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シューズデザイナーにどうやったらなれるんですか?の話

昔、インターンとして来ていた子が東京の靴の学校に行って、久々にあうことになった。

当時大学生であった彼は靴がとても好きで、大学そっちのけで靴の仕事に就きたいという。それで僕たちの会社にコンタクトをしてきた。その時はインターンといっても、靴づくりをすこしやった程度で仕事っていう感じではなかったのだけれど、結局大学を辞めて、自分で学費を稼いで、一年後東京の靴の学校へ入学した。

それが3年前の話。

そこで久しぶりに会っていろいろと話をした。彼は学校でデザインを学んでいたようだった。昔は”作る”だったのに、”デザイナーになりたい”に変化していた。そして今年は就職活動とのこと。この時期に本当に大変だと思う。

で、まあいろいろあるけど、靴のデザイナーってどうやってなるんですかな質問をされますが、僕も別の畑(プロダクトデザイン)から靴を学び、結果こういう形で靴に携わってるんです。だから、いわゆる正規ルートってのは知らないんです。聞かれても的はずれな発言になってしまうかもしれません。ですが、一応こうやってご飯を食ているので、僕が靴のデザイナーという設定で、何がスキルとして必要なのかを書いてみました。

今回は靴やスニーカーをデザインしたいと思っている人が読んもらうことができて、少しでもお役にたってもらえればよいかなと思って書いていきます。

まず一番大事だと思うことは、

1:靴を作って何がしたいのか、何を伝えたいのか、がはっきりしていること

これはビジネスでいうところのビジョンってやつですね。これはスキルとは違うかもしれませんが、一番大事だと思うやつです。

正しい、間違っている、はあんまり関係ありません。とことん貫く意思が大事です。この意思が高いと、周りにも影響を与えて、いろいろと手を貸してくれたりします。自分がなぜ靴をやりたいのか、それで何を成し遂げたいのか。これは人に説明できるようになりたいですね。

でもこれが結構むつかしい。ただ好きだからっていうのももちろん理由としてはあるだろし、社会問題を解決するのが目的だったりもします。純粋に動機を掘り下げて、言い切れるものだったらなんでもいいと思うのですが、なかなか単純な動機って大きく言えないものですもんね。そんな大層な考えはない!というような人もいると思います。だからといって、ダメだーって思う必要もないと思います。今まで無くて、パッと思いつくものでもないし、今日、明日にでもすぐ出るものでもないので、日々考えつづけてアップデートしていくことが大事だと言えます。そうやって時間とともに形作っていけばいいと思います。

ちなみにこのビジョンの範囲を小さくフォーカスすると、製品ごとのコンセプトにもなります。学校でもしっかりと「大事だー」っていってくれるやつです。なので大事だということです。とことん考えましょう。

2:スケッチはある程度描けたほうがいい

スケッチ(手書き絵)は相手に伝える手段としてのスキルです。なので、うまいに越したことはないですが、下手だからと言って書かないのは一番だめです。下手でも苦手でも書きましょう。そして相手にこちらの伝えたいことがちゃんと伝わることが大事です。きれいにかけても、こっちが伝えたいことが伝わらないスケッチは意味がないです。

あと、スケッチはなるべく時間をかけずに早くサササッと描けるのがいいですね。僕は絵のうまさより、アイデアの内容や、短時間で描ける”数”が大事と思っています。打ち合わせとかでその場で書いて伝えることも多いです。

靴の場合でスケッチはアウトサイドビューとパースをよく描くので、サササっと描けるように手に覚えこませましょう。

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僕はあまり鉛筆を使わず、そこいらのペンで書きます。上の絵はコピックの0.1ミリを使ってます。とくにうまくもありませんが、これでもなんとかやっていけます。

