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第7回読書会 二葉亭四迷 「嫉妬する夫の手記」を読む

参加者: 岩本、澤井、外館、西
選書: 西

今回の読書会では二葉亭四迷『嫉妬する夫の手記』を選書させていただきました。

つらつらと覚書のように書かれた文章は明快に着地することなく、ぷつんと終わってしまいます。“オチがない”という特徴や、掴みどころなく、本当に他人の手記を覗き見しているような不明瞭さが印象的だったため、他の人の感想も聞いてみたいと考えて選書してみました。

話し合いの最初、二葉亭のロシア語翻訳の印象から離れた意外な作品だったという感想が出ました。この作家に対する印象に関する話は会の後半でも登場します。当たり前ですが、私達は二葉亭と直接会う事はできないので、当然、作品を通して作者を見る事になります。
どの作品から作者を知ろうとするかによって、異なる側面が見えてくるというのも面白いですし、個人的には、作品として考えた時の“小説”という形の伝えうる世界観の豊かさを垣間見た気がして興味深かったです。

作者と作品という括りでは、作家の本質と作品の関係性に関する話も話題に上がりました。
文章を書くテクニックがいかに優れていても、身体性や実体験に基づいたものでなければ読みものとしておもしろいとは言えない、という言説から始まり、明治時代におけるエッセイストはYouTuber的立ち位置だったのではないかという話、西村健太の小説との向き合い方の話などに広がりました。
小説を読む時は基本的に独りなので、映画や絵本などとは異なる独特の空気感を持っているような気がします。直接作家と話しているような、パーソナルな距離感が存在するからかもしれません。だからこそ、作者の本質的なものに近しい事を綴った文章は、他人の心の深いところに触れる、ゾクゾクとした高揚や強い共感と似たものを感じ「おもしろい」と感じるのかもしれないなぁなどと考えたりもします。

今回は作者に関する話が面白く、そこに焦点を絞ってしまいましたが、他にも自分の作品と繋げて考えたり、当時の価値観について話したり、一つの本から様々に話が広がっていくのが読書会の醍醐味だと思います。次回も様々な話ができるのが楽しみです。

英語塾を開校し、授業の傍ら、英検や受験問題の分析や学習方法を研究しています。皆さまの学習に何か役に立つ事があれば幸いです。https://highgate-school.com/