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FALL 韻 LOVE 【前編】

はじめに

はじめまして、sentimental okadaと申します。

突然ですが、皆さまは、普段、「韻」について考えたことがあるでしょうか?

私はヒップホップという音楽ジャンルの技法のひとつである、韻をたくさん踏みながら、喋ったり歌ったりする「ラップ」という演芸を、3年ほど前から本格的にはじめました。

それ以前からも、「なんちゃってラップ」のような楽曲は作っていたのですが、数年前から、ちゃんとヒップホップを聴くようになり、それ以来、ヒップホップ以外の曲を聴くときも、「韻」に注目するようになりました。

その結果わかったことは、多くの外国語の楽曲は、ラップに限らず、韻を踏むものが多いということです(もちろん踏まないものもあります)。

全ての言語の音楽を聴いているわけではないのですが、spotifyのグローバルチャートの上位楽曲を聴くと、言語にかかわらず、韻を踏んでいるものが多いです。

世界中の音楽ファンが好んで聴く音楽が韻を踏む歌だとすると、韻を踏まないことが普通である日本語の大衆音楽は、逆に特殊なのではないかと思いはじめました。

これから、私の韻についての思いの丈をお話しさせていただきます。あくまで在野の韻研究家なので、偏った情報や私見が多いことをはじめにおことわりしておきます。


韻とは?

そもそも「韻を踏む」(踏韻、押韻、ライミング、またはライムとも言います)とはなんでしょうか?

とあるサイトでは、このように定義されていました。

"「韻を踏む」とは同じ発音の言葉を一定の配置で重ねること"

「韻を踏む|意味・使い方・ダジャレとの違い・韻の種類と例文・英語表現などを解説 | マナラボ」より引用 https://t.co/whBxxrDWVP?amp=1

とてもざっくりいうと、フレーズの母音(子音)を揃えることです。
(厳密にいうと、それだけでもないのですが、それはまた別の機会に。)
下の語を読んでみてください。

いんをふむ

ぴんとくる

アルファベットで記します。

in wo fu mu

pin to ku ru

子音と母音を分けて記します。

(in) w(o) f(u) m(u)

p(in) t(o) k(u) r(u)

母音が揃っていますね。

この2つの語は、響きがかなり近いということです。仮に完全韻と呼びます。
響きが近いとどうなるか。口に出したとき、耳で聞いたとき、心地よかったり、印象に残りやすかったりします。
母音の揃いを強調してしゃべったり歌ったりすると、より効果が増します。

次の2語はどうでしょうか。

いんをふむ

ぶんをかく

アルファベットにします。

in wo fu mu

bun wo ka ku

子音と母音に分けます。

(in) w(o) f(u) m(u)

b(u)n w(o) k(a) k(u)

(o)と(u)は同じですが、それ以外は違いますね。仮に不完全韻と呼びます。

ですが、上記の不完全韻の2語でも、「む」と「く」にアクセントを置いてしゃべったり歌ったりすると、韻を踏んだ感じになるはずです。
これもまた、押韻の一種です。

("完全韻"と"不完全韻"という英語における概念は実際にあるのですが、日本語にあてはめるとややこしいので、本稿ではあくまで別のものとして扱います)

後者の例は、最後の一文字の母音だけを揃えればいいので、普段から作詞をしない方でも作りやすい韻文だと思います。

何がいいたいのかというと、韻を踏むのは難しいことではなく、誰にでもできるということです。
ただ、日本ではライムの概念自体があまり普及していません。


日本の大衆音楽におけるライミングの歴史

日本の大衆音楽にも、韻を大事にされている音楽家がたくさんいますが、まだまだ「歌における韻」を意識している音楽家/リスナーは少ないように思います。なぜなら、日本語の大衆音楽における「韻の歴史」が、あまりにも短いからです。

