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「水泳学習の外部委託」記事から考える学校の働き方改革

先週から水泳学習が始まりました。
コロナ禍で水泳学習ができなくなっていたので、3年ぶりの学習です。(勤務校では昨年度、希望者のみが参加する夏季水泳教室のみ実施しましたが。)

子どもたちからすると、すごく楽しみにしている子もいれば、そうではない子もいたようです。特に、私は2年生を担任しているので、初めて水泳学習に取り組む子もたくさんいて、中にはシャワーを浴びるのが怖くて泣き出してしまう子もいました。

他の学年の子どもたちの様子を見ていても、心なしか水泳学習に対するイメージがよくない子が多いように感じられ、2年間も学習がなかったことの影響は至る所に出ているのだと思わされました。

そんな水泳学習について、先日、外部委託を進めている事例があるという記事を目にしました。
そのほかにも調べてみると、数年前からそのような事例が増えているようです。
記事の中では、民間プールを活用するメリットとして、
・スイミングスクールのスタッフをつけることで効率的に教えることができる
・維持管理などの費用を1校あたり年間200万円ほど削減できる
・天候に左右されずに授業を進めることができるようになる

などが挙げられていました。

維持管理という視点で費用の削減が書かれていますが、教員側からすると、管理にかかる時間やその責任に対する効果があるように感じました。
今回の記事では、この外部委託を進めることの賛否を述べるといったことが目的ではなく、水泳学習に向けた準備やプール管理、指導について「働き方改革」という視点で捉え、(体育主任をしている私の)個人的な考えを述べていこうと思います。

1.水泳学習における負担(提案・準備編)

まずは職員会議での提案資料。
コロナ禍ということもあり、感染予防対策が必要です。例年通りブロック(2学年ごと)での学習だと人数が多く、間隔を取ることができない、しかし、学年ごとの学習にすると担任以外の先生方の負担が増えてしまうなど、解決すべき課題がたくさんありました。

最終的には学習時間を例年の約半分(2時間×3回)にするということで落ち着いたのですが、担任以外の先生方の配置など、いつも以上に提案資料の作成に時間がかかっていました。

しかも、この提案の時期は5月、6月。運動会の運営と被っており、並行して進めるのは至難の技です。(運動会における負担の話は過去の記事で書いています。)体育部内で分担し、提案資料のほとんどをお願いしていたのでよかったのですが、おそらく一人で全てをやっていたらどこかのタイミングで倒れていたんじゃないかと思うほどでした…

また、準備に関することで言うと、一番負担として大きなものがプール掃除ではないでしょうか。
私自身、6年生の頃にみんなでプール掃除をした記憶がありますが、私の勤務する自治体では職員で掃除をするのが当たり前だったようです。ここ最近ではプール掃除の外部委託が積極的に進められており、その負担は削減できています。

しかし、プールサイドや階段など、業者がやってくれない部分もあるため、そこは職員で作業をします。高圧洗浄機を使って掃除をしましたが、体育部の3人のみで作業をしたため、多くの時間がかかってしまいました…
プール掃除がないとはいえ、来年度は職員作業として手伝ってもらう必要があると感じています。

そのほかにも、プールの水を全て抜く際の土木事務所への連絡や消防への救命法のお願い、各種業者との連絡など、水泳学習が始まるまでに多くの手順がありました。

2.水泳学習における負担(管理・指導編)

一度プールに水を入れると、その後は毎日のように水を管理しなければいけません。具体的には塩素を撒く作業と、プール内のゴミを取り除く作業です。
勤務校では、幸いどちらも機械がやってくれるので、作業時間としては短縮できているはずですが、それでも朝と放課後の10分〜15分を毎日のように取られてしまうのは、負担であることは間違いありません。

機械がなければ、塩素を手で撒いたり、プールのゴミを網で取り除いたりと、より作業時間がかかってしまいます。
先日、近隣校の情報を聞くと、塩素を全自動で入れてくれる(曜日、時間指定などができる)最新の機械もあるようで、うちにも取り入れてくれないかなぁと思ったところです。

指導について考えると、水の中での学習ということで、他の学習以上に危機管理をする必要があります。学年で学習を行う際、最低3人以上の教員が必要とされており、ほとんどが2クラスの勤務校からすると、担任以外の先生に毎回来てもらう必要がありました。今年は3年ぶりの学習ということもあり、基本的に4人で学習を行うことにしました。時間によっては副校長がプールサイドに行って、安全管理を行うなど、明らかに教員の数が足りていません。

3.外部委託によって得られるもの

外部委託をすることで、先ほど述べたプールの管理の負担は一気に削減できるはずです。特に水泳学習が夏休み前と夏休み後にまたがる場合、夏休みにも毎日のように塩素を撒きに行かなくてはならず、その負担感は大きいです。(基本的には職員の日直の仕事となっていましたが、閉庁期間なども学校の近くの職員で交代しながら塩素を撒いてもらっていました。)

また、指導においてもスイミングスクールのスタッフにお願いすることで、大幅に負担が軽減されるでしょう。ただ、ここについては、全てを丸投げするのではなく、指導事項をきちんと打ち合わせる必要があります。その時に注意したいところは、あくまで教育活動の一環として行われる体育科の学習の一部であり、技術指導のみを行うのではないということです。

たとえば「25mを泳がせる」や「タイムを速くする」ということを重視しすぎると、育成すべき資質・能力でいうところの技能の向上しか狙われなくなってしまうということが起きるかもしれません。
この問題は、そのほかにも外部委託が進められている部活動とも似ているような気がしました。

とはいえ、ただでさえ専門性が求められる体育の学習で、一歩間違えれば死の危険もある水の中での学習。泳げない、知識がない教員からすると、水泳指導をすることはとてもハードルの高いことです。そういったことを含めて、外部委託は一定のメリットを得られると感じています。

4.外部委託の今後の展望

勤務校の実態からすると、すぐ近くにスイミングスクールはないので、外部委託はそう簡単ではないでしょう。
個人的な経験として、中学時代は隣接していた市営のプールがあったので、そこで授業を行っていました。別で中学校のプールもあり、水泳部が活動していたので、全くプール管理をしていなかったわけではないと思いますが、「プールを借りて教員が指導を行う」だけでも、管理の手間が省け、負担は減るのではないかと感じました。

学校現場では、これからも負担軽減のために様々なことを「外部委託」していくという流れが進んでいくのではないかと思います。この「外部委託をして、負担を減らそう」とする考え方には賛成ですが、純粋な引き算にはなっていないと感じています。

増え続けてきた業務によってパンク状態である現場の状況を変えていくには、本当にやるべきことを見定め、引き算をしていく必要があると思います。もちろん、今回取り扱った水泳学習は学習指導要領に明記されているため、実施しなければならないことです。

その他のことを考えていく時に、「外部委託」という手もありますが、「そもそも必要なのか」と廃止を検討したり、「省略できるものはないか」と簡素化を図ったりすることが必要だと感じています。
水泳学習において、勤務校でできることから廃止、簡素化を考えていければと思います。皆様の学校での取り組みなども、教えていただけると嬉しいです。

まとまりのない文章ですが、ここまでお読みくださりありがとうございました。

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