見出し画像

「ハイコンセプト」を読んで

話題の「ハイコンセプト」読了。
非常に読み応えのある内容で、自分自身の考え方が揺さぶられ、行動変容にもつながる良書。

巷でもよく言われている「左脳と右脳の両利き」人材を目指そう。
物事と物事をつなげて新しい発想を生むハイコンセプト、共感力のあるハイタッチな人材を目指そう。
というものではあるが、その重要性を時代の変化から解説する第1部、
そしてそんな人材になるためにはどんな行動や学びが必要なのかを詳しく解説している第2部から構成されている。

豊かな時代に生きる私たちだからこそ、こうした力を身につけなければ、どんどん他国に追いやられてしまう危機感も抱きつつ、自分自身をアップデートしていきたいと思う。

以下、読書メモである。


序章

• 「答えのない時代」の今、世の中に出たら、知識を持っていることよりも、多くの人の意見を聞いて自分の考えをまとめる能力、或いは壁にぶつかったら、それを突破するアイデアと勇気を持った人の方が貴重。
(ネットで簡単に情報自体は見つかるため、それをうまくカンニングできる人が良い)
• ベートーベン型の左脳ではなく、モーツアルト型の右脳の時代。脳が片利きではいけない。そのためには自分の脳に常に刺激を与える癖をつけること。
• この本には、日本人がこれから一番身につけなくてはいけない「右脳を生かした全体的な思考能力」と「新しいものを発想していく能力」、そしてその実現可能性を検証するための左脳の役割などについてまとめられている。

• 6つの重要なセンスは、デザイン、物語、調和、共感、遊び、生きがい。
• 新しい時代を動かしていく力は、以下
「ハイ・コンセプト」:パターンやチャンスを見出す能力、一見バラバラな概念を組み合わせて何か新しい構想や概念を生み出す能力
「ハイ・タッチ」:他人と共感する能力、人間関係の機微を感じ取る能力、自らに喜びを見出し、また、他の人々が喜びを見つける手助けをする能力、そしてごく日常的に出来事についてもその目的や意義を追求する能力など

第1部 「ハイ・コンセプト(新しいことを考え出す人)」の時代

第1章 なぜ「右脳タイプ」が成功を約束されるのか

• 古い研究では、左脳が脳の中でも要、と考えられていたが、それは誤解。
• 西欧の読み書きは左から右への動きを必要とする。これは、左脳を鍛える動き。
• 左脳は逐次的に処理し、右脳は全体的、瞬時に処理する。
• 右脳のおかげで人間はコンピュータに対する優位性があると言える。例えばコンピュータの計算速度は人間のはるか上だが、人間の顔の認識(全体的な処理)はコンピューターははるかに遅い。
• 左脳は文を、右脳は文脈の処理を得意とする。話している相手の感情認識は右脳が司る。
• 左脳は詳細を分析し、右脳は大きな全体像として捉える。左脳は1つの答えに集中し、右脳は統一的全体へと分散していく。左脳はカテゴリーに、右脳は関連性に焦点を絞る。
• 広範な文化において、右脳主導思考よりも、左脳主導思考の方が高く評価され、左脳主導型のアプローチを大切にする一方で、右脳型アプローチは役には立つが副次的なものであると考えられてきた。
• バランスの取れた「右脳+左脳思考」、芸術的手腕、他人との共感、長期的視野、超越したものを追求する能力といったものの有無が、人生で高く飛躍できるか、つまづいてしまうかを大いに左右することになる。

第2章 これからのビジネスマンを脅かす「3つの危機」

• 体力や手先の器用さではなく、学校で学んだ知識を活かして報酬を得ている人々を、ナレッジワーカーと呼ぶ。彼らの理論的・分析的思考によって、現代社会の枠組みや特徴、主導者たちが生まれてきた。
• これまでの先進国の教育は、こうしたナレッジワーカーを育てることに主眼が置かれてきた。

