産炭国豪州と日本との水素事業

段階的に石炭火力の廃止を目指す声明

COP26で、CO2の排出量が多い石炭からの脱却に向けた取り組みが加速しています。アロック・シャーマ議長は石炭火力について議論する4日のイベントで、「『石炭の終わり』が近づいている。石炭を歴史にとどめ、環境に優しい明るい未来が近づいていると信じている」と述べたと報道されています。同日、46カ国が石炭火力発電を段階的に廃止することを目指す声明に賛同しました。

声明は、石炭火力が気温上昇の「唯一最大の原因」であり、クリーンエネルギーへの移行を早急に進めるべきだと指摘しています。先進諸国は2030年代まで、世界全体では2040年代までに石炭火力を廃止する方針を盛り込んでいます。

これまでに石炭火力からの撤退を宣言していた英国やフランスなどに加え、石炭火力の建設計画が進むベトナムや石炭産出国のポーランドなど23カ国も声明に加わったということです。金融機関や企業などを加えると、190の国・組織が賛同しているということです。

ただ、日本や米国、中国、豪州、インドなどは声明に加わっておらず、脱石炭をめぐっては溝も明らかになっています。日本は、2030年度に総発電量の19%を石炭火力でまかなうとしたエネルギー基本計画を10月に閣議決定しています。また、中国の石炭使用量は世界全体のおよそ半分とされます。

豪州の石炭産業

豪州については、2011年当時、ビクトリア州の褐炭関連の仕事をしていたので、少し思い入れがあり、若干追加説明をしてみたいと思います。

ビクトリア州の州都はメルボルンは、最大の都市シドニーがいかにも近代的な大都会なのに比べて、イギリス植民地時代の雰囲気が色濃く残っているのが特徴です。情緒があってのんびりしていて、「世界で最も住みやすい町」に挙げられることもしばしばです。

画像2

そのメルボルンから車で東に2時間あまり行ったところに、ラトブバレー(Latrobe Valley)という場所があり、そこでは褐炭(Brown Coal)が露天掘りされています。広大な炭鉱地でその大きさに圧倒されます。

画像3

豪州の電源構成は、JOGMEC資料によると石炭が58%、ガス20%、石油が2%などで、ビクトリア州は褐炭の産炭地という土地柄でしょうか、75%の電気を褐炭から生産しています。

画像1

そういう豪州ですが、世界の脱炭素の流れに従って動いており、温室効果ガス(GHG)削減について、連邦政府は2030年までに2005年から26~28%削減する計画を打ち出しています。一方、ビクトリア州からは、2050年までのネットゼロ、第1段階として2020年までに2005年基準で15~20%削減する目標が出されています。

豪州と日本の協働プロジェクト

また、石炭は豊富に存在するため、当然の事として、遠い将来の実現になるのでしょうが、地元の褐炭を利用して高付加価値で有用な物質を生産しようと色々な動きが出始めています。例えば、石炭から合成天然ガス、水素、ディーゼルオイル、メタノール、誘導物質などの多種多様な製品を生産するプロジェクトです。

水素については、日本と豪州との間で実証プロジェクトが動き出しています。Jパワー(電源開発)の北村会長と宇宙飛行士の山崎尚子さんの対談をご覧ください。
水素社会への道を切り開く世界初のプロジェクトが進行中 Jパワーの石炭ガス化技術が重要な鍵に | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?