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僕が生まれてゴメンなさい…。

「♪父ちゃんのため〜なぁらエンヤコラ〜」

いつも黄色い印象の美輪明宏さんは、この歌だけは黒一色でステージに立つと何かで聞いた。

余計なイメージを持たせず、聞く人、観る人に想像してもらうためだとか。。。


文字通り、父ちゃんのため、子供のため、家を守るために働きづくめのの「おっかぁ」だった。


隣の家まで1キロぐらいあるような田舎で生まれた「おっかぁ」は、義務教育が終わると八戸(地域で1番大きい街)の飲み酒屋(昔は酒屋で飲めた)に貰われた。

10年以上なのかなぁ…客商売だから休みなし。
コツコツコツコツ、毎日コツコツ働いた。無賃金で。
必死でお小遣いを貯めたって言ってたっけ。
まぁ使う暇もなかっただろうけどね。

働いていた飲み酒屋で父親と出会った。

最初は皆同じ?
出会った頃は凄く優しかったって。

父親の仲間が営むラーメン屋の2階で始めた新婚生活。

段々、父親の本性が出る。。。

手を上げる人じゃなかったらしいけど、ろくな稼ぎもないのに、仲間を集めては酒を振舞う。

コツコツ懸命に貯めたお金は少しずつ父親の酒代に変わっていく。。。。。

妊娠した時変化が表れた。
ちょっとずつ真面目に働きだしたみたい。

けど、「男の子を産まないと投げる(捨てるの意)!」って脅されたって。


そんなのただのイチャモンじゃね?!


短気で喧嘩っ早くて、飲めば目が座る、、、若い時は酔っ払うと相当怖かったって言ってた。

年とってからも相当怖かったけどね。。

待望の男の子誕生!

かなり可愛がったらしい。
後々、自分の寿命を縮める事になるとは知らずにね。。。


長男もそれに答えたね、父親の好きな野球やったりアイスホッケーやったり…どれも長続きはしないけど。


そうこうしてる内に2人目を妊娠。

男の子を産めっ!って言ったって。
けど、2番目の時は投げるとまでは言わなかったみたい、、、。

次男誕生、そうして私が産まれた。

それからは割りと幸せだったのかなぁ?

だって、「おっかぁ」はいつも笑ってる記憶。

人を愛して、人に愛される人だったね。

葬儀の時に、多めに頼んだ香典返しが足りなくなって追加したもん!
その位、人が参列してくれたって事だもんね。


色んな事あったね。

楽しい事も、きっと苦しい事も。


父親、長男とソリが合わなくて言ってしまった痛恨の一言。。

「家を出ます。もう息子と思わないでくれてもいい!」


「・・・・・。」

初めて「おっかぁ」の涙を見たよ。。。

「なしてそんな事言うんだか、『よー』は・・・」

言って後悔する言葉って、すごく胸が締め付けられる。

あの後、ちゃんと謝ったっけかなぁ…謝れなかったかなぁ…覚えてないや…「ゴメン。。」


糖尿病を発症してから、人生下降線気味?


目が見えなくなって、動けなくなって、働けなくなって。。。

それでも僕の娘を懸命に可愛がってくれた。
内孫を抱かせてあげれたのが、私の唯一の親孝行だったのかも。。


1月7日、「おっかぁ」んトコに遊び行くって約束してたのに、友達に誘われてそっちに行ったんだよね。

「用事入ったから、今日は行けなくなった。家には明日行くから!ゴメンね。」

「ふ〜ん、そう。分かった。んだら明日待ってる…」


最後の会話だった。


翌1月8日早朝、普段なら鳴らない時間帯の着信。


「おっかぁが死んだ。今から病院行くすけ、オメェも支度出来たらすぐに来い!」


「えっ?!えっ?!死んだっ?!?!」

頭の中が真っ白になったけど取りあえず準備して行かなきゃ!

あの時ぐらい大きな心臓音は後にも先にも記憶にないね、、、今はまだ。。。

早朝の街路は車がいない。そこそこ大きい街と言われてるが、そこはやっぱり田舎だね。


病院では、父親と長男が医者から話を聞いてた、、、傍らには動かなくなった「おっかぁ」

不思議と冷静だったよ。なんか淡々と医者の話を聞けた記憶。

狭心症やってたから、死因は心臓かと思ったら異常ないって、医者。


「詳しい死因を知りたければ解剖しますが…」

「いや、それはもういいです。。。」

「では、心筋梗塞と言う事で…」

医者と父親のやり取りをただ聞いてた…けど?

「えっ?!そんな簡単な話?そんなんで死因決めちゃっていいの???」


人が死ぬって簡単な事なのかなぁ。
まぁ世の中にある、「唯一の絶対事」だからね。


「では、霊安室の方に移しますね…」

ドラマでしか見た事のない、人目に着かず移動出来る薄暗い廊下、、本当にあるんだね。。


霊安室に続く廊下を「おっかぁ」と一緒に移動してたら、その時は突然来たよ!

涙がボロボロ零れ始めたけど、でもまだ看護師さん居たから必死でこらえた。

霊安室に落ち着いたら堰が切れたっけ。
ボロボロボロボロ涙が止まらない

「ゴメンなさい〜!」

「ゴメンなさい!おっかぁ〜!」

「昨日行けなくてゴメンなさい〜!」

「ゴメンなさい〜!」
「ゴメンなさい〜!」
「ゴメンなさい〜!」

あの時こうしとけば良かった…。
この時あぁしとけば良かった…。
もっとたくさん話せば良かった…。
もっと色んなトコ連れてけば良かった…。

もっと…
もっと……
もっと………

謝罪の言葉と涙だけがひたすら零れた。

いい年のオヤジが、人目もはばからずワンワン泣いたんだ。

こんなに泣けるんだっ!ってくらい泣いたよ。

諌めらようが慰められようが、振り解いて、「おっかぁ」にすがって、嗚咽しながら「ゴメン」言いながら泣きじゃくったよ。。。


この先、こんなに泣く事ってまたあるのかなぁ。。。

出来ればもうゴメンだけどね。。


線香番してる時・・・

父親はAのRh+
母親もAのRh+
長男もAのRh+
次男(私)AのRhー ん!?

「なんでRh−が産まれるんだっ!!」って、かなり「おっかぁ」をイジメたって。。。

「おっかぁ」の辛かった過去、おっかぁ方の親戚から初めて聞かされたよ。

胸が苦しくて張り裂けそうになった。。。

生まれて初めて抱いた感情・・・・・

「僕が産まれたせいで、おっかぁを傷付けたんだね。。。」

「おっかぁ、僕が生まれてゴメンなさい。。。。。」

「ゴメンなさい…。」
「ゴメンなさい…。」
「ゴメンなさい…。」


「♪高校もでたし〜」

「♪おまけに僕はエンジニア」

「♪苦労、苦労で死んでった〜」


苦しい姿見せなかったね。

辛い顔見せなかったね。

影で、いっぱいいっぱい泣いてきたんだね。


「おっかぁ…」

僕、生まれてきて良かった…?

僕、まだ生きてても良いのかなぁ…?


「おっかぁ…。」

「おっかぁ…。」

「もう1度逢って、ちゃんと謝りたいよ…。」

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