Step#232|折に触れて読む式辞。
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季節外れですが、
よく思い出す2つの式辞です。
何かのご参考にあれば幸いです。
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哲学博士の中島義道先生が
電気通信大学の卒業生に贈った
はなむけの言葉より
しばらく生きてみればわかるが、
個々の人の人生はそれぞれ特殊であり、
他人のヒントやアドバイスは
何の役にも立たない。
振り返ってみるに小学校卒業式以来
嫌というほど『はなむけの言葉』を
聞いてきたが、すべて忘れてしまった。
なぜか?
言葉を発する者が無難で定型的な言葉を
羅列しているだけだからである。
だとすると、せめていくぶんでも
本当のことを書かねばならないわけであるが、
私は人生の先輩としてのアドバイスは
何も持ち合わせておらず、
ただ私のように
なってもらいたくないだけであるから、
こんなことはみんなよくわかっているので、
あえて言うまでもない。
これで終わりにしてもいいのだけれど、
すべての若い人々に一つだけ
アドバイスではなくて心からの『お願い』。
どんな愚かな人生でも、
乏しい人生でも、
醜い人生でもいい。
死なないでもらいたい。
生きてもらいたい。
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2010年度大阪大学卒業式・学位記授与式
鷲田清一総長式辞(東日本大地震直後の卒業式)
みなさんは学業において
優秀な成績をおさめられ、
社会に出てもさまざまな場所で
これまた優れたリーダーたることを
目指しておられるかもしれません。
もちろんそれは間違いではありません。
けれども忘れてはならないのは、
誰もがリーダーになりたがるような
社会はすぐに壊れるということです。
一つの事業を成し遂げるには、
リーダーとともに、
脇役や黒子やコマが要ります。
昨今、リーダー論の本が
書店には溢れていますが、
そしてちょっとひねくれた言い方に
なるかもしれませんが、
そもそもリーダー論に素直に従うような人は
リーダーになれないということもあります。
リーダーたる人は前例を踏襲せずに、
自ら道を開いてゆく人であるはずだからです。
(中略)
上司の命を待つのではなく、
一人一人が自分の頭で考え、
へこたれずに行動できる組織が
いちばん活力があるのです。
getting things done by others.
そういう意味では、
リーダーがいなくていい組織を作れるのが
真のリーダーだと言えるかもしれません。
(中略)
もしリーダーに推されたとき、
いつでも「一差し舞える」よう、
日頃からきちんと用意をしておけというのです。
私はみなさんに、将来、周囲の人たちから、
「あいつにまかせておけば大丈夫」とか
「こんなときあの人がいたらなあ」と
言ってもらえる人になっていただきたいと
心から願っています。
そう、真に教養のあるプロに
なっていただきたいのです。
そのために大学に求むるものがあれば、
いつでも大学に戻ってきてください。
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