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運動会の運営から考える働き方改革とは?

「やっと終わった〜…」

帰り道に寄った銭湯で、運動会シーズンの約1ヶ月を振り返る。これまで張り詰められていた気持ちがスッと軽くなったのを感じた。この1ヶ月は思考だけでなく、生活全体が運動会モードになっていて、全てにおいて余裕がなかったなぁと思う。

体育主任として仕方のないことだと捉えつつも、この「運動会」の運営については、もっとよりよい方法があるという期待も込めて、振り返りを残しておきたい。

1.運動会の意義

運動会における働き方改革を考える上で、そもそも運動会の意義は何なのか、ということが頭に浮かびました。学習指導要領を見ると、学校行事の内容(3)健康安全・体育的行事の中に運動会に関する記述があります。

①健康安全・体育的行事のねらいと内容
心身の健全な発達や健康の保持増進、事件や事故、災害等から身を守る安全な行動や規律ある集団行動の体得、運動に親しむ態度の育成、責任感や連帯感の涵養、体力の向上などに資するようにすること。

健康安全・体育的行事には,健康診断や給食に関する意識を高めるなどの健
康に関する行事,避難訓練や交通安全,防犯等の安全に関する行事,運動会や
球技大会等の体育的な行事などが考えられる。
                  (小学校学習指導要領解説 特別活動編)

また、育成を目指す資質・能力として、
・体育的な集団活動の意義を理解し,規律ある集団行動の仕方などを身に付ける
・運動することのよさ について考え,集団で協力して取り組むことができる
・運動に親しみ,体力の向上に積極的に取り組もうとする態度を養う
などが考えられるとされています。

勤務校でも、「運動会を通してどんな資質・能力を身に付けさせたいのか」という議論がありました。あわせて、カリキュラム・マネジメントの視点に立っても、「運動会はどう在るべきなのか」という意見が出ていました。
この辺りを考える上では、妹尾先生のこちらの記事も参考になるかもしれません。

2.圧迫される業務

自分も含め、職員が神経をすり減らしながら一生懸命作り上げる運動会。もちろん、その成果はあるのかもしれませんが、より子どもたちが主体となって作り上げる(と実感できるような)運動会へと転換していく必要がありそうです。

私の勤務校では、今年度、秋開催から春開催へと戻りました。(コロナによって一度秋開催へ変更した経緯があるようです。)
春開催だと、4月の職員会議で全体計画を共有し(前任校は2月には職員会議で提案がありました)、すぐに児童の係(5・6年生)が動き出したり、各学年の競技・演技の計画が始められたりします。
ただでさえ年度はじめの業務量が多くバタバタ感がある中で、それにプラスして運動会の運営をこなしていくのは、なかなかハードです。

特に今年はコロナ対策と並行して、熱中症対策も考えなければならず、連日にわたって教務部と打ち合わせをしたり、提案資料を作ったりしていました。
普段この時間までには帰りたいと決めている自分の中での定時ラインを超えても、クラスのことまで手が回らず…最低限の準備だけを済ませ、帰るような日々が続いていました。

勤務校での運営が実質初めてだった(昨年度も体育主任ではありましたが、異動初年度ということもあり、運営をやってもらっていた)こともあり、見通しが甘かったというのも原因の一つとしてありますが、それ以上に体育部だけでは抱えきれない業務量だということは明らかでした。

3.負担軽減の鍵はどこに?

もちろん、負担の軽減のために何もしていないわけではなく、今年度はリレーの朝練の開始時刻を遅らせたり(開始を7時半から8時へ)、ライン図を見直し、引く量を減らした上で作業日を分担したり(昨年度は体育部と一部の教員でやっていました…)、児童の係打ち合わせを1時間増やして中休みに集まる回数を減らそうとしたり…etc.

リレーの練習一つとっても、低・中・高のブロックで行われていたものを1〜3年、4〜6年の二つに分けることができないか、また、中休みに練習ができないかなどの提案をしたものの、さまざまな観点から問題が浮かび上がり、すぐに取り入れることができなかったのも今回の現状でした。

より負担を減らすためにどのようなものが考えられるのでしょうか。文科省が出している「働き方改革実践事例集」では、
・実施種目の削減、簡素化。
・開催時間の短縮。平日開催。
・学年、ブロックごとの実施。
などが挙げられています。

正直なところ、コロナの影響もあり、開催時間は午前中に短縮されているし、その結果、実施種目もだいぶ選定されている(徒競走、ブロック競技・演技、代表リレー)と感じています。それでもこれだけの負担感を感じているということは、まだまだ削らなければいけない部分があるということでしょう。

そう考えると、今回感じた課題に対する解決策を見出すのはもちろんですが、
「代表選手のみが走るリレーが必要なのか。」
「取り組む演技や競技が運動会のためになっていて、その指導は教育課程に位置づいているのか。」
「運動会そのものの在り方とは。」
といった大きな問いと向き合うべき時期がやってきているのかもしれません。

特に練習時間のほとんどを占めている演技では、保護者の期待もあり、見栄えを意識して指導に熱が入るほど、時間をかけてしまいます。前任校でまだ組体操が行われていたときには、大きな声では言えないほどの時数が使われていたのも事実です。

4.来年度に向けて

まずは、子どもの振り返りや職員、保護者からいただいた反省をもとに、来年度の方向性を考えたいところです。特に当事者である子どもたちが、どのように感じていたのか、声を吸い上げていくことが必要だと感じています。

実行委員(5・6年生の係)の振り返りの中でも、職員の負担を考慮して係分担を変えた結果、「去年と比べて、だいぶ暇だった。」という声があったと教えてくれました。
もちろん、職員が余裕をもって活動に取り組むことも大事ですが、子どもを主語にして考えることの大切さも感じさせられた言葉でした。

今年度は秋開催から春開催へと移行したこともあり、個人的に見通しが立っておらず、取り掛かりが遅くなってしまったことも反省点です。
来年度に向けて、できるだけ早く改善点を洗い出しつつ、上にも書いた大きな問いと向き合う時間を確保していきたいと思います。

おわりに

今回は運動会を取り上げて考えてきましたが、他の行事でも同じようなことが言えるはずです。行事には、子どもたちにとっても、保護者にとってもプラスの要素が多いように思いますが、教員の大きな負担の上に成り立っているのが現状と言えます。

自分自身、この1ヶ月はクラスのことよりも運営に関わる仕事にウエイトがかり、準備不足の上、気持ち的にも余裕がなく、その余裕の無さが子どもたちとの関わりにも表れていたように思います…

そのような現状を少しでも変えるために、子どもを主語にしながらも、この運動会を働き方改革の一つの大きなプロジェクトとして捉え、じっくりと動いていきたいです。

今回もここまでお読みいただきありがとうございました。
運動会について、こんな取り組みがあるよという方は、ぜひコメントで教えていただければ嬉しく思います。

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