見出し画像

親しき仲にも、「同意」あり

こんにちは、シノです。あたらしい春が近づいてきましたね。

こういう状況になってから、人と会う機会が極端に減りました。

同僚とはオンライン会議でつながったり、友人とはオンライン飲みで近況を聞いたり、それなりに効率的で快適なオンラインライフ。

ただ、絶対的に物足りない…。それは友人と会えないから。会いたい、でも会いづらい。そんな時、みなさんならどうしますか?

大人も、友人と会えないのはつらい

いい大人が友人と会えないくらいで…と思われるかもしれません。子どもたちや学生が友だちと会えないつらさはニュースでも取り上げられますが、大人はあまり聞かないですもんね。

わたし自身、それがストレスになっているとは思っていませんでした。

大好きな宝塚の公演が延期や中止になったり映画館が閉まったりとエンターテイメントが「仮死状態」だったので、楽しみがなくなってつまらないな〜くらいの気持ちだったのです。

ところがあるきっかけで、自分が「友人と会う」ことをどんなに待ちわびていたのか知ることになりました。

触れられる距離で、友人と会ってみた

去年の秋頃、ある舞台を観に行った時です。そこで元同期のデザイナーと会いました。

彼女はもう会社をやめてしまっていますが、今でも仲がよく、仕事や趣味(宝塚)から社会のことまでいろいろな話題で話せる友人です。

同じ贔屓(推し)を持ち、一緒に公演を観に行ったり、お茶会(ファンミーティング)に行ったり、地方公演まで遠征したりと、”ヅカオタ(宝塚オタク)人生”を並走してきたいわば「同志」のような存在。

対面で会うのは本当に久しぶりでした。

感染対策で寒いくらい換気している劇場の入り口で、検温と消毒を済ませた彼女が先に待っていました。

「しのぴー!」

声のほうを見やると、マスク姿の彼女が手を振っています。

「わー!」

同じようにマスク姿のわたしは思わず声を上げました。画面で見ていたより、LINEでやりとりしていたより、もっと優しくて温かい空気をまとっている彼女が目の前にいて、懐かしさがあふれました。

瞳がうるんで視界がぼやけそうになりながら、ソーシャルディスタンスを保ってエアーハグしました。彼女の薄いトレンチコートの裾が少しだけ触れて、なんだか切なかったです。

前後左右1つずつ空けて半数以下に減った客席で、わたしと彼女は贔屓の舞台を静かに堪能しました。

終演後。
以前なら、お店やカフェにかならず寄ったものです。ああだこうだ感想を話し、Twitterで贔屓の名前を検索して盛り上がるのがお決まりのコースなのですが、その日はただ、肩を並べて駅まで歩くだけでした。

贔屓、最高だったね。
でもあのセリフはどうかと思うわ。
仕事どう。最近どう。

オンラインでいつも話しているのとたいして変わらない、なんでもない会話が夜の街に溶けていきます。

駅近くになって、どちらからともなく立ち止まりました。帰りがたいような気がしたのです。

「ご飯でも行きたいところだけど…」

わたしはそう言いながらも、このまま別れるほうがいいだろうなと思っていました。

「そうだね」

彼女も同じでした。

いつか行ける日がくる。でもそれは今日じゃなくて、もう少し先だね。

二人が共有した気持ちは、「また会いたい」という願いに満ちたものだったと思います。

最後に、今日は会えてよかった、ありがとう、と言い合いました。普段はそんなこと口にしないのに、なんだか言いたくなる夜だったのです。

彼女はタクシーに乗りこみ、わたしも家路に着きました。

マスクをしたまま、道端で話しただけの時間。それでも友人と会えた嬉しさが体に残っていました。

親しい人にこそ、「同意」を得る

あの夜を思い返すと、二人とも「マスクをしたままで話したい」という気持ちでした。もっと言えば「たとえ友人でも人前でマスクを取るのはちょっと…」という気持ち。

言葉にはしませんでしたが、わかりました。オンライン飲みやLINEで、実際に会えたらどこまでOKかをずっと話してきたからです。

もし、お互いの本音を伝え合うことなくその場のノリだけで会っていたら、きっと小さなすれ違いが生まれたでしょう。温度差を感じたまま、心地よく過ごせなかったかもしれない。

自分がしたいことは、相手もしたいことなのか? 相手の意思をまず確認し、尊重する。友人や家族のような親しい人にこそ、「同意」を得るコミュニケーションが大事だとわたしは思います。

じつは来月、二人で贔屓の新しい公演を観に行く予定があるんです。

こう相談してみるつもりです。

「わたしは見晴らしのいいテラス席で横並びに座ってお茶したいんだけど、どう? しゃべる時はちゃんとマスクする」

彼女の「同意」のもと、いい再会にしたいな。

スキ(♡)を押してくださると励みになります!