パンみみ日記「過去に同じ席に座った人とお話できる喫茶店」
日々のできごとをかき集めました。パン屋に置いてある、パンの耳の袋のように。日常のきれはしを、まとめてどうぞ。5個くらいたまったら店頭に置きます。
2月11日(日)
ブラリと高円寺へ。ずーーーっと行きたかった、「アール座読書館」へ。ここはおしゃべり禁止の喫茶店。はい、もう好き。しかも席ごとに個性があり、自分の好きな空間を選び取ることができる。
ぼくの大好き雰囲気レベルが限界突破してる。瞬く間に「よさくの東京喫茶店ランキング」1位に浮上した。
そしてお楽しみ要素が1つ。席にらくがき
帳が置いてあり、来店客が自由に言葉を残せるのだ。「小さなエビが足をパタパタさせている」と書いてあり、目の前の水槽をよく見るとエビが。読まなきゃ気がつかなかったかも。
そしてみんなが、仕事や恋愛の悩みといった心の柔らかいところを書き連ねている。この空間だから書き残せることがあるんだろうな。過去にこの席に座った人たちとお話をしている心地になった。
ぼくも書き残したから、もしこのお店のこの席に辿り着いた方は、覗いてみてね。
今度「好きな人のタイプ」を聞かれたら「アール座読書館が好きな人!」と答えていきたい。
2月12日(月)
大学の同期と後輩くんとハイキング。相模湖の近くにある石老山へ。
雪が残っているところもあり、シャクシャクと踏みしめながら進む。都会の喧騒を離れ、ただただ登るか話すしかない時間は、心をお掃除してくれる。
無事に山頂へ到着し、満足感とともに下山。お腹がぺこぺこだったので、登山口近くのラーメン屋の暖簾をくぐる。
北海道出身のおじいちゃんが1人で切り盛りをしている、函館ラーメンを出してくれるお店。おじいちゃんが「あんたらどっから来たんだい?」などと話しかけてくれるのを楽しみ、麺を啜る。海鮮の出汁が効いたスープはゴクゴク飲めちゃう。
おいしく完食し、お会計。おじいちゃんが後輩くんのお釣りを間違えていたので、ぼくが「50円足りないですぅ」と言おうとした。すると後輩が(気にしないので大丈夫です)と目で制した。なんて寛大な心の持ち主なんだ。ぼくだったら必死に説明してしまう。
その後は温泉に向かい、サッパリとして帰った。帰り道、後輩くんに問いを置いてみる。
「岐阜で群上おどりっていう盆踊りがあってね。めっちゃ長いお祭りなんだけど、最後の4日間は夜8時から翌朝5時まで徹夜で踊るんだって。一般の人も参加できるんだけど、やりたくない?」
さて、どうくる。脈アリか脈ナシか…。
「最高ですね…。今年の盆、踊り明かしますか」
飲み込みが早い。後輩くんは前からストイックマンだと認識していたけど、ここまでとは。テンションが上がってしまい、問いのおかわりを置いてみる。
「じゃあさ!100キロ寝ずに歩き続ける、エクストリームウォークってイベントがあるんだけど、これも人生でやってみたくない!?」
こっちはどうだ。今までこれを聞いたほとんどの人がドン引きしていた。君なら受け止めてくれるのでは…?
後輩くんは目の色を変え、スマホに目を落とす。何かを調べているみたいだ。
「よさくさん、今年のエクストリームウォークは5月みたいですね。歩きましょう」
スムーズすぎるよ。もっと説得パートあるかと思ったよ。
30歳を迎える前に、とことん自分を追い込むことをしてみたい。今はそんな気持ちなのだ。
2月13日(火)
「久しぶり〜!今、職場どこ?」とLINEが入っている。前職の先輩、海堂さんからではないか!
海堂さんはこちらのエッセイに登場した、ちゃらんぽらんだけど憎めない愛されパパである。今は大阪にいるらしい。どこの部署か訊いてみた。
「あの会社辞めたわ。『ひとりにさせない』って、言ったでしょ」
思い出した。ぼくが辞めるときのこと。お世話になった方々にこの会社を離れることをメールしたとき、海堂さんは「ひとりにさせねえから」って返してきた。「最後までふざけてるなこの人」くらいにしか思っていなかったけど、一応本当だった。ちょうどぼくが転職したタイミングで、海堂さんも上司に辞めることを伝えたらしい。
海堂さんは、ぼくが大阪で働いている予感がしたから連絡をくれたとのこと。なんだそれ。相変わらず行動の動機が適当だ。でも、そういうところがどうしようもなく好きだ。
海堂さんが東京に出張に来るとき、花森さんと一緒に飲もう、と約束した。
あの3人で再会することができたのなら、ぼくはまた働く意味を思い出せるのかもしれない。
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