いい子という呪い

わたしは答えを持たない。

勉強が出来なくてもいい。本当にそうだろうか。
友達が多くなくてもいい。本当にそうだろうか。
ありのままでいい。本当にそうだろうか。
諦めなければ願いは叶う。叶わないときもある。
頑張れば報われる。そうでないときもある。

何もしなければ何も起らない。
辛くもないけど、楽しくもない。
成功もしないけど、失敗もしない。

僕はここにいたいんだ。
何もしたくない。
布団にくるまって、ずっと眠り続けたい。
死んだ夫は、そう言っていた。
起こそうとしたから、死んじゃった。

子どもは言う。
手を震わして、頭を掻き毟って。
自分が何をしているのかわからない。
何が大事かわからない。
いい子でいないとお母さんわたしを見捨てるでしょ。
いい子でいないと迷惑がかかるんだよ。
でもわたしには出来ない。
そう言って気が狂ったように、泣く。

失敗から立ち直れる強さと術を持って欲しい。
もう充分に優しい子だと思う。
わたしは褒めることをしてこなかったから、こうなったんだろうか。
いいことも悪いことも人生にはあるよ、やり直せることもやり直せないこともあるけど、怖がらずに、自分を大事にして生きていけるようになって、と願う。

大切な子どもだと思って育ててきたけど、伝わってなかった。
ただただ、呪いをかけてきただけだった。
いい子であるってなんだろう。
優しくなかったら、どうなんだろう。
勉強が出来なかったら、どうなんだろう。
引きこもってしまったら、わたしはどうするんだろう。
子どもは一人で生きていけるようになるだろうか。
わたしは子どもを置いて死ねるだろうか、老いていくことを許されるだろうか。

あいしてるよ、と言えば、元気になるだろうか。
夫のように、起こそうとしたら死んでしまうかもしれない。

生きることをよしとしていないわたしに、親である資格なんてあるだろうか。
産んだからには、責任がある。
命をかけて育てる。

愛しているのに、呪うことしかできない。
幸せを与えられない。


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