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いきなり!ステーキに見るアメリカ進出と顧客を理解するということ

日本で大人気となった「いきなり!ステーキ」がアメリカで苦戦し、ニューヨークにある11店のうち7店を閉店、さらに残る4店のうち2店を業態転換するというニュースを読み、今まで色んなアメリカ人を見てきたり、アメリカに現時点で2年住んだ身として色々と思うことがあったのでまとめた。


最初はTwitterに書こうと思ったのだけれど、140字では到底書ききれなかったし、Newspicksでもコメントの1000字制限に引っかかったし、特にブログに書くことでもないので初めてのnoteを書いてみた。

今までnoteってどのような時に使うんだろう?と思っていたのだければ、このような中間的な位置付けとして活用すると良いのかも知れない。


さて、元記事はこちら。



事実だけを見ると、2年前に進出してから、これだけの大幅な事業縮小をするのは明確な失敗だったと見ても良いと思う。


個人的には日系企業がアメリカに進出するのはとても嬉しいし、全面的に応援しているけれど、今回の失敗から学ぶことは色々とあるんじゃないかと思う。(こうやって失敗した後には理由付けするのも「後出しじゃんけん」だけど)


今回の失敗は、主に下記の3つの理由からだと思います。

①アメリカ人にとっては「いきなり!ステーキ」のステーキが本格的じゃない

②低価格を売りにしたため顧客層(高所得、低所得)が混じり、リピート顧客が集まらなかった(嫌がられる)

③観光客はわざわざ行かない


①アメリカ人にとっては「いきなり!ステーキ」のステーキが本格的じゃない

多くのアメリカ人はステーキとハンバーガーに対する非常に強いこだわりを持っています。
レストランでも焼き具合が気に入らなかったら焼き直しをしてもらったり、二度とその店に行かなかったりというのを見かけます。

家で焼くときにも、肉の保存の仕方を気にしたり、さらに温度を測りながら作ってとこだわりがすごい。

一度YouTubeで「BBQ Steak」で調べてみてください。検索結果は何と約3000万件・・・


日本生まれ、日本育ちの身としては「ミディアムレア」「ミディアム」「ミディアムウェル」の違いって何よ?という感じではありますが、これらは違うものなんですよね。

(因みに僕はRibeyeだったらミディアムレア、フィレだったらミディアムが好きです。違いは聞かないで)



現地のソウルフードに対して「本格的なステーキを低価格で!」というのは、アメリカ企業が「本格的な寿司を低価格で!」と日本に進出してカリフォルニアロールを出しているような傲慢さを感じてしまいます。

逆に日本食を提げてアメリカに進出した大戸屋なんかは、日本よりも高く値段設定をして成功しているので、日本食で戦う、というのだったらまた違ったのだろうと思う。

(定食$25 = 2700円くらいにしないとニューヨークでは利益が出ない、というのもある)


②低価格を売りにしたため顧客層(高所得、低所得)が混じり、リピート顧客が集まらなかった(嫌がられる)

記事中にある『米国ではステーキは特別な日に食べるというイメージが強く、同社が提案した「ステーキを手軽に楽しむ」という文化は広がらなかった。米国ではステーキは特別な日に食べるというイメージが強く』は正しくもあり、間違ってもいて、これを失敗の理由と考えているんだったら、次も失敗すると思う。


多くのアメリカ人にとってステーキは一般的。

どのスーパーでもお肉コーナーには量り売りだったり、パックされた状態でステーキ用のお肉を置いています。

値段もピンキリで「安くステーキを食べること」は可能です。


では、レストランではどうか?


高所得層のアメリカ人にとって、ステーキハウスで食べることは一般的で、平日の夜にも多くのカップルや家族連れを見かけます。

友だちのアメリカ家族は「平日は全て外食」

毎日色んなレストランを回っていて、家で料理をするのは誰かを招いたときだけ、というツワモノです。


中所得層は、ステーキハウスは「特別な日」(誕生日だったり、記念日だったり)にしか行かないか、中価格のレストランでステーキを食べたり、ダイナーに行ったりする。


低所得層は、ステーキハウスにはなかなか行けないから、行く日は本当に「特別な日」になります。


こんな感じで所得層によって行くレストランが分かれている。


いきなり!ステーキのように「安いけど高品質」というのは顧客層が混じるリスクが非常に高くて、「雰囲気」を重視する中高所得層は一度行って自分と違うヒエラルキーの人がいたら、もうリピートしないんじゃないかと思う。

これと同じ理由で吉野家がアメリカで失敗したと言われています。


③観光客はわざわざ行かない

世界中、アメリカ中の観光客がニューヨークシティに集まります。

ターゲットを観光客にしていた、という話もあるけど、

では観光客がわざわざ「日本のステーキを食べに行くか?」

答えはNoでしょう。

だって、わざわざニューヨークに観光に来てるんですから。

「日本の」のステーキハウスじゃなくて、同じ価格帯のアメリカンなステーキハウスに行きますよね。

「いえーい、ニューヨークで、いきなり!ステーキって日本のステーキハウスに来たよ!」ってインスタ映えもしないし。

また、日本の「肉」というとアメリカでは「Hibachi(鉄板焼き)」のイメージと結びついているのです。


観光客相手にステーキで勝負するんだったら、アメリカンな名前で「食べたあと調べたら実は日本企業だった」ぐらいなほうが良いんだと思う。


結局、今回の話というのは、「誰を顧客ターゲットにしているのか」「その顧客ターゲットは何を求めているのか」を徹底的に考えた上で進出できていなかった、という基本的なマーケティングの話顧客思考の話に繋がるのではないかと思う。まさに言うは易く行うは難しだけれど。


成功からも失敗からも学ぶことがあるけど、失敗を非難ばかりしていたら、どんどん次に挑戦する人が減る。


失敗って目に付きがちだけど、今回の失敗で「アメリカ進出は難しい」と安易な結論を出すのではなく、「何故失敗したのか?」を突き詰めて、「じゃあ、どうやったら成功するのか?」に繋げて、アメリカ進出して成功する日系企業が増えたらうれしい。


それは違うぜ!とか、こういう視点もあるよ!とか、大賛成!とか、色んなコメントもらえれば嬉しいです。


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