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リーダーを志す高校生達へ

この夏、『第18回日本の次世代リーダー養成塾』に企業担任として参加していた。
日本全国から将来日本や世界を背負ったリーダーを志して集まった高校生、139名と共に1週間を過ごした。
※塾自体は2週間実施

▼『日本の次世代リーダー養成塾』についてはこちら▼

このひと夏の思い出をいつまでも忘れず、今後立ち返るために高校生達に伝えた事、塾を通して感じた事をここにまとめる。
そして、高校生の可能性を少しでも伝えられたらと思う。

リーダー=完璧な人?

自分の受け持ったクラスは20名。学年は3学年混合で、北は北海道、南は鹿児島県の子がいた。

初めてHRを行った2日目、この20名へ担任として最初に伝えた事。
それは、『塾期間中、とにかく失敗しなさい』という事だった。
色んなことにチャレンジして欲しというのはもちろんのこと、みんなには自分がリーダーに如何に届いていないか自覚する期間にして欲しかった。

子曰しいわく、由(ゆう)や、女(なんじ)にこれを知ることを誨(おし)えんか。
  これを知るをこれを知ると為し、
  知らざるを知らざると為す、
  これ知る為り (論語)

これは私の大切にしている論語の一説。
“知っている事と知らない事を区別できる事が本当の知るということ”という意味。
この2週間でリーダーの素質として、できている事とできてない事を区別できるようになって欲しかった。
その為にはチャレンジと失敗が必要だったのだ。

ところが、塾生たちの反応は意外で、後日もらった感想には、この時の言葉に「驚いた」、「安心した」という言葉が並んでいた。聞くと、“リーダー=失敗しない完璧な人間”と捉えていた塾生が多くいたようだ。

これは今の学校の在り方が、そのまま反映されているのかと感じた。
どうしても教科ごとのテストでは○と✖️で判断され、○が多い事を良しとされているのが学校である。

しかし、社会に出ると何事にも正解はない。
やってみて、ダメなら分析し次に繋げる。成功したらどうすればより良くなるかさらに分析する。
そして社会で必要なのは、何事も自分事として取り組むチャレンジ精神ではないだろうか?

禅には『座忘』という言葉がある。
意味は、新しいものを手に入れるには、まず古いものを捨てなければならないということ。
古いものをすてないと新しいものを入れる場所がないからだ。

だから成功は失敗の元になりやすい

成功ばかりする人は、捨てられないから保守的になってしまう。
短い期間ではあるが、塾生達には成功と挫折を味わう貴重な期間にして欲しい。そう伝えた。

明日死ぬつもりでやれ

そうして始まったリーダー塾だが、4日目のHRでたまたまこの言葉を塾生に伝えていた。

明日死ぬかのように生きよ。永遠に生きるかのように学べ。(マハトマ・ガンディー)

4日目という前半担任の自分にとっては折返しのこのタイミングで伝えたかった言葉。三日坊主という言葉があるように、3日間は集中力が続く。そして慣れてきた上に、施設を変えて環境が変わったこのタイミングで改めて気を引き締めて欲しかった。

だからこの日、”リーダー塾が明日もあると思うな”と伝えていた。
今はコロナ禍。万が一この塾でコロナが発生したら間違いなく即中止だろう。

明日やろう、今度やろうではいつまで経っても成長しない。そして学んだことに無駄はない。永遠に生きると思えば、すべてに学びを見いだせる。そんな話をしていた。

この日は場所を移して海が目の前に広がる自然豊かな施設に来ていた。


到着したのは夕方。きれいな夕日をバックに塾生達と写真を撮ったが、朝日も綺麗だと聞かされていた。

「明日、キレイな朝日をバックに写真取ろうね!」

なんて言いながら過ごした。だが、そんな明日が来ることはなかった・・・

「今」「ここ」「自分」

会場を移した日の夜、事件が勃発した。
スタッフの一人からコロナ陽性者が出たのだ。

翌日からは全塾生の隔離が始まり、カリキュラムは全て中止。
終日部屋に閉じ込めることとなってしまった。

部屋の外に出ることは許されず、何もできない時間を塾生は過ごしていた。
小さなおにぎり1個という育ち盛りの高校生には少ない朝ごはんにお腹をすかせ、元気に体を動かかすこともできず、ただひたすら時間が経過するのを待っていた。

