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時間

永遠に忘れられない恋をする瞬間
根は優しいヤンキーのバイクの後ろに乗る
女の子の気持ちは色とりどりの紙吹雪だったりする
だれかに優しくされた一日の終わりに買った
期間限定のスイーツを頬張る時間は
口の中も時計の針もとろけるものだ
生まれて初めて買ってもらった
自転車の色を覚えている
水族館で見たマンボウが
死んでしまった時のニュースを覚えている
記憶はゴミの埋立地みたいに匂いがして
時折むせ返っては
新しい記憶のビル達がそびえ立っていく
待っていてはくれない時間もあれば
霖雨がさあさあと降り注ぎ
ゆっくり洗い流してくれる時間もある
まるで何にも知らないくせに優しい月のように
ただそこに居てくれるだけでよかった
失恋したばかりの天気予報のお姉さん
ぎこちない笑顔でこう言った
「今日は雲ひとつない秋晴れです」
嘘ひとつない秋晴れですと聞こえた僕は
目を細めながら答えのない空を眺めた
それからベランダの植物にお水をあげて
黙ったまま新芽を撫でていた

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