個人的な見解を申し上げますと、日本では桑田佳祐さんのソングライティングから「韻」が注目されはじめ、椎名林檎さん、岡村靖幸さん、中村一義さん、Mr.Childrenさんなどが中継し、米津玄師さん、Official髭男dismさん、藤井風さんなどが継承していると、私の浅い音楽知識の中で考えてはいるのですが(この雑なJPOP史認識には色んな異論はあると思いますが、、)そうだとすると、まだ韻の歴史が40年くらいしかないのです。

もちろん別軸で、日本のヒップホップ史が韻の普及に多大なる貢献をしているのは明らかですが、個人的なリスナー歴でいうとヒップホップ以外の音楽を聴いていた期間の方が長く、ちゃんと論じられる自信がないので、ここでは省かせていただきます。

日本のヒップホップと押韻の歴史については、下記の記事に詳しく書かれています。

「ラッパーのマチーデフさんに聞く、日本語ラップの平成史(梅田カズヒコ) - 個人 - Yahoo!ニュース」

「Rhyme Scheme(ライムスキーム)」
https://www.rhyme-sche.me/ 

欧米の大衆音楽におけるライミングの歴史

アメリカのポピュラー音楽の歴史をみてみましょう。

およそ100年前の1925年に発表されたヒット曲"Dinah"(作詞 Sam M. Lewis & Joe Young )にライムがみられます。

Dinah-Eddie Cantor(spotify)
https://open.spotify.com/track/7cjqNVZCmy0hVbWJ123WRd?si=NJbGpJ25Qjmqav_AjBiFNg

歌詞を見てみましょう。

"Dinah
Is there anyone finer
In the state of Carolina?
If there is and you know her
Show her to me
Dinah
Got those Dixie eyes blazin'
How I love to sit and gazin'
To the eyes of Dinah Lee" 

1段目 1,2,3行目

「Dinah」「finer」「Carolina」で韻を踏んでいます。

2段目 2,3行目

「blazin'」「gazin'」で韻を踏んでいます。

ちなみに、上の例を筆者は「近い韻」と呼んでいます。

さらに、1段目5行目の「me」と、
2段目4行目の「Lee」でも韻を踏んでいます。

ちなみに、後者の2語は、間に入る語が多いので、筆者は「遠い韻」と呼んでいます。

この「近い韻」と「遠い韻」という概念は、私の、とあるHIP HOP好きの先輩が考えた概念です。

近い韻と遠い韻とを組み合わせることにより、より立体的なライミングワールドを構築することができます。

また、フランスでは、1924年に作られ、1930年にリリースされたヒット曲"Parlez-moi d'amour"の歌詞にもライミングがみられます。

というわけで、欧米では100年前の時点で、歌詞にライミングが用いられることは当たり前なのです。

この時代、日本にも洋楽としてジャズが輸入されました。ジャズの歌にはライムのあるものがたくさんあるのですが、それらが和訳されたとき、韻はほとんどの場合、再現されませんでした。

それでは、なぜ欧米の歌詞では昔から韻を踏むことが定着しているのでしょうか?ということについては、「 FALL 韻 LOVE【後編】」で、個人的な見解を述べさせていただきます。

sentimental okada

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◆プロフィール

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sentimental okada
作曲家、ピアニスト、歌手、ラッパー。iTunes Store、Spotify、Apple Musicなど各種ストリーミングサービスにて楽曲が配信中。
https://www.tunecore.co.jp/artist?id=421509
自身のピアノとラップによる楽曲「嫁のおまけ」ミュージックビデオがYouTubeにて公開中。
https://youtu.be/dggDw8Wa3_o
●Instagram 
https://www.instagram.com/sentimental_okada_official/
●Twitter 
https://twitter.com/keisuke_0kada
●Spotify 
https://open.spotify.com/artist/0jafFLuNcIfwnmH22t2VR3?si=0OAIGYBwRm2krLLnh-XV0A


◆参考文献

文化系のためのヒップホップ入門(長谷川町蔵/大和田俊之)
https://www.amazon.co.jp/dp/B07GQVJQW4/ref=cm_sw_r_cp_api_rf5JFbSXV420N
おすすめYouTubeチャンネル
「Rhyme Scheme」
https://www.youtube.com/c/RhymeScheme



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