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高次脳機能障害と障害年金(25人目のAさん)

リハビリ科の医師から連絡がありました。
外来で通院してるAさんから障害年金の相談を受けたので、一度連絡してアドバイスしておいてください、と。

Aさんは57歳女性。
夫との二人暮らし。
脳梗塞で2年前に当院にリハビリ目的で転院してきました。
身体マヒはあまりなかったのですが、高次脳機能障害が残りました。
高次脳機能障害、見えない障害とも言われ、外見からは障害がわかりにくいのです。
Aさんは失行、記憶障害、注意障害、社会適応障害、意欲低下といった障害が残りました。
会社に勤めていたAさんでしたが、職場は本人の意思で退職されていました。
リハビリの結果、高次脳機能障害は入院時より改善。
在宅での生活は十分可能。
社会復帰も職場によっては可能だろうということで、退院前に精神保健福祉手帳の手続きをして、退院後は障害者職業センターで就業についてのサポートをしてもらっていました。
精神保健福祉手帳は3級。
月1回の定期通院で近況について聞いていた主治医からは、無事パートで就職できたという連絡を受けていました。

今回は障害年金の相談。
Aさんは脳梗塞の初診日からは約2年たっているので障害年金の請求は可能です。
精神保健福祉手帳が3級なので、障害厚生年金3級の認定の可能性はあります。

主治医からの依頼でAさんに電話するとご主人がでたので、手続きを説明しました。
まずは年金事務所にいってください。
その際、初診日はいつで、精神保健福祉手帳も持っていって相談するとスムーズにいくと思います、と伝えました。

そして後日、医事課から電話がありました。
Aさんから年金の診断書を預かったので、主治医に持っていったら私に確認するようにといわれた、というのです。
はて?と思い診断書を確認すると肢体障害の診断書。
これはもしかしたらAさんが精神障害を受け入れず、年金窓口で身体が悪いといったのだろうか。
それならもう一度Aさんか夫に説明した方がいいのだろうか。
等々考えながらAさんに電話。
電話に出たご主人に、年金事務所でのやりとりを教えてもらいました。

当日はAさんも一緒に行ったようです。
Aさんは自分が精神の障害ということを受け入れられないんでしょうか、と聞くとそんなことはないとのこと。
年金の診断書が精神ではなく肢体になっているんですが、どうしてでしょう。
するとAさん夫婦は窓口で、脳梗塞で高次脳機能障害が残って年金の請求にきたと言ったとのこと。
そしたら持ってきた診断書は肢体の診断書だったというのです。
確かに「精神」とは言いませんでしたが、「肢体」とも言っていません。
「脳梗塞で高次脳機能障害」と言ったら「肢体」障害と思われたようです。
「脳梗塞」によるマヒで「肢体障害」は一般的です。
それで窓口では肢体障害の診断書を渡されて病院にもってきたのです。
Aさんは身体的には麻痺もほとんどなく、肢体での障害認定はまずムリです。
ご主人には診断書が間違っていることを説明し、精神障害の診断書をもらってくるように伝えました。

「高次脳機能障害」
まだまだ知られていない障害です。
精神障害の診断書の裏面の、記載医師についての説明欄には、「高次脳機能障害」という言葉は記載されています。
でも言葉が知られていないと言うことは障害もまだまだ知られていないということだと思います。

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