Utatane

自分の日常で起こったことや聞いた話などをもとに小説や詩を書いて載せています。メモ帳代わ…

Utatane

自分の日常で起こったことや聞いた話などをもとに小説や詩を書いて載せています。メモ帳代わり。好きな小説家は辻村深月さん、角田光代さん、恩田陸さんです。読んでコメントなどいただけたら喜びます。

最近の記事

甘い男

ほぼ実話です。以下小説。 「おれこんなサシ飲みとかできる女友達鈴木くらいだよー?」 目の前の男がグラスを傾けながらしれっとそんなことを言う。 「俺ほんとに今久々に本音で話せてるもん」 こちらをじっと見つめて真剣なトーンで言ってくる。じっと見つめられて少し照れてぱっと目をそらしてしまった。 ああ本当に、変わってないな、と思う。 本当にこの人は「自分はこのひとにとって特別な存在なんじゃないか」と勘違いさせるのがうまい。 みんなに優しくて、みんなと仲良くできるくせに、ふたり

    • 井の頭線、下北沢、あなたと、ライブハウス

      素敵なワンピースを買ったの 髪を綺麗に結んだの 今日のわたしは世界一魅力的だから すれ違う人みんなわたしに恋に落ちればいいのよ ヒールを履くのはやめておくわ 転んで足を痛めたら今日が台無しだわ あなたのことは見えにくいけれどその分君の声に耳をすませられる たばこ臭いライブハウスは全然好きじゃないけれど 君に会えるから行く意味がある 周りはおじさんばっかりで 小娘のわたしは浮いてしまうけれど でもステージのあなたがすぐに気付いてくれるから悪くないね ああ、なんてあなたは綺

      • 一人歩き

        1人で渋谷の夜はドキドキする 大好きなシンガーソングライターのライブを見に1人で夜の渋谷へ 会場に着いた頃はまだ少し明るかったのに、終わって外に出たらもうすっかりあたりは夜だった 夜の渋谷 1人で歩くのははじめてだ 電光掲示板の明るさは昼間と変わらないのにまるで違う街みたい 道に迷ったらどうしよう 人が多くてうるさくて明るくて目が回る わたしはキョロキョロと所在なさげに周りを見渡し おどおど歩くことしかできない 変な人に声をかけられたらどうしよう そんな風に警

        • 壊れた

          知り合いから「彼氏と自分の部屋で別れ話をした途端1週間くらいテレビがつかなくなってホラーだった」という話を聞いて書きました。ホラーじゃないです。 the pulloversというバンドの「うみべの男の子」の歌詞を文章に一部引用させていただきました。とても素敵な曲で、この曲をイメージしながら書きました。よかったら聞いてみてください↓ (以下小説) ビーっビーっと故障音が鳴り続ける洗濯機の蓋をがしゃんと乱暴に閉じた 君とここで別れ話をしてからもうすぐ3週間 呪われてんじゃ

        甘い男

          退屈な東京

          「ここは退屈迎えに来て」という映画を見た帰りに書いた小説です。 (以下小説) 「ゆみちゃんはさ、わかんないと思うけどさ」 彼はわたしのことを他人行儀に扱う時わざとちゃんづけで呼ぶ。いつもは気楽に「ゆみ」って言うくせに。 「おれは気持ちが痛いくらいわかって辛かったよ」 彼が言っているのはさっき二人で見た映画のことだ。 小説を原作としたその映画は、夢を追って上京した若者が、夢破れて地元にもどり鬱々とした日々を過ごすというやや暗い内容で、わたし好みだった。 大きな事件は何も起

          退屈な東京