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第2話 バケツいっぱいのヤクルト


過敏性腸症候群の俺は腸内環境のことを結構真剣に考えている。
朝飯にはヨーグルトを欠かさず食うし。
それでもたまに、電車でうんこ漏らしそうになるけどな!
途中下車できねぇ特急なんか怖くて乗れねぇよ!


バンドマンは不健康そう?
あ、そう? そんなイメージな?
小鳥遊なんか、毎朝5km走り込んで身体つくってっからね。
アイツは健康とかそんなの関係なくって、不埒な動機に違いない。
きっとモテたいだけ。
今度聞いてやろう。

ガキの頃からお腹を壊す俺にせっせと乳酸菌飲料ヤクルトを買い与えてくれたのは、ばーちゃんだ。うまかった。
大人になって稼げるようになったらバケツにヤクルトなみなみ飲んでやるって、ずっと思ってた。
魚臭い回転寿司屋のバイトして初給料の日の深夜、コンビニATMですぐさま金をおろしてから、パチもんのピルクル1ℓを5本買って自転車を漕いだ。ずっしり重かった。
ほんとはばーちゃんにも買ってやりたかったけどその頃にはもう死んでた。
バケツには注がなかったけど、長いストローぶっ刺してちゅうちゅう飲んだ。
2本目くらいで腹が痛くなって、その夜は尻から水と火が同時に出た。

なんでも適度がいいと思った。
こーゆーのなんての? 教訓ていうの? 

ガキの頃にみた夢は何だったのか。

駄菓子屋も買い占めてやるつもりだったけど、その夜の事があってから俺はやめた。
ちなみに、駄菓子も今、食うと全然うまくもなんともない。
うまいで思い出した、サラダ味のプリッツ。
授業中、教室で隠れて食った時のうまさはもうない。
放課後、空き教室でくだらねぇ話で盛り上がって、みなでわいわい食った時はあんなにうまかったのにな。


何故だ?
大人になるってことは、残酷だ。


何が言いたいか? だって?
そんなこと俺にだってわかるかよ。


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