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「サピエンス全史(下巻)」を読んで

「サピエンス全史(上巻)」に続いて読了。
内容は近現代、そして科学技術が私たちにもたらしたものについて書かれており、示唆に富む良書。

特に、科学技術の発展(産業革命)がもたらした爆発的な社会発展に関する部分は興味深く、ホモサピエンスが「無知」を許容したことから科学革命がスタートする、というくだりは非常に面白い。

そして、当時の政治と科学が結びつき、大きく発展していく科学史の解説は一般教養としてもぜひ知っておく部分かと思う。

<参考>「サピエンス全史(上巻)」メモ


以下読書メモである。

第3部 人類の統一(上巻続き)

第12章 宗教という超人間的秩序

  • 今日、宗教は差別や意見の相違、不統一の根源と見做されることが多い。だが実は、貨幣や帝国と並んで、宗教もこれまでずっと、人類を統一する三つの要素の一つだった。

  • 社会秩序とヒエラルキーは全て想像上のものだから、皆脆弱であり、社会が大きくなればなるほど、さらに脆くなる。宗教はこうした脆弱な構造に超人間的な正当性を与えてきた。(こうした秩序は人間の気まぐれではなく、絶対的な至上の権威が定めたものとされる)

  • 本質的に異なる人間集団が暮らす広大な領域を傘下に統一するためには、宗教は、①いつでもどこでも正しい普遍的な超人間的秩序を信奉している必要がある。②この信念を全ての人に広めることをあくまで求めなければならない。

  • 狩猟民のアニミズムと宗教の違いは、局地的化否か。アニミズムの場合、ガンジス川周辺の草木など、彼らが住んでいる領域に特化した超人間的秩序である一方、遠く離れた狩猟民に信奉を伝えることはなかった。

  • 時に一神教からは無知で子供じみた偶像崇拝と見なされる多神教の見識は、広範に及ぶ宗教的寛容性を促す。実は多神教は本来、度量が広く、「異端者」や「異教徒」を迫害することは滅多にない。

  • 一方で一神教はどうしても異教徒受け入れることが難しく、特に同族嫌悪のようなカトリックとプロテスタントの争いは中世ヨーロッパで続いていた。

  • 人々は富や権力を追い求め、知識や財産を獲得し、家族をもうけて豪邸を建てても満足しない。倍が手に入れば10倍を欲しがる。死によってそれに終止符を打つと分かっていても。

  • こうした愚かで激しい生存競争から抜け出そうと考えたのゴータマ・シッダールタ。彼の至った解脱という境地は、心は何を経験しようとも渇愛を持っていると常に不満を伴うということ。

  • 渇愛をなくし、物事のあるがままを受け入れるために、一種の心の鍛錬として瞑想を行い、全ての渇愛の炎を消すようにしていた。

  • 過去300年で宗教の重要性が失われる中で台頭したのがイデオロギーという一種の自然法則の新宗教。自由主義、資本主義、国民主義、ナチズム、共産主義などがそれにあたる。

  • 現代の私たちが持つ信念は、神を中心とする宗教と、自然法則に基づく神不在のイデオロギーによるところがある。(有神論宗教と、人間至上主義の宗教と言っても良い)

  • 人間至上主義の宗教(イデオロギー)は、「人間性」をどう捉えるかで宗派が分かれる。例えば自由主義であれば、人間性=個々の人間の特性と捉え、個人の自由はこの上なく神聖であると捉えている。一方社会主義は、人間性=集合的なものと捉えているため、全人類の平等を求める。


第13章 歴史の必然と謎めいた選択

  • コンスタンティヌス帝がなぜ国教をキリスト教にしたのか、は説明できないところも多い。

  • 「どのように」を詳述することと「なぜ」を説明することの違いは何か?「どのように」を詳述するのはある時点からある時点へと繋がっていく特定の出来事を言語化するもの。「なぜ」を詳述するのは、他のあらゆる可能性ではなく、その一連の因果関係を見つけることである。

  • 昔の人々にとって、当然ながら未来は霧の中。後から振り返ると必然に思える国教化も、当時の人々にとってそれが正しいかどうかは明確ではないのが歴史の鉄則。

  • 歴史は何らかの謎めいた理由から選択を行なって、様々な道筋をたどり、一つの時点から次の時点へと進んでいく。

  • 歴史の選択肢は幅が非常に広く、可能性の多くは決して実現することがない。歴史が科学革命を迂回して何世代も続くという可能性も想像可能である。


第4部 科学革命

第14章 無知の発見と近代科学の成立

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