畑中さん

【Vol.9 グローバル人材インタビュー 】日系硝子びんメーカータイ現地法人社長が語るグローバル人材。それは常に自分を磨き続け、文化、価値観、言語を超えて、どこにいても「個」を発揮できる人

畑中秀郁
日系硝子びんメーカー勤務。現在タイ財閥系企業と設立した合弁会社で社長を務める。
日本の国際部を経て、2011年にフィリピンにある工場の最年少生産部長(当時)として赴任。4年弱フィリピンに駐在した後、タイの合弁会社社長に就任。アテネオ大学MBA

波乱万丈の海外業務スタート。ガラス製造部門から海外提携交渉。アメリカでのアポなし営業からフィリピンの製造部長へ

よし
 畑中さんの日系硝子びんメーカーでのキャリアを教えて下さい。特に海外業務を開始して以降は色々な経験をされていると聞きましたが、そのあたり詳しく教えて下さい。

畑中
 元々はガラスの製造部門をサポートする仕事をしていたのですが、これからもっと会社が発展していくには海外に目を向けるべきだと思うようなった頃、国際部に異動させてもらいました。そこから日本の製造技術を伝達する提携先を探す為に、東南アジアを含め、インド、ロシアなど色々な国に飛び回るようになりました。

 当時、日本の管理手法や日本企業と組む事の「ブランド力」というのはまだまだ需要としてありました。提携する為には当然「交渉」が必要になってくるので、そのような海外での交渉事にも面白さを感じるようになって行きました。

 この海外での交渉業務をしながら、将来の事業構想検討や既存製品の拡売の為大きな市場であるアメリカに一人で何度も出張し、色んな会社を訪問しました。こんな時代にアポなしで訪問したことも山ほどあります。(笑)

よし
 提携交渉担当からアメリカでのアポなし訪問ですか(笑)?同じ海外の仕事なのに、大きな変化で面白いですね!

畑中
 99%ぐらい失敗していましたが(笑)。そんな事をアメリカ各地でやってました。

よし
 それはいつまで続けていたのですか?実際には何か大きな成果は得られたのでしょうか?

畑中
 2011年頃まで取り組んでいました。やはり本格的にビジネスをするためには、アメリカのどこかに駐在事務所を作って、しっかり腰を据えて情報収集をやるべきだと会社に提案しようとしている最中に、人事異動の連絡がありました。当時フィリピンで製造部長をしていた前任が急遽日本に帰任する事になった為、「出来るだけ早くフィリピンに赴任して欲しい」との事で、フィリピンに駐在する事になったのです。

よし
 製造部門から海外での提携交渉、アメリカでのアポなし営業から次はフィリピンでの製造部長ですか!波乱万丈の海外業務ですね!

製造部長でフィリピン駐在。「経験」と「知識」の両輪を回し続け、「現地化」を経て気づいた「個」の重要性

よし
 ここからフィリピンの話になりますが、どのようなポジションで赴任されたのですか?そして結局何年くらいフィリピンに駐在されたのでしょうか?

畑中
 ポジションは「製造部長」でした。当時社内では最年少の製造部長でした。フィリピンは結局約4年程駐在しました。

よし
 なんと。最年少製造部長ですか!私もベトナム駐在時は同様に製造部長という立場だったので、凄く苦労しただろと容易に察しがつくのですが、フィリピン駐在当初はどういう事に苦労しましたか?

畑中
 もちろん異国の地なので、フィリピン人は「価値観」が異なる訳です。最初フィリピンに赴任した時には自分の「価値観」を押し付けようとして失敗したと思います。例えば、「時間をしっかり守る」とか「仕事はきっちり計画通りに進める」など日本で持っていた仕事の「価値観」を浸透させようとしたのですが、全然うまく行かなかったですね(笑)。

よし
 まぁ、失敗するでしょうね(笑)。そこからどのように改善されたのですか?

畑中
 全然うまくいかなかったので、「人ってどうしたら行動したくなるのかな?」「人ってどういう時に幸せを感じるのかな?」というのをそこから深く考えるようになりました。そしてそういった事を漠然と考えるのではなく、知識として身に着けたいと思うようになり、当時ビジネスコーチングをして頂いていた方の後押しもあり、フィリピンのアテネオ社会人大学院でMBAを取得することにしました。

 私としては「経験」だけではなく、「知識」との両輪が組織をリードしていく上で必要だと感じた為です。現場を活性化しようと、学んだ事を現地で実践するような事を繰り返していました。

よし
 そこから状況はどのように変わっていきましたか?何か変化はあったのでしょうか?

畑中
 人間関係に特に変化が有りました。学びを実践するというのも効果的でしたが、もう一つは自分を「現地化」させるというのが現地メンバーの「価値観」を理解する上では必要でした。

 簡単な事ですが、皆と一緒にローカルのお店でご飯を食べたり、フィリピンの「価値観」や「興味」を自分からしっかり観察するようになりました。そういった姿勢が伝わったのかもしれませんが、徐々に現地メンバーも心を開いてくれて、仕事がうまく回るようになりました。

よし
 なるほどMBAの学びの実践と自身の現地化が良化のポイントだった訳ですね。私もベトナムで駐在していた時に「現地化」は非常に大事と思っていて実践しましたが、一方で自分を現地化しすぎると、「日本人としての価値って何なの?駐在員としての価値って何なの?」という課題感を持った経験があります。畑中さんはその辺りどのようにバランスをとっていたのですか?

