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歯車

その日、彼は歯車を新しくした

綺麗で錆びひとつない歯車は
他の歯車と噛み合って動き始めた

動けば動くほど、周りの歯車も増えていき
彼が我に返った時には
その歯車は沢山の歯車の中に埋もれていた

錆びた歯車がいつの間にか消えていても
誰も疑問には思わないほど
歯車の数は多かった

歯車はひとつだけでは意味をなさず
複数あってこそ、その意味をなす

そして、増えすぎた歯車の中心から
歯車をひとつとったところで
歯車の動きが止まるということはない

彼はこまめに油を差した
だのに、単調な動きしかしない歯車に飽きがきてしまっていた

次第に潤滑油は使用頻度が減り
埋もれたその歯車は錆びていった

彼は歯車の塊を大きくしすぎたが故に
飽いても壊すことができず

埋もれた歯車の錆だけが進んでいった

その歯車が害悪に成り果てるまであと少し

" それまでにその歯車を外してしまおう "



今日も今日とて歯車たちは廻り続ける

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