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アルコール専門病院入院(11人目のAさん)

Aさんは60歳の男性、一人暮らし。
男性の一人暮らしで趣味もなく、アルコールしか楽しみはないという人ってたまにいます。
今更趣味を見つけましょう、なんて口で言うのは簡単ですが、実際まず無理でしょう。

お酒を飲み過ぎてしんどくなって救急車で搬送される、もしくは救急外来受診を何度か繰り返し、入院も何度か繰り返していました。
その度に話はするのですが同じことの繰り返し。
断酒目的のアルコール教育入院の話もするのですが、本人は全く取り合わず。

しかし入退院繰り返すうち、だんだんAさんもしんどくなってきたようです。
たびたびの説得に入院も考えるようになってきました。
Aさんの口から、今度運ばれたら入院するよ、という言葉が出だしました。でも落ち着いてくるとやっぱりまだいい、というのです。
ついに医師もいい加減にしろと思うようになってきました。

ある日の夕方、毎度のように救急車で運ばれてきました。
すぐ担当医から呼ばれ、何とかならないかなあ、と。
アルコール専門病院への入院がいいとは思うのですが、お酒をやめるという本人の意思がないと入院は無理。

そこで考えました。
酔っている今のAさんの口から入院するという言葉を引き出そう。
医師と看護師に証人になってもらおう、と。

だまし討ちの感はありますが、こうでもしないとAさんの生活は変わらず、体もボロボロになっていきます。

Aさんのところに行くと相変わらず酔ってしんどそうにしていました。
「約束したの覚えてますか、今度運ばれたら入院するって言ってましたよね。やっぱり入院してお酒やめた方が楽ですよね」
医師と看護師も加勢してくれました。
そしてついにしんどそうな本人の口から待っていたひとこと。
「そうやな、入院するよ」
すぐ専門病院に連絡すると明日でも入院はOKとのこと。
医師に情報提供書をすぐ書いてもらい、Aさんは一旦帰ることになりました。
帰り際Aさんに、明日朝8時頃に迎えに行きますからね、忘れないで下さいね、と何度も念押し。

次の朝、やっぱりやめたと言われることを覚悟で自宅に迎え。
するとちゃんと起きていてくれたのです。
でも入院すると言ったことはあやふや。
「入院するって言ったんやなあ」といいつつ用意をしてくれました。
ついに今回は観念したようです。

アルコール専門病院は隣県になります。
行く道中、そろそろお酒はやめなあかんな、というAさん。

アルコール専門病院に入院して実際やめられる人は100人中2、3人だといわれます。
Aさんが今回の入院でお酒をやめられるとは思っていません。
退院したらまた元の生活に戻って飲んでしまうでしょう。
それでも今回の入院が断酒の一つのきっかけになればいいと思うのです。

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