大企業

「大手かベンチャーか」に今、答えを出そう。|大きな組織に所属するということ。

単独従業員数6000人弱の大企業に新卒入社して3ヶ月が経った。

「大手かベンチャーか」なんてのは、就活生にとってよくあるトピックだろう。1年前までは僕も、この問いに向き合ってた学生の1人だった。
人並みに就活をして、ベンチャーや大手の数社から内々定をもらった。就活を終えて、残り10ヶ月の大学生活は、HR×Techを主要サービスとする会社のアルバイトと、キャリア教育団体の活動に捧げた。

最後の意思決定への納得感を高めるために、1人でも多くの社会人と会う機会をつくったり、東京と名古屋をひと月に何往復もしながらが必死に働いたり、卒業ギリギリまでこれからのキャリアの仮説について考え抜いた。
結果、世間では『メガベンチャー』と呼ばれる会社への入社を決めた。

HRサービスを展開する企業で働いていたこともあって、企業視点も、イチ社会人としての視点も持っている。また、学生のリアルなキャリアに、身近に寄り添い続けた経験もある。

これらの経験から、「大きな組織に所属すること」の本質を、若者の視点で伝えていきたい。


【大きな組織ではたらくことの、3つのリアル
1. 高く、大きな視座を保ち続けるということ
2. 仕事に心を最適化させていくということ
3. 大きな仕事をするということ


1. 高く、大きな視座を保ち続けるということ

安定の大企業か、成長のベンチャーかという判断軸が一昔前のものであることに、ほとんどの人が気づいている。

それなら、大企業に所属することの、絶対的な価値は何だろう。

それは、人材の多様性社会的意義(≒事業規模)の大きさにあると思う。

大きな組織には、何千人、何万人もの社員が所属している。
どの組織もある程度、パレートの法則に則るのなら、母数が多い組織ほど優秀な人を多く抱えていると考えるのが妥当だ。

組織の規模感がコンパクトなベンチャー企業は、社長や役員との距離が近いことが多い。それはとても良いことだし、ビジョンに心から共感できて、今後成長していくような組織に出会えたら、優秀なトップ層と近い距離感で仕事ができるなんて、そんなに幸せは滅多にない。

でも、ほとんどの場合は、天井が見えてしまう

組織のトップ層が近くにいると、コンスタントに刺激を受ける。その反面、バラエティに富んだロールモデルを組み合わせて、自分に最適な理想像を描き切ることには適さない。
5000人を超える大企業には、本当にいろんな人材がいる。むしろ様々なスペシャリストが集まっているからこその大企業だ。日本一の自動車メーカーの部長にお会いした際、まさに経営者のような視点や思慮深さを持っていたことが、まだペーペーの僕にもわかった。部長クラスでもオーラがすごかったのが、非常に印象的だった。

大きな組織では、経営層と近い距離で仕事をするのは難しいかもしれない。でも、様々なバックグラウンド、スキル、志向性を持った魅力的な人たちに、簡単に会いに行くことはできる。先輩社員や内部人事に紹介してもらって、アポを取ればいい。

いろんな分野の第一線で活躍する人たちと同じ組織に身を置き、多様な生き方やスキルから自分オリジナルのロールモデルをけることは、大きな組織に所属する1つの価値だ。


また個人で起業したり、小さな組織で働いたりすると、視座を保つことが難しくなるらしい。目の前のタスクを処理することに頭がいっぱいになって、「何のための仕事なのか」、1つひとつ意味付けするのが難しくなる。

大きな組織は、仕事を通して大きな世界を見せてくれる。企業が社会に与える影響力は大きく、1人でやっていくと想像もできないような、遠くのビジョンを見せ続けてくれる
事業だけではなく、組織運営、オペレーション等どれもが複雑かつ大規模なため、常に全体を俯瞰する視点を持って、仕事をすることが求められる。

人材の多様性と、事業の社会的意義の大きさビジョンや、自分への期待値を遠くまで見続けたい人その感覚を当たり前にしたい人なんかは、そんな環境の大企業をファーストキャリアに選ぶのもアリなのだと思う。


2. 仕事に心を最適化させていくということ

「会社のリソースを使って、やりたいことができる」ことが裁量だとするなら、ほとんどの大きな組織は、ある程度の裁量権を手にするまでに時間がかかる。

新卒や若手の時から、財務、総務、広報など手探りで何でもやっていくスタートアップやベンチャー企業に対して、大企業では数ヶ月にもわたる研修を受け、初期配属がされるケースが多い。
そこでの「配属」、会社での「役割」は、必ずしも自分の希望に沿ったものとは限らない。
予想もしていなかった部署に配属されたり、思い描いていたものとは違う地味な仕事をしなければいけなかったりすることが往々にしてある。

大きな組織は、いろんな仕事をそれぞれのプロフェッショナルが受け持ち、個々の仕事は複雑に、しかし体系的に絡み合って成り立っている。
だから、特に入社して間もないうちは、思い通りの仕事をさせてもらえないのは当然だろう。ポジションが多く空いているベンチャーやスタートアップに比べて、大企業は既にプロフェッショナルが、自分のやりたいことのポジションを占めていることがほとんどだから。
若手を使う必要がないのに、わざわざ教育コストなども割いたりしない。

