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パンみみ日記「さよなら、とらまる号」

日々のできごとをかき集めました。パン屋に置いてある、パンの耳の袋のように。日常のきれはしを、まとめてどうぞ。5個くらいたまったら店頭に置きます。


3月10日(日)
車を売ることにした。過去の日記で愛車を「カフェと図書館に行くための鉄のかたまり」と称していたが、本当にそうである。電車で行ける場所に莫大な費用を投じてしまっている。

4月1日に保有していると自動車税がかかってしまうため、急ピッチで手放すことを決めた。中古車買取専門店へ向かう。

お店で査定をしてもらい、買取額を伝えてもらうのだけど、かなり駆け引きが重要になる。買取業者としてはなるべく安く買取したいけど、安い金額を提示すると他社に流れてしまう。

よって、売る側としては「他店の見積書を持って買取額を引き上げる」作戦がベースとなる。だがしかし、お店側もそれを承知しているので、紙面で見積書を出してくれないことが多い。つまり、口頭での駆け引きになるのだ。

完全に苦手なやつ。今回は「いかに買取額を上げてもらうか」だけど、ぼくは値切りなどの金額交渉が得意ではない。相手のペースにまんまと乗ってしまう(普段は法人営業をしているくせに)。

ただ、今回は数万単位で金額が動く。「これはお仕事!」と思って臨んだ。

結果として、1店舗目から2店舗目で6万円アップ、2店舗目から3店舗目で5500円アップした。本当はもっと上げられたのかわからないけど、過去の自分から見たら大きな成長…(絶対1店舗目の提示金額で「わかりました」と売り払ってた)。

社会勉強になったけど、お金にまつわる交渉ごとはしばらくしたくない。心のどこかを削っている感覚がする。

何はともあれ、信頼できる担当者の方へ愛車をお渡しすることができた。今まで、本当にありがとう。東北と北海道を共に駆け抜けた、ぼくの相棒。

君がはじめて自宅に来たとき、飛び跳ねるように喜んだっけ。とりあえずどこかに行きたくて、目的地も決めずにエンジンを入れた。レンタルするのではなく、「自分のものだ」と感じながら走り抜けるあの爽快感は、きっと一生忘れない。

書くのがとても恥ずかしいけど、「とらまる号」という名前をつけた(出会った場所にちなんでいる)。車が移動の手段ではなくて、「君と遠くに行きたい」という目的にすり替わっていく感情を教えてくれてありがとう。

ずっと一緒にいられなくて、ごめんね。思い出がいっぱいあるね。福島でラケットを積んでテニスコートに行ったり、よさこいのお祭りに出かけたり。北海道の雪道にも怯えながら走ったり、素敵な喫茶店を開拓したり。会社の同僚やサークルの友人を乗せて、目いっぱい笑って運転したなあ。

ぼくは移動手段じゃなくて、あの空間を買っていたんだ。カラオケのように音楽を流して歌ったり、道中で仲間とのおしゃべりを楽しんだり。

その感情が心に刻まれているから、きっと大丈夫。ばいばい、愛しの相棒。また誰かと、もっと遠くに行ってね。ちょっぴり、嫉妬しちゃうけどさ。


3月14日(木)
会社でランチ。「自分のオフィスフロアでなんでもビジネスを始められるとしたら何をする?」をテーマにおしゃべり。

「地域の祭りのように豚汁を売る」「バイキングにあるデカい炊飯器で炊き立ての米を販売する」「一部署につき1台の冷蔵庫を月額制で貸す」「手相占いブースを構える」など様々なアイデアが溢れ出てきた。

タイヨウさん(この世の主人公みたいな先輩)がなぜか冷蔵庫に並々ならぬ思いを持っており、本当に実現させるかのような熱量で語っていた。

最近、同僚たちの妄想力が磨かれている。

3月15日(金)
会社。キャリコさんが産休&育休で職場を離れるので、一時的なお別れをすることに。

キャリコさんはとんでもなく仕事ができる。人の感情を読み取るレーダーが頭についていて、その精度が半端ない。目の前の人が言って欲しい言葉、求める情報、投げかけて欲しい表情が手に取るようにわかるのだ。その特殊能力で、みんなが彼女の虜になってしまう。

それでいて、お酒を飲むと人が変わる。めちゃくちゃ饒舌になり、その場をはっちゃけるように楽しみ出す。「完璧のように見せかけて、ちょっとお茶目」という部分も含めて愛しい存在なのだ。

そんなキャリコさんの最終出社日ということで、いろんな部署の人が代わりばんこに彼女に話しかけにきていた。やっぱり、みんなに慕われている。

職場で1番尊敬していた人。1年ほど会えなくなる。異動ではないとはいえ、寂しいものは寂しい。

この1年間でちょっとでもあなたに近づけるように、頑張るから。あなたが戻ってきたい職場に、しておくから。

そんな覚悟をしてしまうくらい、あなたは魅力的な人なんだ。


3月16日(土)
最近、自分の中で「お金のことを考えようキャンペーン」を実施している。小説『三千円の使い方』しかり、お金にまつわる作品に触れている。

ということで、今日は家で映画『老後の資金がありません』を観た。

お金を起点として揺れ動く人間関係をコミカルに描いた作品。生々しい損得勘定と、金欠による圧迫感をガッツで乗り越える勇気を天海祐希さんから教えてもらった。

そして驚いたことが1つ。おばあちゃん役の草笛光子さんがよきセレブマダム感を出していて、「役だと80歳だけど、実際は70歳くらいかな」と思っていた。そして、実年齢を調べてみると現在90歳だった。おったまげた。

セリフを覚え、役になりきり、人を感動させる。そんなエネルギーを使い続けられるご婦人がこの世に。

あんな風に歳をとりたい。

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