ひぐれて


雨上がり響き渡る境い目
町と町の誤差ゆえの重唱それは夕暮れ讃歌
鞄にいれた筆箱はかたかたと鳴る
蟠りの水溜まりからは泥水が撥ねる
上空で烏は群れをなしてはお山に還る

ほら こんなときなのよ
約束をおもいだすのは

小指のない約束の不確かさ
小指のない約束の不透明さ
小指のない約束のかなしみを

内訳は綺麗さっぱり忘れゆくのに
忘れたことは確りと憶えている
薄まってできたわたしたちは
夕暮れにだけそっと息をする


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