• 第一の危機「過剰な豊かさ」がもたらす新しい価値観。これまでの人類史の大半は「欠乏」という言葉で象徴されてきた。だが、今日、多くの国々で社会・経済・文化的生活を特徴的に表す言葉はあふれる「豊かさ」である。
• 左脳主導思考は豊かさをもたらせたが、その重要性・価値を下げてしまった。左脳的思考によってもたらしされた繁栄が、それほど合理的ではなく、右脳的感覚に訴えるもの(美しさや精神性、感情といったもの)により大きな価値が見出されるようになった。
• ビジネスの世界では、手頃な価格で十分な機能が備わった製品を製造するだけではもはや不十分になった。例えば、電気照明が当たり前になっている現代でも、ロウソクは非常に大きなマーケットになっている。照明用という論理的な必要性を超えたところに価値が存在している証左。

• 第二の危機 次から次への湧き出す「競争相手」。
• インドのナレッジワーカーたち。先進国より安い賃金にもかかわらず、彼らの能力は先進国のナレッジワーカーと変わらない。例えば、GE社のソフトウェアの48%はインドで開発されたもの。
• あらゆる種類の左脳主導型ホワイトカラーの仕事は海外に移行しつつある。
• 今日のナレッジワーカーの多くも、新しい能力を身につけ、海外の安い働き手にはできないようなレベルの仕事をする必要がある。

• 第三の危機 そんな脳では、全て「代行」されてしまう
• チェスは今やコンピューターの方が人間より優れている。ロジックや計算、連続的思考などはコンピューターの方が優れ、速く、強力。そして疲れない。
• つまらない単純作業は機械がやることになるので、エンジニアやプログラマーはこれまでとは違った能力を身につけなければならない。

• 右脳主導的思考の重要度が増す要因は、以下。
①豊かさのおかげで、物質的ニーズは満たされた。そのため、美しさや感情を重視する傾向が強まったこと
②左脳型のルーチンワークの大部分が、今ではアジアの国々に委託されていること
③オートメーションによって、ロボットに代替される左脳型の仕事が増えてきたこと

第3章 右脳が主役の「ハイ・コンセプト、ハイ・タッチ」時代へ

• 過去150年の歴史で、産業は体力頼みの工業の時代から左脳の勝負の情報の時代、そしてさらに「コンセプトの時代」が訪れている。
• このコンセプトの時代は、想像する人・他人と共感できる人(クリエイター)の時代。
• ただし、注意が必要なのは、未来は左脳型人間は絶滅して、右脳型人間のみの時代、というわけではないこと。
• ハイテクだけでは不十分な時代。ハイテク力をハイコンセプトやハイタッチで補完する必要がある。
ハイコンセプト:芸術的、感情的な美を想像する能力、パターンやチャンスを見出す能力、相手を満足させる話ができる能力、見たところ関連性のないアイデアを組み合わせて斬新な新しいものを生み出す能力など。
ハイタッチ:他人と共感する能力、人間関係の機微を感じ取れる能力、自分自身の中に喜びを見出し、他人にもその手助けをしてやれる能力など。
• 実際に北米を中心に教育カリキュラムが右脳教育に傾いており、GMのトップもアートビジネスを提唱する時代になっている。
• MBAではなくMFA(Master of Fine Arts)の時代が来ており、ハーバードのMBAよりUCLAのMFAの倍率の方がはるかに高い。
• すでに多くの投資銀行はMBA取得者をインドで雇い、財務分析やレポート作成をアウトソースしており、MBAホルダーの仕事はなくなってきている。
• 結局、インド人プログラマーに作業を委託する前に、”どのような”ソフトウェアを作るのかというアイデアを考察しなければならない。そこで要求される能力は、規則で足りるようなものではなく、創意・人間関係・体や心の奥から生まれる本能、直観といった能力である。
• ゴールマンとヘイ・グループが共同で行った調査結果によると、組織内で最も優れたリーダーとされる人たちには、「おもしろい人物」が多い。こうしたリーダーは普通の管理職と比べて3倍もよく笑うらしい。

ここから先は

4,723字

¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?