「会社は自分を大事にしてくれない」って、僕たち若者は言いたくなるけれど。会社はちゃんと、僕らの適性とか、長い目で見たキャリアプランとかを最大限考慮した上で、組織がうまく機能するように人材配置をしている。
わざわざ社員のエンゲージメントが下がるような、意地悪な配属はしない。

社員1人ひとりの仕事に関して、組織的なニーズと個人の希望のバランスが適正な企業は、良い組織だと言える。適正の度合いは個人や、組織の状態によって異なるので、よく精査してみる必要がある。


声が通りやすいベンチャーに比べて、やりたいことへの道筋が遠回りに思える大企業で納得感を持って仕事をするには、どうすれば良いだろうか。
配属先で実際にやる仕事、組織の中で自分に求められている役割は、自分では変えられない。

実際の仕事は変えられないのだから、「仕事に心を合わせていく」しかない。「こんなこと、やりたかった仕事じゃない」と卑屈になるのではなく、長い目で見て、仕事に対する意味付けをしていくことが大切だ。

物事に対する「意味付け」や、「Connecting the dotsの思考」ができるかは、スキルだ。「やらされてる」という意識で仕事するのと、今の環境からできる限り何かを得ようという姿勢で臨むのでは、同じ仕事でも明確な差が生まれる。
やるべき仕事は同じなのに、個人の裁量で付けられる付加価値の大きさや、他人からの見え方が、大きく違ってくる。
大きな組織で幸せに働くには、このようなスキルを磨いていく必要がある。

『仕事に心を最適化させていくこと。』特に入社して間もない時期は、この心の持ち方を知っておくことが大切じゃないかと思う。


3. 大きな仕事をするということ

大きな会社でできる仕事は、若いうちからやっぱり大きい。

実際の仕事は他の会社と変わらなくても、規模感や影響力はかなり違う。

例えば、ユーザーにサービスのメールマガジンを1通配信するにしても、登録者の母数が桁違いのため、収集できるデータに圧倒的な差が出る。
件名をこう変えたらクリック数はこう変わるとか、Aの文章構成よりBの構成の方がダウンロード数が多くなるとか、改善のPDCAを、豊かなデータをもとに繰り返すことができる。
1万人と1億人のカスタマーデータでは、同じスピードで仮説と検証をおこなった場合、使えるデータの豊富さから改善の質は大きく変わってくる。

また、同じ目的の仕事にしても、組織の規模によってプロセスが全然違うこともある。まだ知名度が高くないベンチャーが、まずは母集団を増やすための採用広報に力を入れている一方で、既にネームバリューのある大企業は、いかに自社にとっての優秀な人材をセレクトするのかに注力できる。
大企業はWantedlyに1日1つ記事を更新するなんて地道なこと、やらなくて良い。

他社と仕事をする際、大企業にとっては他の日本を代表するような企業と仕事をするのは普通だろう。一方ベンチャーにとって、まずは自社を知ってもらうことから始まって、うまくいけばやっとパートナーとして働くことができる。

「会社の名前でなく、自分の名前で勝負できるようになりたい」って最近よく聞くが、会社の名前を使うのはそんなに悪いことじゃないのではと思う。
自分の「やりたいこと」、「ありたい姿」、「大事にしている価値観」とかが大事で、会社の名前を利用することでそれらを大切にして仕事ができるのなら、絶対にその方がいい。
まだ新人のうちは、お金とか人とかのリソースはなかなか使えないかもしれないが、"ネームバリュー"というリソースは誰でも使うことができる。

最近はどのコミュニティに所属しているのかが一つの価値になるし、大企業の名前を使うことだけに、「本当の自分の価値じゃないのでは」と負い目を感じるのは、どこか的外れだと感じる。


でも結局は、組織によるよね。

- いかがだったでしょうか?

「大きな組織に所属する」ってどういうことか、ベンチャーやスタートアップとの比較を中心に、良い点に話題を寄せて書いてみました。

大きな組織には、他にも伝えきれないほどの魅力があるし、やっぱりベンチャーとかに比べてダメなところもたくさんある。よくわからないけど偉そうにしてる新人も多いし、最近Newspickで話題にもなった「おっさん」も溢れてる。
僕自身、なんで、みんなこんなに偉そうなんだろうとよく思ったりする。

今回はベンチャーの良いところは取り上げられなかったけど、それはもう良いところなんてたくさんある。
いつか書きたいコンテンツの1つだが、もう一度学生に戻って就活をやり直せるなら、ファーストキャリアとして間違いなくベンチャーを選ぶ。

もちろん、大企業でも新人のうちから手を上げればやらせてもらえることもあるだろうし、ベンチャーでも「大きな仕事」をできるところはたくさんある。
だいたいの傾向は同じでも、結局は組織によって様々だ。

この記事が、これから就活をする学生や、転職活動をする若手社会人にとって、何らか新しい視点を持つきっかけになれば幸いです。
あとは、泥臭く足を動かして、できるだけ多くの選択肢に触れて、自分の過去や未来と照らし合わせながら思考し尽くして、納得感のあるキャリアをつくっていってほしい。

以上、大きな組織に所属するということ。でした。


- また続編書きたいな。

まだ何者でもないですが、何者かになりたくて文章を書いています。記事を読んで、どこか1つでも共感できるところがございましたら、サポートいただけると、何よりの自信につながります。