3:ビジネス(お金)のことも知っておいて

デザイナーは時としてお金儲けとは別におかれる職種とみられることがありますが、デザイナーは個人製作であれ、クライアントワークであれ、必ずお金が付きまとうのが事実です。靴という製品を生み出すことは、必ず最後にはそれを買う人がいるわけで、そこにはお金が必ず関係しています。なので、お金、業界のビジネスの仕組みを知っておくことはめちゃくちゃ大事だと思っています。今の時代はいろいろな方が情報発信できる世の中なのでネットサーチしたらほしい情報がいくらでもでてきます。が、くれぐれも怪しげな情報商材には気を付けましょう。

と書きながら、業界の本当の情報って、落ちてないんですね。こればっかりはネット上にいる業界の人にコンタクトして直接聞かなければなりません。それか、業界にアルバイトなんかして何とかして潜り込んでみることがいいと思います。行動が必要です。頑張りましょう。

あと、知識だけではなく、実践はすごく大事です。本だけのロジックでビジネスは100%うまくいきません。実践して見えてくることはめちゃくちゃあります。だからどれだけ小さくてもいいので、作って販売することを経験したほうがいいです。そこで得れるものはめちゃくちゃあるから。

下の記事は靴だけに限らずモノウリの商流に関して基本的なことを書いてますので、知っておいて損はないと思います。

4:イラレ、フォトショップ

このスキルは今ではどうなんでしょうか?僕ら40代はこのソフトは必須で、ある意味"食いっぱぐれない"スキルだといわれていました。靴の業界以外でもデザイン系でこのソフトはデフォルトとしてみられており、もってて損はないスキルではあると思います。スケッチ同様しっかりとスキルを磨きましょう。近くにいる上手な人に教わるのが一番理解が速いですが、サイトや動画でも使い方のチュートリアルは多いので独学でも十分使えるようになるかと思います。

靴の場合は工場とのやり取りの中で仕様書などの三面図で描くことが多いです、特にアウトサイドがかっこよく書けるようになるのが大事です。基本スケッチ力(手書き)と比例していくので、スケッチも描きながら、ソフトの使い方を学ぶことが上達する方法です。

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イラレは仕様書などでも使用

5:靴の知識、構造

まあ当たり前なんですが、知識とか靴の構造は知っておきましょう。本やネットの知識でいいと思います。それで実際靴を作るときに、より細かなことを知っていくので自然と溜まっていきます。さらっと書いていますが、靴のデザイナーを目指すなら当然のスキルです。

下のリンクは僕らのブランド内にある靴づくりの道具の一部を紹介しているページです。徐々に内容をふやしていく予定です。


まとめ

で、結局シューズデザイナーになるためにはどうすればよいのか?それは「靴を通じて利益をうみだす提案が出来るようになること」に尽きると思います。

見た目がかっこよく、他にないデザインの靴をうみだすことはもちろん大事です。ですが、それと同時にその手がけたデザインを使用するユーザーがいて、大切なお金を使って買ってくれるのも事実です。そのデザインがお客様が払って頂く価値があるのかを考えなければなりません。

もしインハウスデザイナーになりたければ、自分の作品がその企業にとってどのような利益をもたらすのかを説明ができるようになってください、説得できれば採用しない理由はなくなります。

もし自分でブランドを立ち上げるなら、資金をつかってビジネスを行うので、売り上げが必要となります。売れなければブランドが終わってしまいます。それがすべてです。

なんか「えーー」っていう声が聞こえてきそうですが、僕はこう思ってます。で、特にデザイン系の学生さんたちと話をしてみたら3のビジネス(お金)のことに関してが抜け落ちている場合が多いような気がしています。たしかに業界の本音ってなかなか手に入りにくいです。ですが、ここを知っている人たちは、知らない人の提案と比べて、深みある提案ができていました。(提案の説得力に違いがでてきます)

なので僕的に大事なスキルを順に書いてみると

1>2と3>4と5

となります。3はあまりにも複雑で経験も伴うものですが、だからこそデザイナーとしての強度と差別化ができるという風にも見れます(2と4と5はみんな、あたりまえにやっていること)。

とりあえず靴のデザインを志す人はこれらのスキル?をしっかりと身につけたらよいのではないでしょうか。とふわふわした感じに書いておわります。

おわり


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