那智勝浦町昔懐かし話 第11話

第11話 『勝浦の子供達よスイカ氷に誇りをもて』
 
たまには食べ物の話を。
 
「うって~。うって~。おばちゃんうって~。」勝浦の子供達は昔から駄菓子屋の玄関を入るときは、この言葉を言う。売ってください、という意味。勝浦の子供達は行儀がよいのだ。(ほんまかなぁ~。)「はい、はい、何にするんかいのお~。」駄菓子屋のおばちゃんは店の奥から現れる。僕らの子供の時は、勝浦小学校の入り口の所にイトウ、入り口の右側忠魂碑の隣にユミネ、 そして今の紀陽銀行の近くにこれまたイトウという駄菓子屋があった。小学校終わって家に帰り、ランドセル放り投げてお母ちゃんにもらった10円玉いくつか握って駄菓子屋へ行く。僕らタケちゃん、ナカシャ、タコちゃんの仲の町3馬鹿トリオは、ユミネ派だった。理由は特にない。「なあ、ナカシャ、タコちゃん誘ってスイカ氷食わへん」「ああ、ええねぇ。」僕らは5段ギアの自転車「ライダー号」でユミネに向かう。スイカ氷というのは、スイカを食べるときのあの形のステンレスの枠に氷を受けて棒状に割った竹を横から刺しその上にまたまた氷をかけてそのスイカの形をした枠を左右から力いっばい押してあのスイカの形にする氷である。食べやすいように竹の棒が刺さっておりそれをもって食べる。この氷の外側に緑色のシロップをかけ、内側に赤のシロップをかけるとスイカ氷である。これには、裏メニューがあって、外側に緑のシロップ、内側にレモン味の黄色のシロップをかけると黄色のスイカ氷である。大人になって聞いたのだがこのスイカ氷全国で勝浦にしかないとのこと。(ほんまか嘘かわかりません。)だから「勝浦の子供達よ。スイカ氷に誇りをもて」と僕は声を大にして言いたい。勝浦の名物やぞ。今は氷というと底のくぼんだガラスの皿に氷をかいてシロップをかけたり、あんこを乗せたりして食べる。そして、これを都会のマダムやOL達はフラッペとぬかしやがる。(おっと汚い言葉をはいてしまった。すいません。)僕らの子供の時の駄菓子屋の氷はガラスの皿の氷は無くウエハースの皿にのせた氷か、このスイカ氷だった。何年か前に仕事柄、東京で地方のアイスクリームフェアというものがあって、特別にスイカ氷で紀陽銀行の近くのイトウさんに出店していただいたことがある。ものすごく好評だったと覚えている。今は、残念ながら僕が知っていた駄菓子屋は、その紀陽銀行の近くのイトウしか残っていないが、スイカ氷は今もあるらしい。ぜひ皆さん食べてみてください。食べ方もコツがあり途中でぽろっと棒から氷が落ちる時があるんでご注意を。同じ所ばかり食べずあらゆる方向から真ん中に向かって食べてください。今もイトウから聞こえる。「うって~。うって~。おばちゃんうって~。」 
                          第11話終わり
 
 
 

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