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左利きの知らないところで左利きにやさしい社会になっていた話

突然ですが、最近おもしろい手帳に出会いました。
それがこちら。

左ききの手帳2024(左ききの道具店公式サイトより

「左手で書く人のための手帳 左ききの手帳2024」。左利きの私は思わず手に取りました。

普通の手帳と違うポイントは、レイアウト。
一般的な手帳は月や日付の数字が左上にあります。
しかし「左ききの手帳」は月と日付の数字が右上に。これは左利きの人が手帳に書き込むときに、ペンを持つ左手が日付を隠し、見えづらくなるのを防ぐため。日付の位置が右上に変わるだけで書き間違いや左手を浮かせて確認する手間が減ります。

左ききの手帳(左ききの道具店公式サイトより

ウィークリーのページでは、メモページの位置も一般的な手帳と逆になっています。右側の予定を確認しながらメモができる。手が邪魔にならず、スムーズに書けるレイアウトなんです。

左ききの手帳のウィークリーページ(左ききの道具店公式サイトより

「そんなに変わる?」と思うほどの一見小さな違い。
しかし左利きが使うと、結構しっくりくるんです。「超使いやすくて感動!」というよりは、なんだか心地よい感じ。
ここまで説明しておきながら、私は手帳を使わない(スマホでスケジュール管理)派です。でも使う使わないは置いといて、左利きのことを想ったやさしいアイデアが見られて嬉しくなりました。

今回は「左利き」をテーマに、その苦悩だけでなく左利きにやさしいデザインたちも紹介します。


子どもの頃に感じた左利きの苦悩

ある調査によると、左利きの割合は日本では10人に1人。意外といるためか特別なスポットこそ当たりませんが、逆を言えばこんなにいるなら左利きが経験している苦悩がもう少し認知されてほしい気もします。苦悩の例を挙げ出すと山ほどあるのですが、大人よりも子どもの頃のほうが困っていた気がします。ということで私が小学生時代にぶち当たった左利きの苦悩をご紹介。

①はさみが切りにくい
まずは王道のはさみ。刃の噛み合わせの都合で切り口が見えにくいし、ビニールやツルツルした素材が切りにくい。母に買ってもらった左利き用はさみをお道具箱に忍ばせていました。

②おたまのギザギザが逆
ファミレスのスープコーナーにある先のとがったおたまは左利きの天敵として殿堂入りレベルですが、学校の給食当番でも思わぬピンチが。焼きそばが出た日。渡されたギザギザのおたま。左手に持つとギザギザが外を向いてよそえない。きっと私以外にもたくさんの左利き給食当番を泣かせてきたはず。

歯付きのおたま(ののじ公式サイトより

③習字は左手が使えない
習字の授業では、左利きも右手で筆を持たなければなりませんでした。慣れない右でも大筆はなんとか耐えていたのですが、名前を書く小筆はダメでした。ぷるぷる手を震わせながら一生懸命書くも、名前の不格好な字で台無しに。それが悔しくて先生の目を盗んで小筆だけは左持ちにしていました…。

左利きにやさしい道具たち現る

「我慢できない!」と泣くほどではないけれど、ちょっと使いにくいなとか不便だなと思うことがたまにある。でもそういうもんだと諦めて使うし、だんだんそれも慣れてくる。多くの左利きはそんな感じだと思います。

でも、利き手を問わないものが増えると心地よく生活できる人がもっと増えるはず。そんな思いに応えるやさしい道具たちを見つけました。2018年にオープンした左ききの道具店は、左利き向け商品を中心に、文房具、キッチン用品などの日用品をオンラインで販売しています。

左ききの道具店オンラインショップ

これまで私は、はさみしか左利き用のものを使ったことがありませんでした。急須、万年筆、眉用はさみ、ワイシャツ、子供向けキッチンセット、などなど。こんなにもたくさんの左利き用の商品があるんですね。
冒頭で紹介した「左ききの手帳」もこのお店で販売されており、ロフトなどでも購入できます。

左手でペンが出し入れしやすいようにポケットが右側についたワイシャツ(左利きの道具店オンラインショップより

左利きにやさしい社会になってきている

左利きにとって、左手で使いやすいものが増えたり気軽に手に入るようになるのは嬉しいこと。でも左利きは昔から存在しているのになぜ最近になって専用グッズが増えてきたのでしょうか。

①多様性とユニバーサルデザインの登場

まず、SDGs (持続可能な開発目標)を通じて「多様性」という考えが広まってきたことが理由の一つ。自分らしい選択や生き方が尊重されるようになったとともに、ほかの人が感じている不便や、少数派の意見に目を向けられることが増えました。

多様性の実現を目指すことで、できるだけ多くの人に適応する製品・環境が求められます。文化・言語・国籍や年齢・性別・能力などの違いにかかわらず、誰にでも使いやすいデザインのことをユニバーサルデザインといいます。
例えば、日清シスコのシスコーンはユニバーサルデザインを用いたパッケージが話題になりました。

シスコーンのパッケージ(シスコーンブランドサイトより

パッケージの両側に「OPEN」の開け口があり、左右どちらからでも開けられるデザイン。また四隅に「ひだりききの人」「みぎききの人」のマークがあり、利き手でそれぞれのマークを持つことで、中身が注ぎやすくなります。

左利きの子は右手で袋上部を持つと注ぎやすい、という気遣い…!

親切なだけではなく、シスコーンを食べる子供たちの成功体験につながってほしいという考えから、2通りの注ぎ方をプリントしているそうです。より多くの人にとって使いやすい工夫がされている素敵な事例ですね。


②SNSで左利きのあるあるや不便さが広まってきた

また、SNSの影響もあると思います。X(旧Twitter)では「左利きにしかわからないこと」というお題に対したくさんのリプライがついたり、8月13日の国際左利きの日に「#左利きの日」で左利きあるあるポストが投稿されました。
一時的なエンタメとして消化されるだけでなく、SNSで広く届くことで、不便を理解する人が身近に増えたり、企業の商品開発に活かされたりします。手軽さと拡散力を持つSNSは世の中の多様性を共有し理解するツールとしても力を発揮しています。

自分の経験を共有することで誰かの心地よい生活につながる

苦悩を「そういうものだから」と言って片付けるのは簡単ですが、それを解決するアクションを起こせるって素敵だなと思います。左利きの人、他国籍の人、車いすを使う人。いろんな背景を持つ人々がそれぞれ抱える苦悩も「見える化」されることでより良いアイデアが生まれるのではないでしょうか。今回紹介した道具たちを使ってみた感想を発信するのもいいかも。
プラスなアクションが増え、みんなにやさしい社会に近づくといいなと思います。


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文:マキ

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