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初冬の出来事 ~日本経済新聞夕刊 プロムナード 風 エッセイ~

年末特別企画として、日本経済新聞に連載されているエッセイ風の文章を書くシリーズ第二弾です。夕刊に連載されている「プロムナード」風のエッセイです。

新聞紙面だと縦書き13文字×105行を6段組としていますので、それを意識した文量にしています。なお、画像はあくまで完全にイメージです。
(noteって画像選択が意外と大変ですね・・・)

エッセイのタイトルは、本物の日経プロムナードでは筆者本人がつけているのか編集者がつけているのかわかりませんが、ここでは、筆者本人がつけました。(他につける人はいない)

あと、エッセイ(随筆)なので創作ではありませんが、多少の脚色はあります。

初冬の出来事


今住んでいる家は建築されてから50年以上経っている、木造平屋建の一軒家である。築年数のわりに外観はがっしりしていて、当初は夫婦二人きりだったから広さは十分で(未就学児二人がいる今となっても、家族全員で寝ている分には十分な広さである)、悪くないなと思ったので借りて住んでいる。相応の歴史を持つ家で、なるほど確かに、どことなく風情のある建物である。
  
引っ越す前から、なにか小動物が住み着いているということは聞いていた。そして実際、住み始めてから時をおかずに、天井裏から明らかに何かの動物がいる気配…どころか足音が聞こえるようになった。

住んでから少し経ったあるとき、自らも確認しようと天井裏に上ったら、天井をちょっと踏み抜いてしまった。その修理のためいわゆる便利屋さんをよんで、天井修理のついでに天井裏を見てもらった。そうしたら、何か小動物と思われるものの糞が大量にあったと写真を見せられた。間違いなく我が家の天井裏のものだった。その場でそれを掃除してもらい、さらに侵入口となりそうなところを塞いでもらった。

これで安心かと思ったら、そんなに甘くはなかった。
しばらくは平穏な暮らしが続いていたが、ある時からまた天井裏からバタバタと足音が聞こえ、ときにはキーキーという鳴き声が聞こえるようになった。しかもどうやら一匹ではなさそうだった。
天井裏に小動物が住みつかれてもいいことはない。だが、ときに防虫用燻蒸剤を炊いてみてもほとんど効果はなかった。結局、積極的に追い出すことは半ばあきらめ、歓迎しないでも一つ屋根の下に暮らしていくことにした。ときどきあまりにうるさいと天井をドンドンと叩いた。足音から想像する大きさと鳴き声から、その小動物がなにであるかは、見当がついていた。

初冬の休日のある日のことだった。出先から帰ってきたら、向かいの家の駐車場に、茶色い小動物が横たわっているのを発見した。

ハクビシンだった。
名の通り、額から鼻にかけて白い線がはっきりとあったが、そこにわずかに赤いものがついていた。家の目の前の道路で、車に撥ねられた末に息絶えたものだった。よく見ると道路にはその跡がくっきりと残っていた。
哀れな姿になったその個体は、向かいの家の人が市役所に電話してやってきた専門業者に引き取られた。
道路に残った跡を掃除しようと試みたが、箒ぐらいしか道具がなく、あまり取れなかった。それでも道行く車はそこに何があるかなど気にも留めず通り去った。僕は形ばかりに道路に塩を撒き、手を合わせた。

その二日後くらいになって、再び天井裏から足音が聞こえた。すでにいないものの片割れだったのか、あるいはこどもだったのかは分からない。だがそれも、わずかの間をおいて聞こえなくなり、どこかへ行ってしまったようだった。道路の跡はいくつかの雨を経て、目立たなくなった。

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