我が国でのメタン対策は?

COP26では、CO2の20倍以上(100年間で比較;GWP-100)の温室効果があるとされる「メタン」の排出削減に向けて、国際的な枠組みが発足、2030年までに少なくとも30%削減する目標を掲げることで一致しました。日本を含む97の国と地域が参加しましたが、排出量が多い中国やロシア、インドなどは入っていません。最終的に103か国が署名したようです。

メタン(CH4)の地球温暖化係数は、20年単位(GWP-20)で見るとCO2の80倍以上にもなります。「CH4を削減することは、今後25年間の気候変動を抑制するための最も強力な手段である」と、国連環境計画(UNEP)のエクゼクティブディレクターであるアンダーセン氏は述べています。現在、CH4の削減は、迅速な緩和策として認識されつつあります。

CH4を持続的に緩和することは、地表の気温を短期的にも長期的にも向上させます。また、地表のオゾン(O3)レベルを世界的に低下させることによって、大気の性状にも利便性をもたらすことが可能です。また、CH4排出量を強力かつ迅速に、そして持続的に削減することによって、エアロゾル汚染の減少による温暖化効果も抑えることができます。

全世界のCH4排出量の60%(≒370Mt/y)は人間の活動によるものですが、人為的なCH4の排出源はどこからでしょう?

・農業が40%;主に畜産業(32%)と稲作(8%)
・化石燃料は35%;主に石油・ガスの生産・販売(23%)と石炭の採掘(12%)
・廃棄物処理は20%;主に埋立地での有機物(食品など)や廃水処理が含     まれます。
・バイオエネルギー生産からは5%です。

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一方で、CH4の自然発生源は、主に湿地帯、永久凍土の融解、森林火災といわれています。

次に、産業関係からのCH4の放出です。
プロセス産業については、
・オイル&ガス産業の上流と下流から
・生産、供給、流通チェーンの中での漏出
・非緊急時のベントやフレアリング
・使われずに放置された坑井

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バイオエネルギーからは、
・嫌気性消化器、バイオガス改良プラント、ガス配給網からの漏れ
・貯蔵タンクからの排出

畜産・食品からは、
・畜産 - 腸内排出物と糞尿管理

廃水設備からは、
・下水処理施設からの漏出

UNEPの提唱するCH4排出削減対策ですが、対象となる対策を講じれば、2030年までに排出量を45%削減することができ、さらに地上レベルのオゾン汚染を削減することで、世界全体で年間255,000人の早死に、775,000人の喘息関連の病院受診、2,600万トンの農作物の損失を防ぐことができると推定しています。利用可能な削減策の約60%は低コストなものだといわれています。

政策・規制の手段としては、漏洩検知・修理要件、技術基準、緊急性のないフレアやベントの禁止、回収した逃走中のメタンを利用するための障壁を取り除くための市場介入などがあるようです。監視技術のさらなる発展が必要であり、特に衛星を利用したものが望ましいということです。

また、測定と報告のための共通の枠組みを確立することが必要だといわれています。CH4の漏洩を防ぎ、逃走中のCH4を回収し、高価値の利用製品を生み出すための実用的なエンジニアリングソリューションが必要です。

ところで、メタンは、オゾンを発生して健康被害を与えるとUNEP報告書にも書かれているので、気になるところです。このメタン削減は、日本にとってどういう影響があるのでしょう。

大気中のメタン濃度はというと、大気中のCO2が400ppm(0.04%)ですが、CH4は1,900ppb、即ち1.9ppm程度になります。0.0002%と微量にしか含まれていないCH4が心配されているというのです。

https://ds.data.jma.go.jp/ghg/kanshi/ghgp/ch4_trend.html

上記のメタンの発生源を見ると、私たちの日々の生産活動からごみ処理に至る段階で放出されていると思われます。それぞれの放出については、発生源、発生の経緯をいま一度見直したうえで、適切な解決策を実施していくことが必要です。畜産などからのCH4、牛のゲップからもCH4が出ているといわれますが、そこはやり方を考えていく必要がありそうです。

CH4が地上レベルでオゾンを発生して、これが健康被害を与えるという点については、日本ではあまり気にしなくても良いと考えています。以前、光化学スモッグで頭痛を起こしたり、気分が悪くなったりする学生がニュースでよく報道されていました。

最近では、光化学スモッグの報道もほとんど聞かれません。健康被害の原因は、SOx、NOx、車の排気ガス中に残存している炭化水素類、これらが光化学反応を起こしオゾンを発生するなどして、健康被害を与える。

現在では車の排気ガスも規制されており、空気も随分きれいになったため、有害物質は非常に少ないと考えられます。一方、メタンそのものも希薄であるため、両者が反応する機会も少なく、反応したとしても相互の濃度が低いため、あまり影響はないと考えています。



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