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万引きを疑われた僕の心の中

あれは去年の11月30日。
仕事の区切りがひとつついて
なんかちょっと自分にご褒美をと、
少し高級なスーパーへ。
名駅が生活圏なんだけど、
最近とあるファッションビルの地下に出来たお店ね。

事前にLINEのお友だちになってて
「1000円の買い物で300円オフ」ってクーポンがあったので品定めを。
焼鯖のゴロゴロ入った瓶、
100%リンゴジュース、
ワインに合いそうなチーズの詰め合わせ(僕は飲まないけどね)。
いつも行くマックスバリュやイオンと違って
ちょっと贅沢なものが並んでる棚は楽しい。
全然決められなくて、
トリュフ香るミックスナッツを手にしたとき、 
ふと視線を感じる。 
そういえば年配の店員さんがずっと着いてきてる。
あぁ、僕の動き、ちょっと怪しいよな。
カゴも持たずに棚から棚にとうろうろしてるし。
試しに足速に別の棚に移ってみる。
ちらっと後ろを見ると、さり気なくおんなじ店員さんが居る。
また別の棚に動くとやっぱり一定の距離を保って着いてくる。
いやいや、もうこっちは気付いてますよ。
それとも警告のつもりか??

なんだか追い込まれる気持ちになってしまい、
ゆっくりと商品を見るのも憚られたので
半ば妥協してMCCのクラムチャウダー4個と
レーズンバターを持ってレジ列に並んだ。
なにせ1000円超えないとクーポンが使えないのでね。
並びながら後ろに目をやると、
やっぱりさっきの店員さんがチェックしてる。
あなたに気付いてますよということと、
ちゃんと買い物に来たんですよ、
というメッセージを送るために
その店員さんにあえて声をかけてみた。
「このクーポン、使えますよね?」
「はい、お使いいただけます。」と返事。

順番が来てレジカウンターに商品を置くと、
さっきの店員さんが僕の真横にやって来た。
レジ横にある商品を整理するような態なんだけど、
実際は明らかに僕を見てる。
レジ係に何か目配せをするのを感じた。
すると係の店員さんが僕に話しかける。
「レジ袋はご用意しましょうか?」
僕「いいえ、いりません。」
手持ちのトートバッグに余裕があるので
それに入れて帰ればいい。
するとさらに、
レジ「では、お持ちのバッグにお入れしましょうか?」
僕「いや、いいです。自分で入れます。」
レジ「え?お入れしなくていいんですか?」
僕「え??」

ちょっと待って。
空のエコバッグにならともかく、
普通に私物を入れて持ってるトートバッグにまで店員が商品を入れる、ってあるのか?
コロナ禍で自分のバッグは触られたくないし
ましてやぐちゃぐちゃのバッグの中を見られることになるなんて嫌じゃんね?
いや待てよ、これってバッグの中身をチェックするつもりか?
ほんの数秒でそんなことたちが頭をよぎり、
処理できなくなりトートバッグを差し出してしまった。
店内でずっと着いてきてた店員さんは、
服が触れるくらいの距離で僕の真横に居て
逃げることができないくらいに詰めてきてる。
レジ係が荷物を詰め終わった頃合いで、
密着してた店員さんはさっと数メートル離れて知らん顔してる。

整理できない気持ちで店を出た。
地下鉄に向かいながら頭の中を整理する。
レジ清算が終わる瞬間まで、
あの店員さんは僕のことを万引き犯だと疑って着いてきてたんだろう。
そしてあんなに威圧を感じさせるくらいにまで距離を詰めてきた。
レジ係は僕のプライベート空間(バッグ)にまで手を入れて確かめてきた。
なんだか無理やりに服を脱がされたかのような
そんな気分になって悲しくなった。
屈辱的だった。
自分へのご褒美にと思って楽しみに入ったお店だったのに
こんなに辛い気持ちになってしまった。

店員さんたちの中では、
万引きを未然に防ぐことができたとか
確認すべきことを確認したとか、
業務を遂行したに過ぎないっていうことなんだろうな。

いっそ僕をお店の裏にでも連行して
バッグを確認したら何にも入ってなかったとかいう展開にでもなってくれた方がすっきりしたかもしれない。

それ以来、いつも前は通るけれど
そのお店で買い物はできていないでいる。

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