中小企業の人事・給与制度について思うこと

東京から地元に戻り、事業継承をして半年。
制度設計面での一番の驚きは、人事制度・給与制度が全くと言っていいほど整っていないこと。そしてそれが当たり前の状態にあること。

大企業の場合、職務職責に伴い、給与テーブルが用意されている、
また各役職者の必要なスキルや要件が明記されているが、中小企業の場合は全くといっていいほど明記されていない。

うちの会社ももちろんそのようなきれいな制度が存在するわけでもなく、なんとなくで全員の給与や賞与が決められ、社内の昇進も前任者が定年退職したからスライドで出世する、といったような「なんとなく」「昔からの慣習」的なことで決まっている

もちろんこのような設計をすることで、人件費をコントロールできるし、自由に従業員に責任を負わせることができる。
特に中小企業の場合、人件費科目が大きなウェイトを占めているし人が潤沢にいるわけでもないので、都合が良いのかもしれない。

但しこの運用をやってしまうと、
・従業員が全く育たない
・従業員のモチベーションが上がらない
・積極性が欠如し、与えられた仕事だけしてしまう
・10年後、15年後といった未来のあるべき組織が描き切れない
・従業員のスキルが向上しておらず、転職で苦労する
・会社として新しい取り組みが全く進まない、現状維持・改善はできるが、抜本的な解決、改善ができない
といったように、将来に対して悪影響を与えている気がしている

ではなぜこのような事態に陥ってしまっているのか、
もちろん現在の社長も適切な人事制度の運営は必要だと考えている。

原因はやはり「他の企業が実際どのような運用をしているのか」を知らないことだと思う。

基本的に中小のオーナー系企業は社長の一存で物事が決まっていく。
その社長が外部登用人材で、かつ持っている知識やスキルを定期的にアップデートしている状態であれば、あるべき論はできると思う。

但し、多くの中小企業のオーナーはすでにその会社で何十年も働ており、他の先進的な会社、他の一般的な会社がどのような運用をしているのか全く分からない。

わからないと、自分たちの運用状況と他社を比較できないので、おかしいところ、改善すべきところがわからないといったことになる

故に、むかーしからの状態が維持されていると考える。

経営者の「情報の格差」もしくは「体験の格差」が大きな要因と推測する。


であれば、どうすれば改善できるのか、
「外部のコンサルを入れる?」「メインバンクと一緒に改善する?」
否、Uターンした次の経営者がもともと働ていた環境を参考に新しい制度、正しいと思われる制度を作ること以外難しいのではないか。

だってワンマン経営者はそんな外部からの意見を簡単に取り入れない。

Uターンして常々思うのは、
Uターンした経営者に求められるのは、「前職の経験の中でよきものを次の会社に取り入れること」だと思う。

そのためにも、次期経営者は、前職で新しい取り組みを体系的にどんどん取り組んでいる企業でしっかりを経験を積む

例えば前職が営業だとしても、将来会社全体を見る、という意識をもって人事制度、労務制度、企業会計、社内IT環境等もしっかりと把握することが必要。

私の場合は、キャリアを人事からスタートさせ、人事制度、労務制度、決算対応、営業では事業開発、事業投資、上場企業管理等幅広く対応させてもらった。

自分の子供が将来この会社を継ぐのであれば、そのような経験をしっかりと積ませることが大事、同業他社で業界の知識を勉強させるよりももっと経営全般を経験できる環境を進めるべきだと思う。

さて話は戻るが、現在の企業では全くその人事・給与制度は整っていない。
私の目下のミッションは、適切な制度を作り、その制度にのっとり、職務職責を決め、給料や昇格要件を定義していく。
そして従業員全員がスキルアップをし、もし仮に転職したとしても、転職先でハイパフォーマーになって活躍してもらう
そんな風になってほしい。

そのためにも、まずは社内で必要な役職そしてそれぞれの役職についての職務を定義する。職務が定義できれば、どのような経験を積めば上に行けるのか、どのようなスキルが必要なのが見えてくると思う。

それを踏まえ給与・賞与テーブルを作成し、従業員それぞれのキャリアッププランを用意する

その方の人生の大半を占める仕事を、うちの会社で行っていただけるのだから、会社としての責任は本当に重いと思う。
その責任の重さを感じるからこそ、会社としてもキャリアップの道筋をきっちりと用意して、全面的にバックアップをしてあげることが必要だ。
但しこれは逆もしかりで、制度が出来上がった以上、降格もある。
ペイフォーパフォーマンスであるから


星野リゾートの星野さんの著書でも、オーナー経営者のほうが実は定期的に会社をアップデートできると記載があった。
それは戻ってきた次期経営者が、前任の経営者(父)がうまくできなかったところを変革するからだと。

これは一般の企業では難しいがオーナー企業であれば可能性としては十分考えられる。
父と子の年齢差もあり、明確に30年単位といった周期は言えないが。。

今の社長が社長になってからもう30年以上たつ、次の世代である私は過去からの良いバトンを受け継ぎつつ、悪いバトンは改善していく、新しいバトンを作っていく使命がある。

そのバトンを強いものにして今後100年続く企業を作っていきたい。




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