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機械装置と器具備品のあいだ ~減価償却資産の分類をめぐる冒険~

昨日、圧縮記帳の記事を書いてまして、当初は自動券売機を買った場合、という設例にしようとしたんです。けど、そうすると自動券売機の資産分類がちょっと悩ましいなと思い、より無難でよくありそうなトイレ工事に変えました。

自動券売機の分類いかん

「自動券売機 法定耐用年数」で検索すると、
・機械装置 飲食業用設備8年 といったものが出てきます。

ということは、機械装置(機会及び装置:以下当記事においては引用を除き機械装置とします)でいいのかと思いきや、そこはWebの情報なのでそのまま鵜呑みにしていいものかという問題があります。器具備品(器具及び備品:以下当記事においては器具備品とします)ではないかという論点です。

そもそも機械装置とは

機械装置なのか器具備品なのかというのは裁判にて争われたことがあります。

この例であったのは、臨床検査で使用するリース物件である全自動染色装置等(医療用の機器)が機械装置にあたるか否か、でした。納税者側とすれば機械装置にしてくれた方が都合がいいのです(後述)が、裁判では納税者側が敗訴しました。(東京高裁平成21年7月1日判決)曰く

『機械及び装置』といえるためには標準設備(モデルプラント)を形成していなければならず、設置箇所が同じ場所であるかどうかはともかく、資産の集合体が集団的に生産手段やサービスを行っていなければならないものというべきである。

と判事されています。

また、逆にパン工場で使う冷蔵庫において、納税者側は器具備品の方が法定耐用年数が短く、より早期に損金とすることが可能な器具備品と主張し、課税庁(税務署)側はより法定耐用年数の長い機械装置と主張した裁判もありますが、こちらでは機械装置とされました。

この裁判で納税者側は、カフェで同じ冷蔵庫を使っているがそれは器具備品になっており、同一のものであれば同一に扱うべきだと主張しましたが、裁判においては、当該冷蔵庫はパンの製造ラインに密接な機器だということが決め手となり、機械装置とされました。

機械装置とは「集団的に生産手段やサービスを行って」いるものであるというのが、裁判上の規範であると言えます。

機械装置となった方が良い理由

中小企業投資促進税制というものがあります。

青色申告法人である中小企業者(定義は別途あります)が
・機械及び装置で1台又は1基の取得価額が160万円以上のもの
・製品の品質管理の向上等に資する測定工具及び検査工具で、1台又は1基の取得価額が120万円以上のもの
…(ほか、ソフトウェアなどもありますが略)
を購入した場合、特別償却or税額控除 が出来るというものです。

投資促進税制という名の通り、税制上の優遇措置を設け、中小企業に投資を促すことで経済の活性化を促そうというものです。

ここで、測定工具及び検査工具は器具備品ですが、それ以外の器具備品とされるものは対象外となっています。これが機械装置となれば、160万円以上であれば優遇措置があります。

そのため、機械装置となるか器具備品となるかは、けっこう重要な関心ごとになります。

自動券売機は機械装置なのか

先の裁判例では機械装置とは「集団的に生産手段やサービスを行って」いることが重視されていました。

とすると、ラーメン店にあるような、単に食券を買うためだけにある券売機は、それ単独で機能しているもので、集団的に行っているようなものではありません。むしろセルフレジに近いイメージでしょうか。

となると、
器具備品に 2事務、通信機器 金銭登録機 耐用年数5年
とありますので、これにあたるのではないかと思います。

一方、牛丼の松屋のように自動券売機の情報が厨房に回って、客は待っていれば注文したものが出てくるシステムであれば機械装置となると思います。

とはいえ一般の飲食店にある自動券売機は、多くが単独で機能するものだと思います。なので、大多数は器具備品とされるもので、いの一番で自動券売機は機械装置で耐用年数8年です、とするそこらのWebサイトはいかがなものかとわたしは考えます。

ただ、単に自動券売機だけであれば、160万円を超えるものはあまりなさそうなので、たとえ機械装置だとしても中小企業投資促進税制は金額基準で適用できないので、結果的には実害はそれほどないかもしれません。

店頭にある体温センサーは機械装置と呼べるか

ついでながらですが、この時世で各所の入り口に温度センサーが置かれるようになりました。いかにも装置な感じで、ちょっと調べると高いものは200万円ぐらいするようです。

機械装置というぐらいだからこれは装置だろう、といいたいところですが、先の規範でいくと、これ単体で機能するもので、他のものと連動していないのであれば、機械装置とはいえないのではないか、というのが私見です。

税金の世界では これはどっち というのが多くありますが、今回はその中でも減価償却資産の分類についてでした。

本日は以上です。ご覧いただきありがとうございました。

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