しかし、私たち担任は驚かされた。
塾生たちはこの状況下でも学びを続けていたのだ。

ある部屋は今の自分に何ができるか、ある部屋はおにぎり1個だけの朝食にお腹をすかせ、そのありがたみ、社会の食品ロス問題について議論していた。

どんな環境になっても、自分がなぜここへ来たのかを見失わなかったからこそ、この環境から学びを得ていた。

前後するが、2日目のHRである言葉を伝えていた。

「今」「ここ」「自分」

今この場所にいる自分こそが主人公なのだ。

だからこそ何事にもチャレンジするのはもちろんだが、注意が必要なのは自分は脇役だと思った瞬間、人間は手を抜くということ。

この環境において各自が主人公となり、リーダー塾で物語を作っていた。
だからこそ「今」を無駄にせず積極的に動いていたのだろう。
つくづく塾生達には関心させられた。

そしてこの写真を見てほしい。

これは、隔離生活中に各部屋へゴミ回収へ回ったときのこと。
終わりの見えない隔離生活、少ない食事、狭い部屋に閉じ込められ外出もできずストレスフルの中、塾生達は感謝の気持ちを持ち、担任の心配をしてくれていた。

スタッフと塾生の接触は感染防止の為、NGとされていたので直接塾生達とお話することができなかったが、こうして感謝の気持ちを伝えてくれた。

どんなに自分がきつい状況においても他人を思いやり、そして今の環境に感謝ができる。
これはリーダーと言わず、人としてもっとも大切なことではないだろうか?

私が過去読んだ本に、「奇跡を起こす方程式」という記述があった。それは、

奇跡=才能☓努力☓感謝力(プロフォルファー 古市忠夫氏)

どんな才能や、どんな努力した人であっても感謝力がなければ奇跡は起こせない。
たとえ、才能が足りなくてもその分人に感謝できれば、力は何倍にもなる。

この塾生達は、今の環境に感謝できる確固たる感謝力を持っているのだと思い知らされた。

その後なんとか福岡に戻り、全員の陰性を確認した上で前半担任の業務を終えて解散した。
塾生達はそこからオンラインに切り替えて後半のカリキュラムに望んだ。

実は2020年のリーダー塾は全行程がオンライン開催だったそうだ。
しかし、リアルでしか学べないことも多くあり、今年のリアル開催は塾生達の悲願だったのだ。
半分がオンラインになり、心が折れそうになった子もいたようだが、それでも最後までやりきれたのは、”自分が主人公である”という心がけがあったからだろうと思う。

この気持ちを忘れないで

この塾を通して一人の偉人の物語を見ているようだった。最後にこの話を紹介したい。

かつて日本から遠く離れたアメリカの地に20歳の男の子がいた。ある日、アルバイト先でレジの精算をしていたところ現金が3セント多いことに気がついた。今日接客したお客さんを確認すると、あるご婦人から3セント多くもらっていたことを思い出した。慌てて店を閉めて1時間ほどネームプレートを見ながら家を探し、夜中になんとかご婦人の家を突き止めることができた。「申し訳ございませんでした」とお詫びした少年に対してご婦人は「この気持をずっと忘れないでくださいね」と伝えた。この少年の名前は第16代アメリカ大統領のリンカーン。この誠実な気持ちを持ち続けた少年はアメリカ史上最高の大統領として歴史に名を残した。

きっと今回、コロナ騒動もあり心身ともに疲弊しきった塾生達。
しかし、そのような状況下であっても他人を思いやり、素直に支持に従ってくれたおかげで、クラスターはもちろん他の感染者を出さず、1人も欠けることなく卒塾できたのだと思う。

この気持ちを忘れなければ、きっと139名全員が歴史に名を残すリーダーとなるだろう。

今回リーダーを志す優秀な高校生達と触れ合ってきた。
しかし、触れ合いながら知ったのは、この子は、過去や現在に大きな悲しみ・悩み・挫折を味わい、人のために働きたいと考えたり、自分を変えたいと思ってリーダーを志していることを知った。
これはおそらく全員に共通すると思う。

私が物事を成し遂げる際に必ず意識するのは、「天の時・地の利・人の和」である。

「兆し」という天の時が必ずある。
これは自然に来るものではない、自らの手で掴み取る必要があると思う。
だからチャレンジするときは「挑む」になるのだ。
一方で、どうしても難しこともあるだろう。
その時は兆しから走って「逃げ」ていいと思ってる。

成功の為には、これまでの努力に加えて、今回学んだ感謝力を持ち、自らの手で“兆し”を手にして欲しいと思う。

これからの皆の成長が楽しみだ。


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