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船の行く先

 風が止んで、胸の辺りがざらりと鳴る。
見つからないものに限って意外と近くにあるものだって誰かが言っていたけれど、それは本当にそうなのだろうか。
見つからないものが、永遠に見つからないままだってこともあるだろう、と思うのです。時にそれは哀しみを伴って、胸の辺りをざらりと撫でることもあるけれど、それもまた運命なのだと考えることが出来たら案外、哀しみばかりって訳ではないのかもしれません。

 海が凪いで、心に平穏がじわりと滲んでいく。
苦しみや悲しみばかりを嘆いていても、平穏が訪れる事はないでしょう。
少し無理をしてでも温かい言葉を並べるようにしてみたり、穏やかな風景に触れることが出来たら、自然と平穏が訪れるかもしれません。
自分を甘やかせるのも結局は、自分なのです。
そうして訪れた平穏も長くは続かないでしょう。
幾度となく荒れる波が、何度となく凪いで、を繰り返しながら日々を生きていくしかないのでしょう。

――心が病める時、そっと隣に小さな灯火を。


                        可惜 夜-Atarai Yoru-

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