそうな問題を先回りして対処するという仕事もあるとは思います。とはいえ、それはそこまで目立ったものではないようにも感じるのです。

逆にいえば、チームがうまく回らなくなってからのほうが、マネジャーの腕が試される。しかも、そこで問題を解決できたとしても、それは「20〜30点に落ち込んでいた状況が何とか80点ほどに戻った」ようなもので、「120点の満塁ホームランが出ました!」というような大きな喜びはそこではあまり感じられません。

チームが100点であり続けることがある意味では基本で、そこから減点方式で試され続ける仕事のように感じるわけです。

……うーむ、ここまで書いてみて自分で思いましたが、もしかすると120点、150点とチームの天井を高めていくような取り組みをもっと積極的に行うべきなのかもしれません。そこまでまだ手が回っていない自分の力不足ゆえの、こういう世界認識というだけな気もしてきました。

「うまくいっている」という確信を得づらい

先ほどの項目とも関連しますが、なかなかチームが「うまくいっている」と実感しづらいなとも感じています。

もちろん、メンバーからは日々いろいろと話を伺っています。各個人の話も聞きますし、仕事の進捗も気持ちや思いについても聞きます。あるいはチームの仕事や状況についてどう思うか、何か言いたいこと/聞きたいことはないか等、いろいろお伺いします。そして、メンバーもよく答えてくれているように感じてはいます。

ただ、非常に難しいなと思うのが、どこまでいってもメンバーの本音を本当に聞けているのかは確信できないことです。

  • メンバーは言いたいことを言えていないのではないか? 言える環境を自分はつくり出せていないのではないか?

  • メンバー自身は言いたいことを言えているつもりかもしれないが、実は本人にも気づけていない問題の種が眠っているのではないか?

などと、心の中で頻繁に自分に問うています。

「問題はない」「メンバーが言えていないことはない」と確信するのは「ないことを証明する」という悪魔の証明の姿をとっています。

ここで「いや、問題なんていまのうちのチームには絶対ないね」と確信してしまうと、それはそれでマネジャーとしては失格ではないかとも思うのですが、とはいえ確信をずっと持てないのもなかなか骨が折れるな、と日々思うわけです。

おそらく、メンバーが幸せそうに働いているなと強く感じられたとき、それは1つの「楽しさ」につながる気はしています。が、こうした悪魔の証明が立ちはだかる故に、なかなかそうした光景にはたどり着けていないのが現状です。

とはいえ、いい経験をしているとは思っている

一応、最後に補足です。タイトルからして悲観的に見えたかもしれませんが、実は特にそんなことは一切ありません。純粋に淡々と「何が楽しいんだろう?」と模索している日々というだけです。

ある意味では、この「何が楽しいんだろう?」と模索する日々を楽しんでいる、という節はあります(笑)。何度か述べた通り、いい経験をしているなとも思っていますし(そんなわけで、関係各位は心配はなさらないでくださいね)。

「業務」以上にたしかな答えが見えにくい「人」と向き合う難しさをおもしろがれるかどうか。もしかすると、人材マネジャーの「楽しさ」はそうしたところに眠っているのかもしれません。なんだかそんな気もしてきました。

以上、3ヶ月ちょっとの新米マネジャー奮闘記でした。まだ始まったばかりですし、引き続きいろいろと学んでいこうと思います。社内外を問わず、人材マネジャーをされている方がいれば、ぜひ先輩として何でも教えていただけますと幸いです!

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