畑中
 私もそれを思った事はあります。駐在経験が長くなって今思うのは、日本人や駐在員としての価値というよりも、文化、国籍、価値観を超えて、「畑中」という「個」として認められる事を目指そうと思っています。「日本人」というのは私の一つの要素でしかないですし、国籍はただの違いです。

 日本人として優れている点もありますし、そうではない点もあります。私も良い点もあれば、もちろん悪い点もあります。全てはただの「違い」でしかありません。「個」として認められるようになるのが、なにより重要だと思います。

「出会い」と「挑戦」。海外で働く事で得られる2つの大きな魅力

よし
 フィリピン駐在後、現在はタイ現地法人の社長としてタイに駐在されていますが、これまでの海外駐在を通じて感じた「海外で働く事の魅力」って何だと思いますか?

畑中
 大きく2つの魅力があると思います。一つが「日本では中々会えない人と出会える」もう一つが「挑戦」です。

 一つ目の「日本では中々会えない人と出会える」件ですが、例えばよしさんも日本だとそう簡単にアクセスできない人だと思うのです(笑)。他にも起業している方々や、超有名企業の経営層の方々など、海外だったからこそ出会えたという人が沢山います。

 それはポジションが上の人達と会えるのが魅力という意味ではなく、その人達が持つ体験談が本当に豊富で面白く、それを直接聞けるというのが魅力という意味です。私もその方々から話を通じて多くの事を学ぶ事が出来ています。これは日本にいては中々出来ない経験だと思っています。

 もう一つの「挑戦」ですが、海外では日本にはない沢山のハードルが存在します。例えば、言語、文化、価値観の違いなど、一つ一つハードルを越えていくことに達成感や喜びを感じます。他の人から見ると苦労に見えるかもしれませんが、自分の変化が実感でき、新しい価値観を得られるので幸せと感じるのです。

自分を磨き続ける理由。それは世界のどこにいても「個」で勝負する為

よし
 これまでは畑中さんご自身の経験を聞かせて頂きましたが、これまでの駐在経験を経て「海外で働く為に必要なマインドや能力」は何だと思いますか?

畑中
 海外で働いた経験がない人にとって、海外で働く事はやはり不安だと思います。ただ、その不安ってどこから来るのかと考えた時に一番は「情報不足」だと思うのです。

 例えば、朝出勤する時に「勇気」は要らない、何故ならどうやっていくか、どれくらいで着くか、安全かどうかなどほとんど分かっているからです。「情報」があるので不安を感じない訳です。ですので、海外で働きたいのであれば、まずはしっかり「自分で調べれる人」であったり、「実際に海外で働いている人に話を聞ける人」でなければなりません。

 情報収集をしっかり行う事で、不安が減り、海外で働くことのハードルも随分下がると思います。

 能力という観点では、月並みですが「コミュニケーション能力」が必要だと思います。とは言え私も当初は海外の知り合いでも5分話するのも大変でしたが、場数をこなして今は一緒に食事したり雑談する事が楽しいです。逆に言うと、コミュニケーション能力を向上させる為に、しっかり「場数をふめる人」でなければなりません。最終的に異文化の人を笑わせれる事が出来るレベルになれば本物でしょうね(笑)。

よし
 駐在経験も長い畑中さんですが、今でもグローバルで活躍する為に、何か挑戦している事はあるのでしょうか?

畑中
 仕事でもプライベートでも毎年何か新しい事に挑戦しようとは思っています。例えば昨年は友人に誘われてスキューバダイビングにも挑戦しましたし、コーチング手法を学んだのも一つの挑戦でした。今年は自分自身の言語化のアウトプットを意識しブログも始めてみました。新しい事を始めると新しい価値観に出会う事も出来ますし、発想が広がる気がします。

よし
 畑中さんは駐在経験を通じ、沢山海外で活躍されている方とも出会って来たと思うのですが、ご自身の経験や海外で活躍されて来た方々と接する中で感じた「グローバル人材」とはどういう人を指しますか?

畑中
 簡潔に言うと、文化、価値観、言語を超えて、「個」を発揮できる人です。それは日本と海外という対立軸ではなく、世界のどこにいても「個」で勝負ができる人を指します。その為には常に自分を磨き、変化させ続ける人でなければならないと思います。

よし
 最後に、今後海外に挑戦したい人に向けてアドバイスをお願いします。

畑中
 実際に海外で活躍していて、気になる人や、理想と思っている人に会ってみるのが良いと思います。有用な情報を得られたり、自分の行動を後押しするきっかけができます。まずは一歩目が踏み出せるように頑張って下さい。

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