野良猫の足音
野良猫が走っていく足音は
宇宙のメロディとおんなじなんだ
月の匂いに誘われて走ってゆく
とぐろをまいた雲がぐるぐる流れて
野良猫は澄んだ目でそれを見上げた
野良猫には終わらない野心があって
白い牙と果てしない嗅覚で辿り着いた
銀色の森深くにある湖で水を飲むんだ
その先にある向日葵畑で眠る為に
虹色の光を帯びたコガネムシを食べて
毛並みに夜明けの風を染み込ませる
耳をよおく欹てて朝焼けの中
鳥の囀りを記憶する
ずっとずっと途方もないままだった
ただそれがとても居心地いいんだ
過去も未来も見ない今この一瞬を生きてる
それが野良猫の透明な足音になる
錆びた鉄の味がいつも口の中にしている
夕暮れのバラの花に鼻をくっつけた
あばら骨いっぱいに花の匂いを吸い込むと
甘ったるい恋がしたくなる野良猫だった
名前がないのが気に入っている
何者にもならないその自由が気に入っている
名前はいらないのさ
だからチューインガムを踏んづけたりはしないのさ
さらなる場所へさらなる世界へ
野良猫の走っていく足音は
宇宙のメロディとおんなじなんだ
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