03|誰しもが一編の小説を
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03|誰しもが一編の小説を

2017年12月、自著「繕い屋の娘カヤ(岩崎書店様)」を上梓しました。

少女と狛犬が神を訪ねる冒険。低学年〜中学年向けの児童文学書で200頁ほどあります。
挿絵も多く、章ごとにテーマカラーが異なり読み進めるのが楽しい仕様です。故郷である愛媛県や瀬戸内を舞台とし、物語の季節は夏。
ちょうど今が読み頃です!
書籍の詳細はこちら→http://kaya.yoriquo.com/

そもそもは絵本の制作依頼だったのですが、第1回打ち合わせの際に、原作は特になく全て自由と言われました。あれも書きたい、これも良いと話す内に、すっかり2時間もある映画のように世界が膨らみました。
頭を抱えていると「だったら絵本ではなく小説を書いてみたらどうか」と勧められました。

「もしドラ」の作者でもあり、依頼者でもある岩崎氏が「誰しも一編の物語を持っている。書けますよ」とあまりにも澱みなく言うものだから、「へーそうか」と納得してしまいました。今思い返すと自分の実力を棚に放り投げてなんと無謀に鵜呑みにしてしまったかと冷や汗がでます。

普段、私は狛犬や吉祥図案をテーマにした創作活動をしています。それらを描くために集めた資料文献、民俗学や神道に多少の知識はありました。その為、少女と狛犬が山の神さまを尋ねる冒険譚という大きな骨組みは、割とすぐにできました。

そこから設定に腐心していると、「迷っているなら自身のルーツをベースに書くこと」とアドバイスされました。その途端、物語の世界に色がつき、木のさざめきが聴こえ風の匂いが生まれました。不思議。

そうやってちょこちょこと書くためのヒントを頂いていたのですが、印象深かった言葉の1つに「破れ目」があります。

「“破れ目”を思い描いてください」
幼い頃、探検と称して山や川へと遊びに行く時、ふと感じる不穏。
この先は安全が保証されないと動物的本能が感じるアレ。
林のけもの道、大樹のうろ、廃屋の小窓。
あの不穏な空間に名を付けるならまさに「破れ目」だと膝を叩きました。
日常の破れ目が、異世界への入り口であり、冒険への始まりに繋がります。

自身の体験を母体にする。
記憶の中から、憧憬と破れ目を探す。
私の場合、この2つが物語を作る基盤です。

そこから、視覚優位の私は近所の情景や通学路を図面化し、図書館で故郷の古地図を漁り、愛媛の地名辞典に目を通しました。また年代別に自分史を作り、いつ頃何に悩んでいたかを明示化していきました。

そうして最終的にカヤという少女と、彼女が住む世界の土台が出来ていきました。

物語を書かれる人は、どんな風に世界を創られるのだろうと思ったのと、自分がどのように世界を作ったかを忘れないために記述しました。
ここまで読んでくださってありがとうございました。

#イラストレーション #児童文学 #小説家 #神社

グラフィックアーティスト、アートディレクター、小説家。住吉大社御祓講獅子意匠預。「繕い屋の娘カヤ(岩崎書店)」/「孤狼の血」「凶犬の眼」装幀画/「左ききのエレン」劇中画などhttp://yoriquo.com/